550話 連携の話し合い
タウロ達『黒金の翼』の実力の一端を示してからは、道中の魔物退治はジャック達『青の雷獣』チームは当然ながら、双子のジェマ、ジェミス達『銀の双魔士』チームとは不和になることなく順調に行われるようになった。
雇い主であるジャック達チーム『青の雷獣』は、ほぼ出る幕は無く、歩を進める事が出来た。
そして古代遺跡があるという洞穴の入り口到着前に一度、腕慣らしと連携の最終調整とばかりにその実力を軽く見せただけだ。
その腕慣らしでは、やはり超攻撃型のA-ランク冒険者チームといった実力を示した。
リーダー・ジャックは爪剣使いとして、敵の懐に飛び込んで魔物をズタズタに切り刻んでいたし、長剣使いロンガは敵の胴体を真っ二つに、戦斧使いのアックはその剛腕から繰り出される鋼鉄の塊であるその戦斧を魔物の頭上に叩き落として砕き潰してしまう。
爆炎の女魔法使いボマーヌは魔物を一度の魔法で複数の魔物を爆散させていたし、森の神官フォレスもその味方の各身体強化や傷の回復を冷静に行って援護していたから、このチームはとことん爆発的な攻撃力に特化したチームなのがタウロ達にもよくわかった。
確かにこのチームを支援する者によって、よりその攻撃の威力増大と、その継続時間の延長を後押し出来れば、大抵の敵は圧倒的な攻撃力に防戦一方で為す術もなく討伐されてしまうだろう。
攻撃は最大の防御を実践しているチームだ。
「それでは地下に降りる前に、最終目標である地下の古代遺跡の守護者について、説明しておこうか」
ジャックが戦闘後一息つき、地下に潜る前に地上で野営する事にすると、そう話し始めた。
「俺達もちゃんと細かく確認できたわけではないんだが……、今回の地下古代遺跡の最終討伐目標である守護者は、四メートル級の巨大な守護岩人形一体だ。俺達が遺跡内に踏み込むと動き始め、俺達はその守護岩人形に危険を感じてすぐにその場を後にしたので、あまり情報がない。ただ、その大きさの割に動きが早かった印象があるな」
「……守護岩人形となると、体のどこかに稼働する為の『核』があるはずですよね」
タウロが、前世と今世の知識も踏まえて質問した。
「よく知ってるな、その通りだ。俺達も帰ってから調べてそれを知ったよ。──フォレス、説明を頼む」
ジャックは、詳しい事は森の神官フォレスに任せた。
「守護岩人形は先程指摘があった『核』が元になっていると思われます。そして、古代遺跡自体がかなり古いものであると推定できる事を考えると、その『核』には定期的に魔力が充填されていると思われます。そうでないと今でも動く説明がつきません。とはいえ、それがわかったところで我々は守護岩人形を倒さない事には遺跡の調査も出来ないですが……」
「やはり、守護岩人形の破壊が先決ですね。……ちょっと勿体ない気もしますけど……」
タウロは守護岩人形の動く原動力に興味を持ったのか、そうつぶやく。
「そうなのだ。だが、みんなの危険を考えると仕方がないだろうな……。──それでだ。守護岩人形を我々『青の雷獣』が攻撃の要となり、みんなの後押しで短時間でこれを破壊、討伐して遺跡を制圧する。それから数日は遺跡の調査に当てる予定だ。冒険者ギルドにはその後、詳しい報告をするわけだが、それまではみんなも守秘義務については契約通り、守ってもらいたい」
森の神官フォレスは今回の古代遺跡発見はチームの偉業だから、最後までやり遂げたい意志を強く感じる。
「当然です。わかりました。──あとは連携についてですが──」
タウロは、森の神官フォレスに理解を示した後、『銀の双魔士』リーダーのジェマにも話を振る。
ジェマは話に入れず、ずっと聞いているだけだったから、そろそろ中に入れないと不機嫌になりそうだと思ったのだ。
「うちは当然、魔法攻撃を中心に支援するつもりよ」
ジェマはここぞとばかりにそう提案した。
「──それなんだが、今回、攻撃については魔法を含め、うちのチーム限定で行うつもりだ」
ジャックが何やら真剣な表情でジェマの意見を否定する提案をした。
そして続ける。
「ジェマ達は攻撃魔法以外の支援系魔法ができるだろう?今回はそれに集中して欲しい」
「な、何でですか、ジャックさん!うちのチームの売りは私達の魔法攻撃よ、それはわかっているでしょ!?」
ジェマは自分達の長所を否定されたと思って、少し怒りを見せてジャックに噛みついた。
「それはわかっている。だが、この守護岩人形の特徴を知っているか?それは攻撃してきた相手を標的にするというものだ。つまり、ジェマ達が攻撃魔法を守護岩人形に対して使えば、守護岩人形は君らを標的にして攻撃を加える事になる。さすがにそれは危険すぎる。だからその危険性も考え、我々『青の雷獣』が標的を含めて引き受けるつもりだ。だから、君達には我々への支援を依頼したのだ」
「……わかりました。でも、もし、みなさんが危険だと感じた時には僕達も標的を取る為に攻撃させてもらいます。いいですか?」
タウロはジャックの考えを理解した上で、最悪の場合を想定して提案した。
「……その場合は、君らには逃げてもらいたいんだがな。全滅は避けたいから、その判断は本当に最後の手段だと思ってくれ」
ジャックは、タウロ達『黒金の翼』、ジェマ達『銀の双魔士』の二チーム全員に視線を送って確認する。
「了解です。そうならないように、『青の雷獣』のみなさんが満足できる支援に力を入れますよ」
タウロはジャックの決意を最大限尊重して頷く。
「……わかりました。私達もそうするわ」
ジェマの方は渋々という感じであったが、賛同する。
「よし。明日は地下の古代遺跡のある場所まで一気に潜るから、今日は早く休んでくれ。──じゃあ、後は夕飯の準備だ!」
ジャックは先程までの真剣な面持ちから切り替えるように笑みを浮かべると、食事の支度の為に、仲間に指示を始めるのであった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
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