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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第562話 帰路

 魔物達オログ=ハイの追撃を躱す為に、墓石で出入り口を塞いだタウロ達一行は、油断する事無くそのまま洞窟内を引き返し、無事地上に戻る事が出来た。


 だがそれでも、いつまたあのオログ=ハイの集団が追いかけて来るかわからない為、雇い主である『青の雷獣』を先頭に、アンタス山脈地帯を抜け出るまではわずかな休憩や睡眠しか取らずに緊張感を持ってて帰路についた。


 そして、古代遺跡からの撤退から五日後、無事タウロ達はスウェンの街の見える丘まで戻ってきたのであった。


「ふぅー……。『銀の双魔士』、『黒金の翼』の諸君。こんな終わり方ですまなかった。もちろん、クエストの完了報酬は支払うから安心してくれ。……ただ、成果報酬の方は残念ながら慌てて撤収して金目の物はろくに回収できなかったからな……。その辺りはあんまり期待しないでくれ」


『青の雷獣』のジャックは不本意な形での古代遺跡からの撤収だったから、申し訳なさそうに告げた。


「仕方ないわよ、ジャックさん。あんなオログ=ハイの大集団に襲われたら逃げる以外に選択肢はなかったわ。でも、なぜ魔物が遺跡に興味を持っていたのかしら? それだけがここまでの帰路の間、気になっていたのよね」


『銀の双魔士』の双子姉妹リーダーの姉ジェマが同郷の先輩冒険者をおもんばかって話題を変えるように答えた。


「……魔物が古代遺跡に拘る理由か……。──タウロ君、君はどう思う?」


 ジャックは現場で一番状況を把握していたと思われるタウロに話を振った。


「そうですね……。遺跡に押し寄せてきたオログ=ハイのシルエット二百体とは別に、それを指揮するような動きを見せていた五十体程の違うシルエットがあった事をお知らせしましたが、僕としてはその五十体の集団の方が古代遺跡について興味があったのかなと思います」


 憶測でしかないが、ほぼ正解としか思えない考えをタウロは口にした。


「確かにあの時、タウロ君が言っていたな……。オログ=ハイの知能が高そうなのは、戦ってみてよくわかったが、古代遺跡の遺物に興味を示す程とは思えない……。タウロ君の指摘した、その五十体の集団が万が一『人』の場合、全ての辻褄が合う事になるが……」


 ジャックはそうなると悔しい思いが浮かんできた。


 つまり、タウロの意見が正解の場合、競合している相手がいたという事になる。


 そして、Aランク帯冒険者である自分達がどこかの競合相手に負けたという事だ。


「ですが、あの時の撤退判断は正しかったと思います。下手をしたらこちらが全滅していた可能性もありますから──」


 タウロはジャックを気遣ってそう答えた。


 そして、続ける。


「──それに棺内に入っていた遺物に関しては回収できているので、成果報酬も期待できますよ」


 タウロはそう言うと、マジック収納からその一部をみんなの前に出して見せた。


 それは文字通り、金銀財宝であった。


 棺内部には最後の王という言葉の通り、様々な宝石、魔石が嵌められ緻密な細工が施された黄金の王冠や首飾り、指輪に金銀の食器類、儀式用と思われる派手な装飾の剣や槍、ナイフに鎧、盾などもある。


 他には壊れてしまった何かの魔道具と砕けた魔石などがあった。


「多分、この壊れた魔道具が、棺内に盗掘防止、鑑定防止、罠などを張り巡らせていた物だと思います。これが壊れたお陰で中身だけを回収できました」


 タウロがマジック収納に墓石ごと回収した時、アイテム化したのはそのまま丸々『棺』だったのだ。


 これは多分、盗掘防止で、巨大な棺全体で一つのアイテムと認識させる事で、マジック収納に中身だけ易々と回収させない魔道具だったのだろう。


 しかし、タウロのマジック収納は(極)であり、その上を行く回収能力があったので、棺を丸々回収してしまったのだ。


 しかし、だからと言って、罠が作動しているから不用意に棺を開けられない。


 だがそれも、タウロが武器として敵に落下させた時に衝撃で壊れてしまい、個別にアイテムを回収できたというわけである。


 古代人もまさか大きな棺を落下させて内部の魔道具を壊す大馬鹿者までは想像できなかったようだ。


 ジャック達はお宝の数々に目を輝かせていたが、触れようとはしない。


 いや、触れたいが、今はこの価値がどのくらいあるかわからない遺物の数々については専門家の前で一つ一つ確認したいところであった。


 もちろん、ジェマ達やタウロ達に対する成果報酬としていくつか配らないといけないが。


『銀の双魔士』の面々はこの煌びやかな宝石類に目を輝かせていた。


「……冒険者をはじめてから長いけど、こんなお宝の数々を一度に見たの初めて……!」


 双子の姉ジェマと妹ジェミスは乙女の顔になって感動している。


 仲間の片手剣兼盾役のジミンと薬師のブーダーも同意見だったらしく、その言葉にただ何度も頷く。


「宝石類もあるし、王冠とか遺跡の資料になりそうなもの以外で、欲しい物をみんな一つずつ選んでくれ」


 ジャックは太っ腹にそう提案した。


 仲間の森の神官フォレスもこれには驚いて止めようとしたが、今回の旅の内容を考えるとそれも仕方ないだろうという気にもなり、踏みとどまった。


「いいの!?」


『銀の双魔士』のメンバーは我先にと、赤子の拳ほどもある大きな宝石を選んで、天にかざすと満足するのであった。


 エアリス達は落ち着いたもので、その様子を見届けてから改めて自分達も物色する。


「成果報酬という事で『黒金の翼』は今回、守護岩人形ゴーレム討伐で一番の活躍をしてくれたから、二つずつ持っていってくれ」


 ジャックがそうタウロ達に声を掛けた。


 この言葉にタウロは『銀の双魔士』がどう反応するかと思ったが、納得しているのか文句が出てこないので安心する。


 文句が多いリーダー・ジェマも今回のタウロ達の活躍をみて実力を認めてくれたようだ。


 エアリス達が報酬を二つずつ選んだ後、タウロもすぐに二つ選んで手にした。


「そんなもので良いのか?」


 ジャックはタウロが選んだ二つのものを見て驚いた。


「はい。僕には宝石よりこっちの方が、魅力的に見えたので」


 タウロはニッコリ笑みを向けると、壊れた魔導具を成果報酬に貰って満足するのであった。

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