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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第577話 調査団の危機

 山道を降って逃げる冒険者を追っていた、吸血狼に騎乗するオログ=ハイの集団七十五騎はほとんどがその狭い道に密集していた為、タウロがマジック収納から出した岩人形ゴーレム『ロック』シリーズ四体が放った強力な衝撃波を躱すには身動きが取れなかった。


 放たれた四発もの衝撃波はタウロの操作の元、的確にそして容赦なくオログ=ハイと吸血狼の集団を薙ぎ払った。


 山道に「ズドドドォ!」という魔物と周辺の木々を吹き飛ばす轟音が鳴り響き、ほぼ全ての魔物が絶命する。


 生き残ったわずかな魔物は負傷した体で逃げ出そうとしたが、タウロ達が各自で躊躇する事無くそれらを始末していった。


 冒険者を追っていた追跡者であるオログ=ハイ・ライダーは、こうして呆気なく全滅したのである。


「……戦った事があるからこそ言うが、この岩人形は反則だよな」


 アンクが大魔剣に付いた血のりを拭き取りながら、呆れて見せた。


「はははっ……、本当にそうだよね。自分でもここまで過剰殺戮オーバーキル状態になるとは思っていなかったよ」


 岩人形『ロック』シリーズ四体は役目を終えるとタウロのマジック収納に納められる。


「これが、合計で十四体もあるというのは、敵にしたら恐怖だな」


 ラグーネも同意した。


「それよりも先を急いだ方がよくない? 調査団は少なくともこれ以上の帝国軍とやらに囲まれているという事でしょ。タウロの『ロック』シリーズで救援しないと全滅もあり得るのじゃない?」


 エアリスが鋭い指摘をした。


 逃げていた冒険者から詳しく話を聞ければよかったのだが、その『疾駆』の冒険者は調査団の危機の為に国軍に救援を求めるべくすでに走り去っている。


「よし、緊急を要するから『瞬間移動』で一刻も早く駆け付けるよ」


 タウロはそう言うと両手を差し出す。


 エアリス達はすぐに円陣を組んで手を繋ぐ。


「『瞬間移動』!」


 タウロがそう唱えると、一行はその場から一瞬で消え去るのであった。



 地下古代遺跡に続く洞窟手前を、調査団により整地して作られた広場。


 その周囲に土魔法で築いた防壁を盾にして調査団一行三百余りは、防衛線を張って立て籠もっていた。


 そこに押し寄せるのは、険しく踏破するのが難しいアンタス山脈地帯を密かに越え、サート王国側に侵攻してきた謎の軍隊五千。


 軍旗こそ掲げていない魔物主体の軍団だが、帝国軍なのは明らかで、一帯では魔法や矢、投石などが空を飛び交い、喚声や剣が交わる音が鳴り響いている。


「くそっ! 何でこんなところに帝国の軍隊がいるんだ! 国境侵犯だろ!」


 調査団の責任者である眼鏡が特徴的で領主の代理でもあるネガメが何度目かわからない悪態を吐くと机を叩く。


 その行為を領兵隊長や冒険者の一団の責任者になっているB+ランク冒険者は無視してこの一帯の地図を広げて話し合いを続ける。


「現在、こちらの死傷者はすでに六十人を超え、治療が追いつかない状態になっています。領兵や冒険者のみなさんの踏ん張りで、どうにか戦線を維持できていますが、戦場において兵の三割の損耗は全滅と定義されます。現在、約二割近く、どうします? 降伏しますか? と言っても、あちらは密かに国境を侵犯してきたおそらくは帝国軍。それに遭遇した我々は口封じに皆殺しにされる可能性が非常に高いでしょうが……」


 領兵隊長が責任者であるネガメではなく、机を囲む今回の調査団に参加している研究者や学者、数名の冒険者などに向けて告げる。


「……うちのメンバーが足に自信がある数名を率いて救援を求め下山している。うまく追手を撒いて逃げ延びる事が出来れば、早くてあと七日ほどで援軍が駆け付けてくれるはずだ」


 冒険者代表の男性が、助かる可能性について説いた。


「あと七日……。食料は十二分にあるから心配はないが、武器が心許ない。それに昼夜問わず攻めて来る奴らの物量作戦にこちらはすでに限界状態だ。──そんな状況であと七日も耐えられるのか?」


 学者の一人が目を逸らしたくなる現実を口にした。


「……守り切らないと殺されるだけですよ。あちらの目的は偶然現れた我々の口封じなのは、率いる魔物をいきなりけし掛けてきた事からも明らかです。我々は一日でも長く敵をここに足止めして王国軍が駆け付けるのを待つしかありません」


 領兵隊長は淡々と学者に答える。


 そこに、緊急事態を告げるボロボロの領兵が飛び込んできた。


「防壁の一部が敵に破壊されました! 現在、そこから侵入されないように冒険者のみなさんが奮戦していますが、そこを塞ぐ為の土魔法を使用できる魔法使いのみなさんが魔力枯渇で動けません! このままでは突破されます!」


「わかった、俺が塞ぎに行く! 領兵隊長、背後の岩を念の為、運んでくれ。破壊された防壁の一部を塞ぐのに利用できるかもしれない!」


 冒険者代表の男は自分が得意と言えない土魔法では防壁を完全に塞ぐには心許ないと判断したのか、領兵隊長にもしもの手段をお願いすると会議が行われていた洞窟から飛び出していく。


 外の帝国軍の喚声がより一層大きくなった。


 喚声と言っても魔物の唸り声が中心であったが。


 責任者のネガメは戦闘については全くの素人であったから領兵隊長に任せっきりである。


 そして彼はどうやったら自分が助かるのかを考えていた。


 全員を盾に逃げ出す? いや、それは無理だ。救援に走った足自慢の冒険者でも今頃、皆殺しになっているはずだ。自分では逃げきれるはずがない。


 そんな現実逃避とも思える生産性のない思考を巡らしていると、新たに領兵が飛び込んできた。


「別の防壁も破壊され、突破されました! 現在、乱戦状態です!」


「何!?」


 洞窟内は騒然となった。


 乱戦状態になっては数で劣るこちらにとって勝てる見込みは到底ない。


 いよいよ皆殺しの末路しか待っていないだろう。


 死を覚悟して領兵隊長が剣を握って洞窟を出ていく。


 その後ろ姿を見送って、ネガメが呆然とした時である。


 戦場の喧騒をも貫くように響く、衝撃音が轟いて来た。


「今度は何事だ!?」


 ネガメがヒステリックに叫ぶ。


「み、味方のようです!」


「ようです、とはなんだ! ようです、とは!国軍が駆け付けてくれたのか!?」


「わかりません! ただ、突然現れた二体の大きな岩人形ゴーレムが壊された防壁の前に立ちはだかって敵を薙ぎ払っています!」


 領兵も眼前に広がる状況が飲み込めないのか理解が追いつかず、見た事のみを伝えた。


 そう、タウロ達『黒金の翼』が戦場に駆け付けたのであった。

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