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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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537話 決着と口癖

 タウロはアルファ・ドラゴンとエアリスの間に立ち、マジック収納から出した盾とぺら擬態の『タウロ改』を構えた。


 エアリスはその間にタウロに複数の強力な強化魔法をかける。


 さらには周囲全体を覆う結界魔法を唱えた。


「──これで逃げる道は無くなったわよ!」


 エアリスは正気を失っているこの二体のドラゴンが万が一逃げて他の者に危害が及ぶのを避けたのだ。


「大丈夫、僕が逃がさないから」


 タウロは背後からのエアリスの声に頷いて答える。


「グオォー!」


 アルファ・ドラゴンは本能的にタウロ達を強敵と感じたのか、大きく吠えて威嚇する。


 魔力のこもった威嚇だ。


 通常であればこれだけですくみ上り、動けなくなるところだろう。


 だが、タウロ達にとっては、どこ吹く風である。


 いや、大声である分、鼓膜にはうるさい。


「タウロ、うるさいから黙らせるわよ」


 エアリスは、黒壇の杖を構えて殴りかかりそうな勢いである。


「ちょっと!それは僕がやるからね?」


 タウロがエアリスの動きを抑えようと気を逸らした時であった。


 アルファ・ドラゴンは隙を見つけたとばかりに、右手の凶悪な爪を振るってタウロに襲い掛かる。


「──罠に引っ掛かったね!」


 タウロは本能剥き出しで隙を見せないアルファ・ドラゴンに対してわざと隙を見せて誘ったのだ。


 エアリスの動きもその為である。


 タウロは盾でアルファ・ドラゴンの攻撃を左に受け流して態勢を崩し、ここぞとばかりにドラゴンの弱点であるはずの顎の下の逆鱗にぺら擬態の『タウロ改』を突き立てた。


 だが、火花を立てて弾かれる。


「弱点が硬い!」


 タウロは軽く驚く。


 ドラゴンといえば、逆鱗が弱点なのは相場だと思っていたからだ。


「タウロ!こいつ、魔法で弱点の首を硬化させているわ、気を付けて!」


 エアリスがアルファ・ドラゴンの魔力の動きを感知して警告した。


「……なるほど。そう簡単には勝たせてくれないか」


 タウロはまた、カウンター狙いとばかりに盾を前に構えてアルファ・ドラゴンの攻撃を待つ姿勢を取る。


 だが、もちろん、アルファ・ドラゴンは先程の教訓から警戒して不用意な攻撃を避けて、ゆっくり横移動しながらタウロを睨む。


「……理性を失っているはずなのに、慎重だなぁ」


 タウロがぼやくと、それに反応するかのように、アルファ・ドラゴンは大きく息を吸った。


「タウロ、来るわよ!」


 エアリスがそう言うと同時に、タイミングよく魔法を発動する。


 どうやら、次を読んで準備していたようだ。


 タウロはその息を吸うタイミングに合わせて突っ込んでいく。


 お互いがお互いの次の動き出しを信じての行動である。


 見事に息の合った連携だった。


 相手が迫る前にアルファ・ドラゴンは『火炎の息』をタウロに吐く。


 タウロはそれを防ぐ事なく、剣を構えたまま向かっていくが、次の瞬間、タウロが消えた。


『空間転移』? いや違う、闇落ち勇者アレクサから強奪した『瞬間移動』でタウロは上空に飛んでいた。


 ぺらの擬態した『タウロ改』を真下にいるアルファ・ドラゴンに構えて落下していく。


 アルファ・ドラゴンは火炎の息を吐いたまま、上空のタウロに気づいたが反応が追いつかない。


 その時にはもうタウロはアルファ・ドラゴンの背中に剣を突き立てていた。


 ギャー!


