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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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409話 伯爵夫人

 タウロの実家にもなる城館内の応接室で一行が待たされていると、絨毯ではかき消せないヒールのカツカツという音が近づいてきて扉の前で止まった。


「──この部屋ね?」


 扉の外で何やら女性が確認する声が聞こえてくる。


 そして、扉が開いた。


「タウロさんいらっしゃい!──いえ、お帰りなさいね!この日をどんなに心待ちにした事か!」


 現れた女性は金色の綺麗な長髪に青い瞳、鼻筋の通ったとても優雅な女性、それはグラウニュート伯爵夫人アイーダ、タウロの新しい母親であった。


「お久し振りです、母上。訪れるのが遅くなってすみません」


 タウロは深々と頭を下げると謝罪した。


「もう、顔を上げて頂戴!タウロさんが帰って来るのを私はとても楽しみにしていたのよ?──そうそう、あなたの部屋も用意させているから、そちらに案内させれば良かったのだけど、今はまだ、みんなをびっくりさせたいからと、あなたの事、お披露目会までは紹介するのを控えておこうという事になってるの。だから一度、こちらに案内したみたい。一か月後にはそのお披露目会は出来る予定だけど大丈夫かしら?」


 アイーダ伯爵夫人は、嬉しさのあまりそこまで一気に話すと笑顔でタウロの返答を待った。


「もちろんです、母上。僕としても初めて訪れる土地なのでまだ、実家であるという気持ちにはなりきれていませんから」


 タウロは戸惑っている事を正直にアイーダ伯爵夫人に伝えた。


「そうよね……。それに王都の屋敷と違ってこちらの城館は多少大きいし、戸惑うのは当然だわ……。──それでは今から私がおうちの中を案内しようかしら?──いえ、長旅で疲れているでしょうし、今日はタウロさんの自室に案内するだけの方がいいわね。食事の時にでもまた、冒険のお話を聞かせてくれるかしら?」


 アイーダ伯爵夫人は、そこまで言うと、タウロの手を取る。


「タウロさん。改めて、私達の子供になってくれてありがとう。それに、この地で迎える事が出来て本当に嬉しいわ。そうだ、タウロさんのお仲間達も息子を助けてくれて感謝します。母親として息子の事をこれからもよろしくお願いしますね」


 そうお礼を言うとアイーダ伯爵夫人は、ラグーネ達に頭を下げた。


「グラウニュート伯爵夫人、私達もタウロには世話になっている。礼には及ばないのだ」


 ラグーネは、そう答えて夫人に顔を上げて貰った。


「そうです。ボクもタウロ様には助けて頂いた恩義があります。感謝しないといけないのはこちらの方です!」


 シオンもそう答えると、頭を下げる。


「だな。リーダーは無茶もするがそれ以上に俺達のリーダーとしてよくやってくれているよ」


 アンクがグラウニュート伯爵同様、知った仲であるアイーダ伯爵夫人に答えた。


「アンクは昔からこんな態度だけど……、あなたがシオンちゃんね?話には聞いていたけど、礼儀正しい子ね。どこかで作法を習っていたのかしら?」


 アイーダ伯爵夫人は、タウロと年齢が近いシオンの受け答えに感心した。


「ボクは母から……。──父は立派な人だったから、その娘に相応しい振る舞いが出来る人になりなさいと躾けられただけです……」


 シオンは褒められて恥ずかしかったのか、ちょっと下を向いて顔をフードの奥に隠した。


「そうなのね。あなたのご両親はきっと立派な人だったのね……。タウロさんのお仲間は、グラウニュート家の大切な客人でもあるから、ここを自分の家だと思って下さいね?あ、でも、アンクは、駄目よ?あなた、すぐメイドに手を出そうとするから」


 アイーダ伯爵夫人は、ラグーネ達を歓迎する一方、アンクをダシにして一同の笑いを誘う。


「それいつの話だよ!」


 アンクは昔の話をネタにされたのですぐにアイーダ伯爵夫人に反応するのであった。


 その後も、アイーダ伯爵夫人とタウロ達は楽しいひと時を応接室で過ごした。


「母上、父上はお忙しいのでしょうか?ここまでの領内巡検使のご報告などをしたいと思っていたのですが……」


 タウロは、ふと、話を変えてみた。


「あの人、今、忙しくしているの。さっき入れ違いに視察に出かけたから戻ってくるのは夕方かもしれないわ」


 アイーダ伯爵夫人は、息子にごめんなさいね、とお詫びする。


「いえ、それなら仕方がないです」


 タウロも予約無しにすぐに会えるとは思っていなかったので、当然と言えば当然であった。


 こうして、応接室での楽しいやり取りの後、タウロ一行は、タウロの新しい自室に案内される事になった。


「タウロさんの冒険話から、室内のデザインはなるべく質素にしたのだけれど、気に入ってくれるかしら……?」


 アイーダ伯爵夫人は多少心配しながらも、タウロの部屋の扉を開いた。


 その部屋は、確かに王都のグラウニュート伯爵家の屋敷の部屋と比べれば、絵画や高価な壺の置物などは控えられていたが、圧倒的に広かった。


 そして、その絵画や壺の置物の代わりに、各地の珍しい異国情緒たっぷりな置物、剣や盾など武具類も飾ってあり、アイーダ伯爵夫人が普段からタウロから聞いていた冒険者像を基に想像したと思われる室内になっていた。


「母上……、これは?」


「タウロさんの話を基にした冒険者がコンセプトの部屋だけど駄目かしら?」


 アイーダ伯爵夫人は笑顔で聞き返す。


「ははは……。一部、片付けて貰っても良いですか?」


 タウロは、苦笑すると、もう少し殺風景な部屋にする事をお願いするのであった。


 部屋の物を運び出して貰っている間に、その部屋の周囲にはラグーネ達の部屋も用意して貰った。


 そして、


「夕方になったらみなさんでお食事にしましょうね。その頃には、あの人も帰って来ていると思うわ」


 と、アイーダ伯爵夫人はタウロ達に答えると、当人も忙しいのだろう、使用人の一人にこの後の予定を説明され、急いでその場を後にするのであった。


「……ここが新しい実家か……。まだ、実感がわかないや」


 タウロはそう漏らしながら、新しい自室のベッドに腰を下ろして一息つくのであった。

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