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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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472話 紙一重の戦闘

 タウロとエアリスを取り囲む帝国兵達は、またも想定外の事に内心驚いていた。


「テイマーか!?だが見た事がないスライムの魔物だ……。全員、魔物を警戒しつつ仕留め、聖女を押さえよ!」


 帝国兵を指揮する隊長はもう、正体を隠す必要性を感じなかったのか帝国兵に紛れて指令を出す事を止め、タウロと対峙しながらそう言い放った。


「小僧、貴様は強い。ここまでよく上手に立ち回ったものだ。だが奥の手である魔物も聖女の守りに出して、貴様の手の内は出し尽くしたようだな。それがわかれば、もう我々の敵ではない」


 隊長はそう言うと剣を抜く。


「……それはどうでしょうか?」


 タウロも危機なのはよくわかっている。


 アンクも負傷して下がり、ラグーネとシオンが奮戦しているが、囲みを突破する程ではない。


 それだけこの帝国兵達が強敵なのだ。


 頼みの綱であった領兵は帝国兵の魔法や剣技で包囲網はずたずたになり、中にはその攻撃に逃げ惑う者もいる。


 当初この作戦の為にムーサイ子爵は万全を期して大袈裟とも思える五百もの領兵を用意したのに、それが帝国兵五十名に散々であった。


 すでに魔法による爆発音で周辺住民も大騒ぎになっている。


 領兵が近づかない様に警告をしているが、遠目に戦闘が行われているのはもう周知の事実であった。


 タウロはそんな不利な状況下においても言い返したのはただのハッタリであった。


 ここまで帝国兵が強いと思っていなかったのだ。


 それにこちらは地の利があり、領兵も多く揃えていたからそれが慢心に繋がったのかもしれない。


「……ほう。まだ、何か奥の手があるのか?ならば早く出しておいた方が良いぞ?そうでないと貴様は数秒後には死んでいるのだからな」


 隊長はそういうと腰を落として剣をスッと構える。


 これは本当にヤバいかも……。


 タウロはエアリスの方を確認した。


 周囲には帝国兵が群がっているが、ぺらがいるので中々近づけない様子だ。


 だが、ぺらも万能ではない。


 知る限りタウロにとってぺらは最強の味方ではあるが、攻撃と守りどちらもやらせるとなるとどこかに穴が出来る可能性は十分ある。


 だからエアリスを守る事に集中させる命令を出したのだ。


 しかし、それだと帝国兵の脅威にもならないから、ぺらがどこまでバランスよく立ち回ってくれるかにもよるのであった。


「よそ見とは余裕だな」


 耳元で隊長の声がした。


 いつの間に!?


 タウロがギョッとした瞬間。


 グサッ!


 タウロは自慢の革鎧の胴体の隙間をぬって刺されていた。


「グハッ!」


 内臓を傷つけられたのかタウロはその場で吐血した。


「大丈夫か?魔物を呼び戻さないと、自分の命が危ういぞ?」


 隊長はわざとタウロを仕留めず、負傷させたようだ。


 ぺらを呼び戻させる事で、エアリスを押さえる算段だろう。


「タウロ!」


 エアリスは、それに気づくと、すぐに治癒魔法を詠唱する。


 今は、ぺらが守ってくれているから魔法も十分可能なのだ。


 だが、隊長は負傷したタウロを黙って回復させる気はない。


 傷が癒されている間に、またも動きが鈍っているタウロに斬りかかり、新たな深手を負わせる。


「驚いたな。聖女の回復魔法はとても強力なようだ」


 隊長はそう言いながらタウロに次々と深手を負わせていく。


 最早タウロはサンドバッグ状態であったが、だが、そのタウロも斬られているばかりではなかった。


 新たに覚えた能力『逆境能力強化』で『超回復再生』能力を増幅させ致命傷にならない様に回復していたのだ。


 そこにエアリスの治癒魔法で、さらに回復して元に戻るという状態になっている。


 だがそれも長くは続かないだろう。


 タウロは頭を働かせると一つの方法に辿り着いた。


 ここはやはり、『逆境能力強化』を使用して……。


 タウロは『逆境能力強化』での『超回復再生』を使用した治癒を止めた。


 そうするともちろん、タウロは深手追っても回復できなくなる。


「『逆境能力強化』での帝国兵全体に『スキル殺し』発動!」


 タウロは帝国兵全体の様子も深手を負いながら一人一人を把握していたから、敵の具体的なスキルを把握しないと使用できない『スキル殺し』もピンポイントで発動できた。


 タウロの『スキル殺し』発動で、帝国兵達は自分達のスキルを一時的に発動出来なくなった。


 それは魔法であったり、肉体強化であったり、剣技であったりと様々であったがタウロの『逆境能力強化』によって強化された『スキル殺し』によって封じられたのであった。


「ま、魔法が!?」


「技が発動しないだと!?」


「力が発揮できない!」


 帝国兵達は困惑する。


 隊長も同じ様子で、


「俺の『目』が使えないだと……!?」


 とつぶやくと大いに動揺した。


 そこへここぞとばかりにラグーネが強敵であったはずの帝国兵に畳みかける。


 シオンは帝国兵の内側に飛び込むと傍若無人の暴れっぷりを見せた。


 見る見るうちに帝国兵達はラグーネ達に戦力を削られて行く。


 領兵達も形勢が逆転した事に勢いづき、無力化された帝国兵を捕らえるのであった。


「な、何をした貴様!?」


 隊長は敵の動きをある程度先読みする事が出来る『目』を持っていたが、タウロの動きが全く読めなくなっていた。


 それは力が封印されたという事だ。


 それをやったのはこの子供なのは確かだがそれが何かなのかはわからない。


「……奥の手、……ですよ」


 タウロは深手を負った状態で息も絶え絶えに隊長に答える。


「くっ!……包囲網を一点突破する、負傷者を内側に密集体形!一時撤退だ!」


 隊長は残りの帝国兵に撤退命令を下した。


 そうなるとエアリスの包囲も解かれる。


「……包囲を解くと命取りですよ?」


 タウロはこの強力な帝国兵の隊長を逃がす程甘い考えはなかった。


「……ぺら!」


 エアリスを守っていたぺらはタウロのその声だけで何を命令されたのか理解した。


 ぺらは隊長の傍までその素早さを持って瞬時に移動した。


 ぷるん!


 一瞬の可愛い動きと共に、体をそれとは対照的なハリセンボンの様にとげとげ状態にして一部の針を一気に伸ばした。


「は、早い……!」


 隊長はそれを防ぐ余裕は皆無であった。


 ぺらの攻撃によって、隊長は一瞬にして串刺しになり絶命するのであった。


 ぺらは目的を果たすとすぐにタウロの傍に戻る。


 タウロはそれを確認すると、視界が暗転した。


 深手を負った体では、これ以上、意識を保つのが不可能であったのだ。


 タウロは傍にいたぺらの上に倒れ込むのであった。

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