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42話 帰郷

サイーシの街に帰る日が訪れた。


リバーシの指南役契約終了から数日後である。

というのも、王都にもリバーシの製造拠点を置けないかとガーフィッシュから相談されていたのだ。

なので、その打ち合わせに数日を要した。


この打ち合わせには、タウロも相当悩んだ。

サイーシの街に製造拠点を置く事でサイーシに職が生まれた、それを脅かしたくなかった。


そこで、妥協案として、王都にはお金持ち向けの豪華盤の製造の一部と、王都で一流の職人に、限定盤を真似して作って貰う事にした。

限定盤の需要は特に王都にある。

タウロ1人で作るには限界があるし、その辺りは任せてもいいだろう。

それとは別に、表向き上、決定権は発明者モーブと後ろ盾の支部長レオにある、なのでタウロがこの二人と後日話し合い、説得するという”てい”で話をまとめた。


話し合いで帰るのが数日遅れた事のお詫びにと、帰りもガーフィッシュ商会が馬車を出してくれる事になり、それにお世話になる事にした。


「それにしても、本当にいいんですね、タウロ殿。」


さっきからガーフィッシュはこの確認をしてきた。


実は、マジック収納のリュックを安くガーフィッシュに譲ったのだ。

最初、ミーナに上げようとしたがさすがにこれは固辞された。

だが、自分はマジック収納の能力を得てしまい必要性が無くなってしまった。

そこで、王都滞在や、リバーシの販売などでお世話になっているガーフィッシュ商会に売る事にしたのだ。


ガーフィッシュは以前からこのリュック、マジック収納(大)を欲しがっていたのだが、値段が高すぎて悩んでいた。

そこに、タウロがなんと、6割引きで持ち掛けてきた。

商売人からしたら、新品を原価割れで売るなど考えられない。

ましてや、有名魔道具師の一点ものである、もし、転売でもしようものなら儲けしか出ない。

もちろん転売はしないが、変な話、3割引きにしないかと、ガーフィッシュ側が言い出す始末だった。


「だから、いいですって。モーブ共々、今後も良いお付き合いを、よろしくお願いします。」


「…わかりました。今後もリバーシの販売は我々、ガーフィッシュ商会にお任せ下さい!」


ガーフィッシュは力強く答えた。


「それではお世話になりました。」


挨拶すると馬車が出発するのであった。


帰りは馬車一台で、御者と商会の商人、タウロとミーナ、王都のD+ランク冒険者チーム3人一組の旅だ。

荷台には商品が1つも無いのでみんな馬車に乗車していた。

名目上はタウロとミーナをサイーシへ送り届ける事だが、荷物は全てタウロのマジック収納に収まってるので単にコストカットが出来た結果だった。



帰りの道中の休憩所で、冒険者を名乗ると、駐屯兵から不穏な話を耳にした。

最近、街道で盗賊の一団が活発に動いてるらしい。

一度は駐屯する兵とも一戦交えたらしいが、上手くあしらわれ、逃げられたらしい。


王都に行く時に出た盗賊団だろうか?


今は帰りの道中、気をつけるしかないと思うタウロだった。


兵士の話では、冒険者ギルドと連携する事がお偉いさんの間で話し合われたとかで、近く、偵察や討伐依頼をするかもしれないそうだ。

サイーシ支部でもクエストが募集されるかもしれない。

クエストが出たら自分はどうしようか?と、考えたが出るまでわからないのでタウロは忘れる事にした。


その話以外ではタウロ達一行は、何も起こる事なく、行程の7日を無事に終えるのだった。



懐かしいサイーシの街は、一か月前より活気に溢れてる気もしたが、王都を見た後のタウロには穏やかな街に映った。

馬車は商会の前に到着、タウロは室内で荷物をマジック収納から出した後、報告の為ミーナと一緒にギルドに向かおうとしたが、パウロに呼び止められ、商会前で本部の商人とパウロの3人でタウロ製のリバーシ限定盤について話し込む事になった。

なのでミーナだけ先にギルドに向かったのであった。


「タウロ君、お帰り!」


という、懐かしい、声が背後からした。


振り返るとそこには見慣れた茶色の長い髪、黒い瞳にギルド職員の制服を着た、ネイが立っていた。


「あ、ネイさん、お久しぶりです!」


「どうだったの王都は?タウロ君は大丈夫だった?貴族様にうまく教えれた?あら、その革鎧、買ったの?いいじゃない。似合ってるわよ。それで…」


「ネイさん落ち着いて下さい。ギルドに戻ったら話しますから。」


「そうね。元気そうでよかったわ。じゃあ、後でね。」


そういうと、ネイはお昼ご飯を食べに安らぎ亭に入っていくのであった。


その見慣れた後ろ姿をみて、帰ってきたんだなと、実感するタウロであった。

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