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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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476話 取り巻きの印象

 聖女誘拐を謀った謎の一団の撃退事件は、当然ながら聖女の取り巻きである一行の耳にも入る事になった。


 その中で、サート王国側の護衛責任者である王太子の判断で、帝国の特殊部隊である事は伏せられた。


「襲撃してきた奴も愚かだよな。まさか全く関係ない令嬢を襲うとは!」


「その通りです。どこの国の連中かはわかっていないそうですが、間抜けですね」


「もし、聖女様が直接襲われていたとしても傍にいる我々が撃退していただろうけどな」


 聖女の取り巻きであるハラグーラ侯爵の孫スグローを中心とした貴族階級の若者達は、自分達の実力を過信していた。


「それに平民のテイマーとはいえ、──マホドだったか聖女様に気に入られて傍にいるお前も文字通り、番犬代わりにはなるからな」


 スグローは、新たに自分の取り巻きの一人になった若者に話しかけた。


「私などスグロー様の足元にも及びません。もちろん、うちの魔物達がいれば襲撃者など、いち早く気づいて被害を出す事なく撃退していたと思います」


 平民テイマーのマホドはタウロにテイマー自慢をしていた若者だったが、すっかりハラグーラ侯爵の孫スグローの側近気取りだ。


「そうだな。私の剣は有名なツヨーソ流剣術の流れを汲んでいるから、その気になれば撃退など容易だろうな。しかし、お前達の活躍の場を奪うのは上に立つ者としては控えないといけない。襲撃者が現れた時はお前達が撃退するのだぞ」


 スグローは自慢の一品である自分のきらびやかな剣を抜いて見せびらかすように軽く振ると、そう取り巻き達に言うのであった。


「確かに、そうなるとスグロー様の出番はないですね。はははっ!」


 サート王国側の貴族達の取り巻きは、こうしてスグローを中心に取るに足らない、もしもの話で盛り上がるのであった。



 その一方で平民出の取り巻き達はというと──。


「聖女様誘拐を目論んだ一団の件、タウロ様、エアリス様が囮を買って出て奮戦されたそうだぞ?」


「そうなのか!?……俺達にもお声がけして頂けたら良かったのになぁ!」


「さっき領兵達が話しているのを聞いたが、被害が大きく、敵は相当強かったらしい……。タウロ様達も負傷して苦戦したみたいだ」


「あのお二人の実力でも苦戦したのか?──それだと俺達では何もできずに死んでいたかもしれないぞ……」


 平民出の取り巻き達は、タウロとエアリスの実力をこの旅の途中で見せられ十分に知っていたから、襲撃者が相当な手練れだったと容易に想像ができるのであった。



 ルワン王国側の取り巻き達は、ドナイスン侯爵からの報告を聞いて、気を引き締め反省していた。


 今回はサート王国側、それも聖女の鑑定で世話になったバリエーラ宰相の領地の領兵が多大な犠牲を払ったと聞いて、責任を感じずにはいられなかったのだ。


「お前達は、聖女と共に我がルワン王国の将来を担う者だから、簡単に死んでもらっては困る。だが、国の恥にならないように聖女をお守りしなくてはいけない。その為にその身を犠牲にしなくてはならない場面があるかもしれないが、その時は躊躇するな。聖女は我が国の宝である。そして今回、サート王国側の若者達が聖女の身代わりになって囮となり、体を張って戦ってくれたのだ。これには大いに感謝しないといけない」


「おお……!その若者達とは一体誰でしょうか?僕達も感謝しないといけません!」


「一人はグラウニュート伯爵子息タウロ殿、もう一人はヴァンダイン侯爵令嬢エアリス殿だ。二人共、囮になる事に躊躇なく志願して聖女の身代わりになって負傷したが、あの敵を相手に生き残ったのだから彼らもこのサート王国を担う有力な若者と言えるだろう。みなも彼らと親しくなっておくが良い」


 ドナイスン侯爵がタウロ達を絶賛すると、友好関係を結ぶ事を勧めるのであった。



 この事件が起きた事で聖女一行の旅の予定は一部キャンセルされ、バリエーラ公爵領に数日延長して滞在する事になったのだが、その間、タウロとエアリスに感謝やお礼、友好を結ぶ事を願うルワン王国側の若者達と、タウロとエアリスを評価するサート王国側の平民出の若者達が集まって連日、友情が育まれる事になった。


 これが面白くない一団がいた。


 ハラグーラ侯爵の孫、スグローの一団である。


「領兵に多大な被害を出して失敗したと言えるような作戦の中心人物を英雄扱いとは、ルワン王国側の彼らにはがっかりだな」


 スグローは大袈裟に溜息を吐くと、首を振って周囲に返事を促した。


「スグロー様の言う通りです。ルワン王国側の者達はきっと間違った情報に踊らされているのでは?こちらの平民出の取り巻きも持て囃しているところを見ると、そうとしか思えません」


「王太子殿下も詳しくはお話にはなりませんでしたが、あの二人が余計な事をして問題を大きくしたとおっしゃっていましたから、過大評価されているのは確かです」


「嘆かわしいですね。真の英雄は戦わずに勝つと言います。スグロー様の威光で武威を示さずとも敵が進んで道を開けてくれる事がわからないのですよ」


 スグローの取り巻き達は好き勝手に色々と言うのであったが、どれも的を射たものは何一つないのであった。



「タウロ。ルワン王国側の取り巻きの人達、真面目で誠実そうな人ばかりだったね」


 エアリスは、よほど印象が良かったのかルワン王国の若者達を褒めた。


「そうだね。ああいう人達を見ているとルワン王国の未来は明るそう」


 タウロもエアリスに賛同した。


「聖女マチルダからは未だに感謝の一言もないけどね?」


 エアリスが嘆息する。


「──それは誤解もあるからさ」


 タウロはエアリスの指摘に苦笑すると、マチルダの擁護をする羽目になるのであった。

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