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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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467話 凶器的な実験

 タウロとエアリスは魔道具通りでのお店巡りを堪能すると、町外れの何もない広い場所に移動した。


 公爵家の領都だけあり、王都のように何もない広い場所も多い。


 こういう場所はいざという時に軍を展開させたり、色々な非常時に仮施設を建てる場所であったりするから、領都内にいくつも点在している。


 そこの場所で今度はタウロが実験をしようとマジック収納から魔力回復ポーション出して、エアリスに渡す。


「今度はどんな能力を覚えたの?」


「『逆境能力強化』というのかな」


 タウロがサラッと不穏な香りがする能力名を告げた。


「……タウロ、シオンも念の為呼んだ方がよくない?」


 エアリスは危険を察知して、回復役としてシオンも準備させる提案をする。


「大丈夫だって。今回は僕が元々持っている『超回復再生』も利用するつもりだからエアリス一人で大丈夫だと思う」


 タウロは自信を持って頷いて見せるのだが、エアリスにしてみたら毎度のタウロである。心配しかない。


「……わかったわ。私も成長して多少の危機なら乗り越えられる自信もあるから、何かあった時は全力で助けるから安心して」


 エアリスは、腹を括ると改めてタウロの実験に付き合う事にするのであった。



「それでは始めます……」


 タウロは、神妙な面持ちでそう告げると、闇の精霊魔法を詠唱し始めた。


 エアリスは闇系について専門外だが、その詠唱の長さから上位のものである事は容易に想像が出来た。


 そんな中、タウロは詠唱を終えると、右手を自分の胸に当てた。


「『上級全状態異常魔法』!」


 タウロは攻撃魔法を自分に発動したのだ。


 すると、タウロは口を手で押える。


 その指の間から吐血して血が溢れる。


「ちょ、ちょっとタウロ!あなた何しているのよ!」


 あまりに想定外のタウロの行動に一瞬固まったエアリスであったが、急いで回復魔法を唱えようとする。


 するとタウロがそれを手で制した。


「……だ、大丈夫。これは想定範囲内……、だから……」


 息も絶え絶えに苦しそうにするタウロ。


 そして、タウロはその状態で魔法を詠唱する。


「『浮遊』!」


 タウロの魔法の中でも使いどころが限られている『浮遊』を、この状況下で唱えると思っていなかったので、エアリスは回復魔法を中断させてタウロを凝視した。


 するとそのタウロの体がふわっと浮き上がる。


『浮遊』を使ったのだから当然なのだが、普段のタウロの『浮遊』は、一メートルも浮けばいい方である。自分で自分に状態異常魔法を使って顔が真っ青なタウロは十メートル以上浮き上がっていた。


「え?どういう事!?」


 エアリスが驚き空中のタウロを見上がげる。


「せ、成功……!」


 タウロは真っ青な顔のまま、笑みを浮かべるとゆっくり地面に降りてきた。


「もしかして、逆境能力強化って、タウロが危機的状態の時に能力の効果を上昇させてくれる能力って事?」


 エアリスが頭を働かせてそう推察した。


「……正解。多分そうだろうなぁとは思っていたのだけど、自分の危機的状況を作る事が嫌で、どうしようか迷っていたんだよね……」


 タウロは顔色が悪いが徐々にその顔色も元に戻り始めた。


『超回復再生』で体内の回復を始めているのだろう。


 放っておけば完全に回復するであろうが、エアリスはその間、タウロの苦しむ姿を見ていられないので回復魔法を唱えて、タウロを回復してあげた。


「ありがとう、エアリス。どうやら、考えていた通りの能力だね」


 タウロは自分の予想が正解した事に満足した笑みを浮かべた。


「どうしてタウロの能力って、こんな変なものが多いのかしら」


 エアリスが呆れて愚痴をこぼした。


「能力自体は全部、使える良いものばかりだからね?」


 タウロはそこは訂正する。


「……そうね。これまでもそういった能力で危機を乗り越えて来ているのだから使えるのは確かね。ごめんなさい。それで、やっぱり、回復したらもう、空は飛べないのかしら?」


 エアリスの指摘に、タウロもすぐに『浮遊』を再詠唱してみた。


 タウロの体が一メートルほど浮遊すると、そこで止まる。


「うーん。僕の『超回復再生』の回復速度との兼ね合いでどのくらい『逆境能力強化』状態が続くのか試さないといけないね……。──正直、『上級全状態異常魔法』って、全身内外部の痛みが半端ないんだよね……」


「でしょうね!」


 エアリスはタウロの言葉に間髪を入れずにツッコミを入れた。


「あんな魔法、普通、痛みのあまり発狂するどころか、ショック死する方が多いと思うわよ?」


 エアリスは大きな溜息を吐いて、指摘した。


「僕の場合、『状態異常耐性』能力があるから、激痛にも耐性があるんだよね」


 タウロは、けろっとした顔で答える。


「それも知っているけど、もう少し健全な他のやり方無いの?」


 エアリスはあまり感心しない実験方法に苦言を呈した。


「そうだなぁ……。じゃあ、小剣でお腹刺す方がまだ、魔法による全身への痛みよりもマシなのかな……?」


「それも止めてよ!自分のお腹を刺して能力の実験するとか正気の沙汰じゃない行動を、どこの人間が止めずに見ていられるのよ!──はぁ……。それ以上の事を私見届けて来ているわね……」


 エアリスはじっとりとタウロを恨めしそうに見る。


「あはは……。いつもお世話になっています……」


 タウロは苦笑すると、お礼を言うのであった。


「……もういいわよ。じゃあ、この後も実験するの?こうなったら最後まで徹底的に付き合うわよ!」


 エアリスは投げやりにそう答える。


「じゃあ、次はお腹を負傷させた状態で──」


 この後も、タウロとエアリスの狂気的な実験は続くのであった。

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