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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第561話 遺跡からの撤退

「完全武装した集団がこちらに向かっているぞ!」


『青の雷獣』の長剣使いロンガの言葉に、ジャックをはじめとした、建物内にいたタウロ達はすぐに外に飛び出した。


 まだ、タウロの能力である『真眼』にはその魔物の群れは捉えられていない。


 だが、すぐにその『真眼』にもすぐいくつものシルエットが映りだされた。


「この冒険者のように装備を固めていて徒党を組んでやってくる集団……、一度逃げていたオログ=ハイですね」


 タウロはみんなに聞こえるように言いながら、知らせに来たロンガへ確認する。


「この遺跡の別の出入り口と思われる場所をあっち側に見つけたんだがな。続々とそのオログ=ハイが出てきたから慌てて知らせに戻ったんだ。どうやら、仲間を連れて来たようだ」


 ロンガの言う通り、タウロの『真眼』には続々とオログ=ハイのシルエットが指さされた場所の方向に沢山映りだされている。


「ジャックさん、ここは一旦引き返した方がいいです。敵の数が尋常じゃない!」


 タウロはこちらに徒党を組んで進んでくるオログ=ハイを確認して警告する。


「……仕方ない。この建物に立て籠もってもじり貧だ。囲まれる前に撤退しよう」


 ジャックはせっかく発見したこの古代遺跡を放棄する決断をした。


「ちょっと、ジャックさん本気!? たかが魔物の集団相手に逃げるの!?」


『銀の双魔士』のリーダージェマが、止めに入る。


「タウロ君、敵の数を彼女に教えてあげてくれ」


 ジャックは探索系能力について優秀な『野伏』のスキル持ちだが、タウロの能力も同じくらい優秀そうだと感じたのか自ら説明せずにタウロに委ねた。


「……確認出来ただけで数にして二百はいます。あのオログ=ハイをこの数で相手にするのは自殺行為だと思います。──あ……! オログ=ハイの集団の後に続く複数の人影あり。その数五十ほど完全装備のオログ=ハイとは違うシルエットなので、こちらも気を付けた方がよさそうです」


 タウロの冷静だが緊急事態とわかる報告に、『銀の双魔士』のジェマも絶句する。


「……みんなわかったな? ここは放棄する。全員、速やかにここから撤退だ」


 ジャックは悔しそうに全員に告げると出入り口付近に出していた荷物をマジック収納であっという間に回収する。


「みんな走れ!」


 ジャックはこうしている間にもこちらに迫って来ているはずのオログ=ハイの集団に、こちらの動きを補足されないように全員に走るように促すのであった。



 早く行動に移したお陰で、オログ=ハイに気づかれる前に遺跡の中央付近から速やかに撤退する事に成功した。


 タウロの『真眼』で逐一観察する限り、中央広場にオログ=ハイ達は展開し、建物から出て来るはずの守護岩人形ゴーレムを隊列を組んで待っているのが確認できた。


 その反応はまるで軍隊のようだ。


 そして、それを指揮するように動いている、オログ=ハイとは違うシルエット。


 どうみても人のシルエットだよなぁ……。


 タウロは走りながら背後をチラチラと『真眼』で確認しながら首を傾げる。


 あの新種の魔物《オログ=ハイ》の生態もよくわかっていないけど、それを人が指揮しているなんて事があるのだろうか?


 タウロは増々疑問に思いながら広場から離れていく。


 オログ=ハイの集団は、守護岩人形が出てこない事にしびれを切らし、建物内に少数の隊を突入させた。


 そして、すぐに異変を感じたのか、それを指揮していたシルエットが数名建物に入っていく。


 そのシルエットが急いで外に出て来ると命令を出したのか、隊列を組んでいたオログ=ハイが周囲に散り始める。


「……僕達が先に中に踏み込んだ事に気づいたみたいです。急ぎましょう!」


 タウロがそばを走るジャックに声を掛けた。


「もう、気づいたのか! ──俺達が来た遺跡の出入り口は塞ぐしかないか……」


 ジャックは自分達の遺跡発見の手柄より、仲間の安全を優先する判断を下そうとつぶやいた時だった。


 先頭を走っていた『銀の双魔士』が、別のオログ=ハイの集団に遭遇した。


「出入り口を別のオログ=ハイの集団が固めているわ!」


『銀の双魔士』のリーダー・ジェマが立ち止まると後ろのジャック達に知らせる。


 そして、攻撃魔法を使うべく双子姉妹で詠唱を始めた。


「二人共、その魔法は止めて! ──エアリス、この一帯に魔法無効化の結界をお願い!」


 タウロはジェマの詠唱している魔法が、高威力の連携魔法だと気づいて止めるように言うが、二人は詠唱続けるのでエアリスにそれを阻止するようにお願いした。


 なぜタウロが止めたかと言うと、そんな魔法を使って出入り口が塞がってしまったら、一巻の終わりだと思ったからである。


 エアリスは愚痴を漏らす暇も勿体ないとばかりにタウロの願いを叶えるべく、上級の結界魔法を双子の姉妹の魔法より早く唱えて一帯に展開した。


 双子の姉妹は紙一重で魔法を唱え、オログ=ハイに杖の先を向けたが、不発に終わる。


「「私達の魔法がかき消された!?」」


 驚く二人を脇目にタウロ達は走り抜けていく。


 オログ=ハイの集団はそのタウロ達に気づいて陣形を組んでこちらに向かってきた。


「一時的に魔法は使えないけど、マジック収納から物を出すだけならいけるんだよ!」


 タウロは走りながらそう叫ぶ。


 その言葉通り、マジック収納から、なんとオログ=ハイの頭上に先程回収したばかりの巨大な墓石を出して見せた。


「ぎゃう!?」


 オログ=ハイ達は自分達の下に大きな陰が出来た事に、気づき頭上を見る。


 その瞬間、大きな墓石はオログ=ハイ達を潰してしまうのであった。


 そして、大きな音と土煙を上げる。


「ナイス、リーダー!」


 アンクがタウロの機転を褒める。


「それよりも、この音で他のオログ=ハイ達もこっちに来るから、急いで!」


 タウロはそう言うと、また一度、マジック収納に墓石を回収する。


 そして、


「ジャックさん、お墓の中身は回収出来たので、墓石は諦めてください」


 と告げた。


「どういう事だ?」


 ジャックが出入り口を潜って奥に入って行きながら、疑問を口にした。


 墓石もジャック達にとっては貴重な遺跡の研究対象だから、当然の疑問である。


「墓石で、出入り口を塞ぎます」


 タウロは一度、出してみて出入り口を塞ぐのに丁度いい大きさだと思ったのだ。


 土魔法で出入り口を塞ぐ方法は、エアリスの魔法無効化結界でしばらく使えない。


 唱えたエアリスでも一度使用したらすぐには解除できないのだ。


「……わかった。中身は回収できたんだな?」


「はい。オログ=ハイの頭上に落としたショックで、中にかけられていた盗掘防止の仕組みによる魔法の類が全て壊れたみたいなので、無事、回収できました。ですから、中身については帰ってから確認してください」


 タウロがそう報告すると、ジャックは頷く。


「……やってくれ」


 ジャックの一言から間髪を入れずに、タウロは出入り口の穴を墓石でピッタリ塞ぐのであった。

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