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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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449話 続・聖女の式典

 国内の有望な若者達が『聖女』と知己を得る為に集められた式典は、ハラグーラ侯爵の孫スグローの様に既に徒党を組んでいる者もいたが、近くの者と話して親しくなり交流を深める事から始める者がほとんどであった。


 そんな中、エアリスはヴァンダイン侯爵の娘として、グラウニュート家の長男タウロ、嫡男である次男ハク、そしてシオンと一緒にいたので同じ様に徒党を組んでいる一派と思われていた。


「スグロー一派じゃないけど、僕達も『聖女』様にそろそろ挨拶する為に並んだ方がいいかもね」


 タウロが指さす方向には『聖女』が今回、取り巻きになる若者達から挨拶を受けていてその列ができていた。


「私達が『聖女』様に同行するのは王都に滞在中の間だけでしょ?必要なのかしら?それよりも──」


 エアリスは、グラウニュート家の嫡男であるハクの為に他の若者達と挨拶して顔見知りになる方がよいのではないかと提案した。


「エアリスの言う事ももっともだけどね。ここは『聖女』様歓迎の式典だから、最低限の礼儀は行っておかないと」


 エアリスの効率を考えた意見も賛同できなくはないが、残念ながら『聖女』とはすでに顔見知りであるから、あちらに自分達の事を気づかれる前に挨拶くらいはしておいた方がいいだろう、というのがタウロの考えだった。


「……そうね。じゃあ、さっさと済ませて、ハク君の人脈作りに集中しましょう」


 エアリスは、そう言うと先頭を切って列に並ぶのであった。


 タウロ達が列に並んでほどなく、


「え?エアリス嬢も来てくれていたの!?」


 と、タウロ達一行に気づいた『聖女』が他の者の挨拶も無視して声を掛けてきた。


 こっちに来るように手招きする『聖女』に、列に並んでいたタウロ達は行くべきか迷った。


 公式上、会うのはこの日が初めてなのである。


 ルワン王国側の『聖女』周辺の人間達は、


「誰だあれは?知っている者はいるか?」


「いえ、初めてみる顔ですが……」


「ならば、『聖女』様が知っているわけがあるまい。『聖女』様と面会した者は全てチェックしているのだからな」


 と、ざわつき始めた。


 もちろん、サート王国側の今回取り巻きに選ばれた若者達もこれには同じくざわつき始める。


「あれは、ヴァンダイン侯爵家のご令嬢だろう?すでに『聖女』様とは親しい間柄なのか?」


「おかしいな……。私はサート王国側の関係者として父と共にこちら側の面会した人間のチェックは全て行っていたが、その中にヴァンダイン侯爵のご令嬢はいなかったと思うのだが……」


「ヴァンダイン侯爵は中立派最大勢力派閥の首領。もしかしたら密かに面会していたのかもしれないぞ?」


 などとヴァンダイン侯爵家の力が良い方向か悪い方向かわからない評価をされるのであった。


 タウロ達はその中を、列から抜け出て『聖女』のところまで行く事になった。


 そこへ鋭い視線を感じる。


 その視線はスグローのものだった。


 どうやら次の挨拶の番がスグロー一派のようだったが、『聖女』の鶴の一声で順番を飛ばされたのだ。


 仮にも国内最大の貴族派閥の首領ハラグーラ侯爵の孫なのだから、これは、屈辱的だったろう。


「エアリス嬢も私の為に来てくれたのね!」


『聖女』が名を口にすると、ルワン王国側の関係者は手元のリストですぐに調べ始めた。


 そして、ヴァンダイン侯爵の令嬢だとわかり、少なくとも何か卑しい家柄の身ではないようだと、安心する。


 それに、フルーエ第五王子の推薦とある。


 王家の推薦というのも、ルワン王国側にとっては安心材料の一つであった。


 『聖女』は元々平民という卑しい身分であったから、人間関係にはルワン王国側はかなりピリピリしていたのだ。


 『聖女』ほどの有名人となると、知らない親戚や知人、自称友人が現れるものだから、その辺りを含めて『聖女』の人間関係は気にするところであった。


「『聖女』様、《《初めまして》》」


 エアリスは、タウロ達を代表して挨拶した。


「初めましてなんて止めてよ。あの時はお世話になったわ。ねぇ?ここに居るという事は、これから一緒できるんでしょ?」


 『聖女』マチルダは嬉しそうに言う。


「そうなるとよろしいですね」


 エアリスは正直に王都滞在中だけと言うと、巻き込まれると思ったのか返答をふわっとさせた。


「──マーサ。エアリス嬢達とは、一緒にサート王国内を回れるのよね?」


 マチルダに付いているルワン王国側の関係者、貴族の令嬢であり、マチルダの世話役の一人に選ばれているマーサに確認を取った。


「──ヴァンダイン侯爵令嬢、グラウニュート伯爵の令息お二人、半獣半人のお嬢様四人は王家の推薦ですが、王都滞在中のみの同行予定でだそうです」


 世話係のマーサは後ろから情報をくれる男性に耳を傾けつつ、その情報をマチルダに伝えた。


「えー!?王都滞在中だけなの?エアリス嬢達も一緒じゃないと王国内は回らないって伝えてよ」


「聖女様それは!」


 ルワン王国側の関係者は、慌て始めた。


 早速、サート王国側の関係者に確認を取り始める。


 エアリスはこういう事を恐れていたからこそ、ふわっと答えていたのだが、そのまま恐れていた事態になってしまった。


 ここには王族も式典に参加している。


 フルーエ王子の姿こそないが、この流れだと……。


「ヴァンダイン侯爵令嬢、少しお時間をよろしいか」


 声を掛けてきたのは、なんとサート王国の王太子であった。


 この式典の責任者として参加していたのだ。


「初めまして王太子殿下、どのようなご用件でしょうか?」


 さすがにエアリスもこれには緊張した。


 タウロも同様である。


 ハクとシオンは何やら大事になっているらしい事くらいしか理解できていなかったが、エアリスの王太子という言葉に凍り付いた。


「硬くならないでくれ。聖女マチルダ殿は、あなたをいたく気に入っているご様子。この国の為にも王都滞在中だけでなく、国内を回る間、ご同行願えないだろうか?」


 王太子は一見すると丁寧な言葉遣いであるが、その圧は計り知れない。


 王太子にこの様に言われてエアリスはともかく、タウロ達は断る事ができないだろう。


「……こちらにも色々と都合がありますので、難しいお願いですが……、わかりました。私は承諾しますが、友人達は忙しい身、王都滞在中のみでご了承下さい」


 エアリスは自分の身を盾にタウロ達の同行までは断ろうとした。


 だがタウロは、ここまでエアリスに言わせて、承諾しないわけにはいかなかった。


「……エアリス嬢お待ちを。──弟のハクは手続きなどで王都を離れられない身なのでお断りするしかございませんが、僕やシオンはエアリス嬢共々ご同行しましょう」


 タウロは王太子に怯むことなく答えた。


「そうか。それを聞いて安心した。──なるほど、フルーエの推薦する者か。──マチルダ殿、これでよろしいかな?」


 王太子はエアリスとタウロの同行に満足すると、『聖女』に確認した。


「ええ、満足よ!」


 マチルダはエアリスの同行を無邪気に喜ぶのであった。

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