 剣先はアルファ・ドラゴンの心臓に達し、ぺらはその剣先をウニように一瞬擬態させ、ダメージ増加を図る。


 その事によって、強靭なアルファ・ドラゴンも耐える事も出来ず即死するのであった。



 ラグーネとアンク、シオンはガンマ・ドラゴン相手にアンクの大魔剣による強力な攻撃とラグーネの鉄壁の防御力、シオンのそれらを強化する補助魔法というバランスの良い立ち回りで圧倒していた。


 ガンマ・ドラゴンはアルファ・ドラゴン同様、硬い鱗と弱点の首を硬化させて耐えていたが、攻勢に出たシオンの『相対乃魔籠手』による内部に響く右の籠手の光属性の強力な打撃と、左の籠手の闇属性による状態異常のランダム攻撃で、強力な麻痺を与える事に成功した。


 麻痺によって動きを鈍らせたので、アンクが風魔法で上空に大きく飛躍し、大魔剣を構えてガンマ・ドラゴン目がけて落下する。


 奇しくもタウロと同じ止めの刺し方だ。


 だが、タウロのぺら擬態の『タウロ改』に比べて威力が下がるのか、刺さりが浅い。


 アンクが「あとは任せた!」と告げて浅く刺さった大魔剣を抜いてその場から離れると、アンク以上に上空に飛んで魔槍を構えて落下してくるラグーネが頭上にいた。


 竜騎士であるラグーネの本来の攻撃がこの上空への大飛翔からのものなのだ。


 それにラグーネの魔槍は地属性であり、刺さるとぺらの擬態と同じように刺し口を荒々しく負傷させる。


 ガンマ・ドラゴンはそのラグーネ自慢の魔槍を背中に突き立てられ、その槍先によってアルファ・ドラゴン同様、心臓をズタズタにされて絶命するのであった。



「死んでも人には戻らないんだね……」


 タウロが絶命したアルファ・ドラゴンと、ガンマ・ドラゴンの両方を確認してつぶやいた。


「人間辞めてまで、私達を殺そうとしたのね」


 エアリスが溜息をついてタウロの傍で背中に手を置く。


「……やれやれ。これで『黒金の翼』の偽者討伐が出来たな。リーダーの偽者も捕まえたし。でも、俺の偽者いなかったな……。くっ、影薄い」


 アンクが、一件落着とばかりに感想を漏らしたが、何か変な台詞を言った。


 しかし、みんなスルーする。


「タウロの偽者はいたのに、私の偽者もいなかったな……。くっ、殺せ」


 ラグーネはどうやら、北の帝国からの評価が低いと思ったのだろう、残念そうだ。


「ボクも誰がボクを演じているんだろうと期待したんですが、いませんでした。……くっ、生きる」


 シオンも残念そうに言う。


「それは仕方ないわよ。タウロ役を用意するだけでも、大変だと思うし……。さすがに古株の私役はいると思ったんだけど、いなかったし……。くっ、生きてるうちに(嫁ぎたい……!)……」


 エアリスはラグーネとシオンを励ましながら自分も同じ愚痴を漏らすのであったが、最後にタウロには聞き取りにくい言葉が聞こえた。


「え?生きてるうちに……、──憑きたい?」


 タウロはエアリスも変な口癖がついたの!?とばかりに聞き返す。


「あ、違うから!今のはただの願望だから!」


 エアリスは今まで『竜の穴』での苦行を乗り越える間の目標が口癖になっていた事をぐっとこれまで我慢して口から出ないようにしていたのだが、油断して思わず出てしまったようだ。


「憑きたいのが願望なの?」


 タウロは聞き間違えた言葉に疑問符が頭に沢山浮かぶ。


「憑きたいわけないでしょ!聞き間違いよ!」


「じゃあ、何て言ったの?」


「それは秘密よ。まだ、その時じゃないし……」


 エアリスは顔を赤らめて拒否した。


「?」


 タウロは頑なにエアリスが言わなさそうなので、これ以上の追及は諦めるのであった。

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