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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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483話 人気急上昇

 街道に出るまでの近道は正直、森や山間の道が多く、魔物に遭遇する確率が高かった。


 その度に近衛騎士とタウロ達『黒金の翼』が活躍する事になるのだが、それが数日にも及ぶと誰もがただの貴族の子息令嬢ではない事を強く認識し始めていた。


 それは王太子一行と貴族の取り巻きも一緒で、最初こそ貴族として野蛮だとか品が無いなどと陰口を叩く者が多かったのだが、頻繁に魔物に襲われる日が続いて命の危機を感じる様になると、その中何度も救われる事で頼れる存在であると心に刷り込まれる事になったようだ。


 王太子はこのタウロ達が第五王子フルーエの推薦によるメンバーだとわかっていたから、正直認めるのを嫌がっていた。


 これ以上、フルーエ王子の株を上げて自分の地位を脅かされたくなかったのだ。


 サート王国内を巡見する聖女一行の責任者に名乗り出たのも、日増しに高まるフルーエ王子の名声に危機感を持ったからであった。


 自分を支持するハラグーラ侯爵も孫スグローを付けて不測の事態に備えさせると言ってくれていたが、そのスグローのアドバイスを聞いて近道を選ぶとこの体たらくである。


 八方塞がりの状況にこの数日、王太子は歯噛みするのであった。



「ねぇ、エアリス。移動している僕達にエアリスの使う魔物除け的な魔法は無いのかな?それがあればこの一行が魔物に襲われる事も格段に減ると思うのだけど……。──さすがに都合が良すぎるか……!ごめん、忘れて」


 タウロが馬車に揺られながら、同車内のエアリスに駄目元で聞いてみた。


「別になくはないけど、使う気はないわよ」


 エアリスはサラッととんでもない事を答えた。


「「「「え!?」」」」


「……あるの……?」


 タウロ達はエアリスの返答に思わず驚いて大きな声を出すのであったが、すぐに声のトーンを落としてタウロがエアリスに聞き返した。


「……あるわよ。でも、こんな馬鹿な近道を選択した王太子殿下を助ける様な魔法、使う義理ないでしょ?……それに、結界魔法と違って効果が薄いから何度も唱え直さないといけないものだし……」


 エアリスは小声でみんなの輪の中で答えた。


「確かに……。こんな馬鹿な近道は冒険者でも選ばないから、助けたくないわな」


 アンクが王太子をあざけるように、声を落として笑う。


「護衛の近衛騎士には悪いが、王太子に華を持たせる様な事はしたくないな」


 ラグーネもこの旅で王太子の一行が余程嫌いになったのか賛同した。


「ボクもエアリスさんが言うような魔法使えますけど……、確かにあの魔法は魔力消費が激しい割に効率が悪く効果が短時間なので余程じゃない限り、使う気にはなれませんね」


『光魔道僧』というスキル持ちであるシオンもエアリスレベルの魔法を使えるようだ。


「……そうなのか。じゃあ、みんなこの事は秘密で。なんかそれに便乗して僕達の活躍の場になっているのは心苦しいけど……」


 タウロはこの旅でかなり親しくなってきた近衛騎士達が連日、苦労している事がわかっているだけに気が重くなるのであった。


「近衛騎士は王家の守護者でしょ。王太子殿下のお守りも仕事の内だから仕方が無いわよ。……もしかしたら、この任務を最後に辞める人はいるかもしれないけど」


 エアリスは王太子のガッカリな人間性を知って近衛騎士も転職する者が現れるかもしれないと思って答えた。


 そんな話をしていると、タウロの『気配察知』に魔物の気配が引っ掛かる。


 今日は二件目だ。


「魔物が来たからちょっと仕留めてくるね」


 タウロはそう言うと馬車の扉を開けて屋根に上がる。


 そして、移動しながら魔物の気配がする森に向けて光の矢を数本放つのであった。



 当然ながらタウロ達は一緒に旅する近衛騎士の間でも良い意味で評判になっていた。


 近衛騎士は選ばれた精鋭達であるが、冒険者の様に魔物退治には精通していない。


 先日のオーガ戦でそのぼろが出てしまった。


 だから、冒険者でもあるタウロ達に野営の時や、宿泊先で教えを請い、対魔物戦の勉強会が開かれていた。


 当初、近衛騎士にも誇りがあるし、王太子におもねる近衛騎士もいたから教えを乞うものは、ごく一部であった。


 しかし、連日の魔物襲撃で頭を悩ませる中、それに即応するタウロ達『黒金の翼』の立ち回りに感じ入る者は多く、日増しにタウロ達の周囲には近衛騎士達が囲んで話を聞くようになる有り様であった。


 そこにはタウロとエアリスを尊敬の念で見ていた平民出で、聖女の取り巻き達も耳を傾けていた。


 これにルワン王国の聖女警備の騎士も加わり、大人気となるのであった。


 そこで感心されるのが、まだ、冒険者ランクがD+という事であった。


「その強さでD+とは、意外に冒険者というのはレベルが高いのだな……」


「私も噂にしか聞いていなかったが、こんなに質が高いのか冒険者ギルドは……」


「俺はすぐにでもCランク扱いの冒険者になれると誘われた事があったのだが、どうやらお世辞だったようだ」


 近衛騎士達はタウロ達の強さに冒険者レベルの水準を想像して驚かされるのであったが、タウロ達はC-ランクへのランクアップを止めていたので、実際はどこまで評価が伸びるかわからないのであった。


 そのような感じでタウロ達の評価が上がり、近衛騎士達も実戦での魔物討伐が効率よくなっていった頃、ようやく街道に出る事が出来た。


「あれ?……この道、何か既視感があるなぁ」


 タウロは約一週間ぶりの街道に見覚えがあったのか首を傾げた。


「どうしたの?」


 エアリスがタウロの様子に気づいて聞いてきた。


「いや、この街道に見覚えがね?──すみません、近衛騎士の方。この街道はどこに繋がってますか?」


「この街道ですか?ここから近いところだと、旧サイーシ子爵領、そこから二日ほど北上してハラグーラ侯爵領ですね」


「旧サイーシ子爵領!?あ、だからか!──道理で見た事ある景色が広がっているわけだよ……」


 タウロがこの道を最後に通ったのはもう数年前の事だった。


 その間、いろんな場所を巡って冒険をしてきたから、忘れていて当然である。


 タウロは、いつの間にか旧サイーシ子爵領の傍まで訪れていたのであった。

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