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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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425話 感謝の朝

 夜明けが近づいて来た。


 夜空に光が少しずつ差し始めている。


「……父上、……先生?もう起きて……いるのですか?」


 ハクが、リビングで二人が騒がしいので少し早いが目を覚ましてきた。


「──あ、ハク、すまない起こしてしまったか!」


 秘薬を飲んだ直後のクロスは、慌てて立ち上がった。


 そして──


「……!まさか……!?」


 クロスは自分がスムーズに立ち上がった事に気づいた。


「父上……?」


 ハクは、父クロスが驚いた表情をしているのを訝しんだ。


 クロスは右腕を確認する様に何度も手を握ったり開いたりしてその動作を確認した。


「う、動く……!──ハク!」


 クロスは、訝しんでいたハクの腕を掴むと引き寄せ、抱きしめた。


「ど、どうしたのですか、父上……!?」


 ハクは状況が理解できず、今度は困惑した。


「お父さんの怪我が治ったんだよ。喜んであげてね」


 タウロは、涙を流し嗚咽するクロスの代わりにハクに代弁して上げた。


「え?ち、父上、本当ですか!?それじゃあ……」


 ハクも泣いて喜ぶ父クロスの姿に感極まったのか涙を流して喜ぶと、父を抱き返すのであった。


 クロスは治った喜びというより、偽りだが大切な息子であるハクの傍に居られる事への安堵からの涙であったが、嬉しい事に変わりはない。


 二人の親子の感動の時間を邪魔してはいけないと、タウロはクロス宅を後にして離れにあるラグーネ達の宿泊する家へと戻るのであった。




「おう、リーダー、早いな?どうしたんだい、こんな朝早くに」


 アンクが家の傍の井戸から水を汲んで顔を洗っているところにタウロが戻って来たので、声を掛けた。


「そうだね……、人助けが出来た感じかな?」


「なんだいそりゃ?──って、もしかして今から寝るつもりじゃないだろうな?」


 アンクが、タウロが眠そうにしている事に気づいた。


「うん、ちょっと魔力を沢山消費したし、あんまり寝ていないから一時間だけ寝させて」


 タウロは、マジック収納から魔力回復ポーションを取り出して飲みながら、家に入っていく。


「また、何かやったのか?──やれやれ、単独行動での無茶だけは勘弁してくれよ?」


 アンクは笑うとタウロの家に入っていく後姿を見送るのであった。



 タウロが一時間だけのつもりが三時間ほど寝てしまい、ようやくシオンに起こされると、村はクロスの怪我が回復している事にちょっとした騒ぎになっていた。


 村長は何度も、クロスに本当に治ったのか確認している。


 昨晩、その怪我を理由によくわからない契約を解除し、解雇を言い渡したばかりだったのだ、当然だろう。


 だが、長年ハクの親としてやってきた男の復活は村長としてもありがたいのは確かである。


 信用出来る男なのは、この十三年間で確認しているのだ。


 タウロ達一行はその騒ぎの輪に入っていった。


「何なのだこの騒ぎは?」


 ラグーネが、首を傾げて騒ぎの輪にいる村長とクロスに気づくと、聞いてみた。


「これはみなさん、いや、クロスが怪我は治ったと言い張るもので……」


 困惑している村長がラグーネに答えた。


「あの大怪我がですか?」


 シオンは驚いて聞き返した。


 シオンの浅い経験ながら、クロスの怪我の具合を見立てた感想では、重傷な上に日にちが経っているので治療にも限界があると思っていたのだ。


 そして、次の瞬間には、ラグーネ、アンク、シオンは「もしかして?」とタウロの方を見つめる。


 一同の視線を感じたタウロは目を逸らす。


「タウロ、前回、あの後、みんなからこっぴどく怒られただろう?」


 と、ラグーネ。


「タウロ様、何をやっているのですか!ボクがいないところで危険な事をしないで下さい!」


 とシオン。


「おいおい、リーダー……。次はないぞって言ったよな?」


 とアンク。


 三人が思いの外、怒っている事が伝わってきて、タウロは冷や汗が全身から噴き出すのであった。



 一時間後──


 クロスの怪我が治っている事が村民達の前で証明された。


 村長は最初、疑って中々信じなかったが、本当に治ったようだとわかると、嬉しい誤算とばかり喜んだ。


 そんな中、タウロは地べたに正座させられていた。


 村人達はその理由がわからず、ラグーネ達に聞いてきたが、内輪の問題だからと答えず、ただひたすら説教の時間であった。


「……みんな、もう、勘弁してよ……」


 タウロは、ここでは詳しい事も言えないので、ひたすら説教されるしかなかったのだが、ラグーネ達もその辺りはわかっていて核心部分には触れず説教していた。


「足の感覚がない……」


 タウロは、痺れた足に苦しみながら、泣き言を言い出した。


「良い事したのに……」


「そういう事じゃないだろ、リーダー」


 アンクが今度は注意する。


 そこへ渦中の中心人物であるクロスがタウロの傍に来た。


「タウロ殿、あの事については詳しい事は誰にもまだ言っておりません。あなたには感謝しかありませんから……、本当にありがとうございます」


 クロスは、真剣な面持ちでタウロの耳元で感謝を述べた。


「……それなら良かったです。僕も力になれて良かった。もちろん、お礼はして貰いますよ?」


 タウロは笑ってクロスの感謝を受け入れると、冗談っぽく答えるのであった。

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イラストレーターは「えんとつも街のプペル」でメインイラストレーターを務めていた六七質むなしち先生です!


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