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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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403話 街の人気者

 タウロ達『黒金の翼』は、村長一行を依頼通り村まで送り届けてから、カクザートの街まで戻る事になった。


「予定より日程が大幅に伸びたから、カクザートの街も久しぶりだな」


 アンクが、帰途でタウロにそう話を振る。


「本当だね。ただの護衛任務のはずが、盗賊討伐とか、決闘騒ぎとか、ドラ息子の再教育やったりとか、色々あったから……」


 タウロは、この約二週間を考えると苦笑した。


「まずは、冒険者ギルドで報告だな。それから食事にしよう。いつもの宿で蟹が食べたい!」


 ラグーネは楽しみそうに提案した。


「蟹ですか!?ボクもまた、あれ、食べたいです」


 シオンもラグーネの意見に賛同した。


「じゃあ、そうしようか。──二週間ぶりだけど、以前よりも更に活気づいていないこの街?」


 タウロが、シオンに聞いた。


「……確かにそうですね。タウロ様の言う通り、活気に溢れている気がします。この感じ……、火焔蟹騒動以前の雰囲気があります!」


 シオンは、元々カクザートの街の住人だからその辺りは詳しい。


「そっか。以前位の活気が戻ったのなら良かった……。──じゃあ、ギルドに報告に行こうか」


 タウロは、ほっとした表情を浮かべると冒険者ギルドに向かうのであった。




「『黒金の翼』のみんな、お帰りなさい。あっちから簡単な連絡は来てたけど、色々大変だったみたいね」


 受付嬢のアーマインが、タウロ達にすぐ気づき、出迎えてくれた。


「それも含めてクエスト完了の報告書出します」


 タウロは事前にまとめておいた報告書を提出する。


「──はい、確認しました。──そうだ、タウロ君。今、あなた達、この街で大変な注目を浴びているのよ」


「え?」


 何の事かわからず聞き返した。


 よく周囲を見ると、新米と思われる冒険者から、以前に火焔蟹狩りのコツを教えた冒険者達もこちらを見ている。


 そう言えば、ギルド内の活気もかなり良くなっている気がする。


「ほら、タウロ君達は元々、火焔蟹討伐で活躍してたじゃない?それに加えてここのところ、カニ料理が爆発的に人気が出てね。今や大ブームになっているよ。それを考えたのもタウロ君。以前の街長の悪事を暴いて領主様に突き出したのもタウロ君達。この冒険者ギルドの腐敗も一緒に解決したのもタウロ君達。そして、今やギルドのクエストの花形になっているのが、『火焔蟹討伐』で、その狩り方をEランク帯冒険者に伝授したのもタウロ君達じゃない?それが、カニ料理のブームと共に広まったのよ!」


 受付嬢のアーマインが、原因を説明してくれた。


 蟹の力恐るべし!


 タウロは内心でそう思うのであった。


「……あはは。それは困りましたね……」


 タウロが言うと、アーマインが同調して答える。


「そうなのよ。タウロ君のお陰でカニ料理が注目されて、価格が上がり、ギルドの火焔蟹討伐クエストも報酬が上がったのだけど、その注目度から冒険者じゃない住民がお金の匂いを嗅ぎつけて火焔蟹を独自に狩ろうと夜の塩湖に出かけて行き、返り討ちにあって、死亡する事件も多発しているの」


 タウロが意図するところと違う理由で返答が帰って来た。


「それは、自業自得だな。そもそも、Dランク帯の魔物に素人が手を出すのが間違っているぜ」


 アンクが、話を聞いて呆れて見せた。


「やれやれ……。馬鹿に付ける薬はないな」


 ラグーネもアンク同様に呆れて見せた。


「そんな感じだから、夜間の塩湖周辺の監視クエストなんかも冒険者ギルドが独自に出しているんだけどね」


「街からは出ていないんですか?」


「まだ、街長ではなく領主様が派遣した代官がこの街を統治しているんだけど、他の事でも忙しいらしくて、こちらまで手が回らないみたいね」


「なるほど」


 どうやら、街に活気が戻った事で、流通や人の動きが大きくなった分、代官の仕事も増えている様だ。


 今の代官にはその量が対応できないのだろう。確かにこれは、大変そうだ。


「そうだ。タウロ君達から狩りを学んだEランク帯冒険者も、今や注目の的になっていてね。報酬額も高いから一獲千金のチャンスと他の冒険者も頑張っているわ。火焔蟹ハンターを自称する冒険者もいるみたい」


 何やら話が大きくなっているが、タウロは触れない事にした。


 ただ、そんなに注目されているとなると、塩湖の火焔蟹は絶滅しないのだろうか?


 そう疑問に思うタウロであったが、もしかしたら、以前の様に、餌を与えて誰か増殖させている可能性もある。


 今や、火焔蟹は街の厄介者から、流行の食べ物になっているのだから、街の資源である火焔蟹が絶滅したらと想像して危惧を抱く者が現れてもおかしくないのだ。


 これは、養殖場を早く進めて貰った方が良い様だ。


 もしかしたら、それらも含めて、この街の代官は忙しいのかもしれない。


 なんだか忙しくしてしまいごめんなさい。


 タウロは何となく、代官がいるであろう、街長邸の方向に手を合わせるのであった。


 受付嬢のアーマインとのやり取りが終わると、地元の冒険者達から挨拶された。


 みんな、火焔蟹討伐の指導をした冒険者達だ。


 中には、今度、Dランク帯に昇格を決めたと、感謝された。


 火焔蟹を狩り続けていたから、昇格査定に高評価が付いたらしい。


 だから、狩り方を教えたタウロ達のお陰と言うわけだ。


 冒険者ギルド内だけでなく、街でも大人気になってきたタウロ達は、顔こそあまりバレていないから話しかけられないが、名前だけは有名になっている様だった。


 いつも利用している宿屋に部屋が空いているか行ってみたところ、宿屋の主人から大歓迎された。


 そして、いつもの部屋は満室だからと、一番良い部屋に通された。


 なにしろこの宿屋は、タウロがカニ料理を教えてからずっと売り上げが右肩上がりで、宿泊も満員御礼と大人気になっていた。


 だからこそ、タウロの存在は、主人にしてみたら丁重に扱うのが当然だったのである。


「……ちょっと、こういう扱いされると困るかな……」


 部屋のグレードが上がった事に喜ぶみんなに対し、タウロはそうぼやくのであった。

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