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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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386話 優しく教える

 タウロは気が抜けた様にリラックスした状態で棒を構えた。


 若者はそんな余裕のある構えに怒りを感じたのか力任せにタウロの頭上に棒を振り下ろした。


 するとその棒は、タウロが構えた棒によって軽く受け流され地面を強打した。


 その振動が手に伝わり、若者は苦痛に顔を歪める。


「くそっ!」


 若者は棒を握り直すと、今度は突きに変更した。


 一度、体にフェイントの為に軽く突くと、次の瞬間タウロの顔面目掛けて全力で繰り出す。


 タウロは、若者の踏み込みと同じ距離を後方に下がったので、棒はギリギリ目の前で止まって届かない。


「俺が距離を見誤らなければ!」


 若者はどうやら自分のミスだと思ったようで、さらに踏み込むとタウロの鳩尾を狙って突いて来た。


 それに対してタウロは体を捻りながら踏み込み、半身になると棒先で若者の棒を逸らし、次の瞬間には空中に棒を巻き上げていた。


 棒は回転しながらタウロの傍に落ちると、それをタウロが掴むのであった。


「これでわかって貰えましたか?」


 タウロは、怪我をさせない様にかなり手加減して見せたのだが、若者にとっては一瞬の事だったので、キツネに摘ままれた様にぽかんとしていたが、正気に戻ると、「まだだ!」と吐き捨てる様に言うと、タウロに掴みかかった。


 若者がタウロの襟の部分を掴んで投げようとする。


 が、次の瞬間、若者は地面にひっくり返っていた。


 タウロが、踏み込んで来た若者の足を空中で狩って投げてしまったのだ。


「ここが戦場ならあなたは二度死にましたよ?」


 タウロは、若者の手を掴んで立たせると、そう告げて勝負がついている事を念押しした。


「……参った」


 若者は、再びキツネに摘ままれた様な状態であったが、目の前の少年が只者ではないのは、ようやく理解できたので負けを認めるのであった。


 そこへ、


「何をやっている!」


 と、争いを咎めた男性が二人を囲む人混みを分けて入って来た。


「そ、村長!」


 若者は、バツが悪そうに首を竦めた。


「コーサ!これは何の騒ぎだ!──うん?なんだ、この子供は?」


 村長は、若者、コーサが騒ぎの中心である事を察して詰問したが、その傍に見慣れぬ子供がいるので毒気を抜かれた。


「初めまして。この度、村長さんの依頼に応えてカクザートの街より参りました、チーム『黒金の翼』のリーダー、タウロと申します」


 タウロは、丁寧に挨拶するとお辞儀をした。


「うん?──ああ!君達がカクザートの街で一番の冒険者チームか!こんなに若いとは驚いた……。──私がこの染物の村ゼンユの村長を務めるアリマーだ。これは一体どういう事ですかな?」


 村長は、騒いでいる状況の説明を問い質してきた。


「彼が冒険者の技術を教えて欲しいというので、軽く指導していたところです」


 タウロは、当たり障りの無い様に答えた。


 やってきていきなりトラブルを起こす様な冒険者は歓迎されないだろうと思ったのだ。


「コーサ、貴様、冒険者さんに絡んだのではないだろうな!?──すみません。うちの若い連中は血の気が多くていけません。だからうちの娘も──おっと、詳しい話はうちでしましょう。──みんな、仕事に戻ってくれ!ほら、散った散った!」


 村長アリマーは集まって来ていた村人達を解散させるとタウロ達を村長宅に招くのであった。



「──確かに、うちが出した依頼書の写しですな。そしてD+ランク……。聞いたところでは、カクザートの街にはC+ランクの冒険者がいると聞いていたのですが?」


 村長は、タウロ達を見て確認するとひとつの疑問をぶつけてきた。


「そのチームは確かに最近までカクザート支部に所属していましたが、とある事情で引退しました。そこで次点の僕達が来る事になりました」


「……そうですか。まあ、うちのコーサを怪我もさせずに指導してくれた事を想像すると腕が立つのは確かな様だ。今回の護衛には腕の立つ旅人も雇っています。そちらとも自由に打ち合せして頂けると助かります」


 村長は暗に腕比べするなら勝手にどうぞ、と言っているのだ。


 冒険者の流儀なのだろうと勝手に想像した様だ。


「護衛については、もちろん話し合いによる打ち合わせはさせて貰いますが……、ワーサンの街までの二日間の護衛でよろしいですか?」


 タウロは日程の確認をした。


「いや、出来れば結婚式が終わるまでは護衛をして貰いたい。なので二日後出発で二日の道程、それから結婚式までが二日、そして結婚式からその翌日までやってから我々が帰るまでを護衛して貰えると助かるのですが……」


 意外と日数的に長いなぁ。普通なら行きと帰りだけで良い様なものだけど、何を警戒しているのかな?


 と思うタウロであったが、依頼主のお願いである。


 報酬も良いが、なぜそこまで気にかけるのか?


「みんなはどう?僕的には引き受けてもいいかなと思うのだけど?」


 好奇心が勝ったタウロは、前向きな姿勢でみんなに確認した。


「リーダーが大丈夫だと判断するならいいぜ?」


「私も問題無い」


「……ボクもタウロ様が引き受けるなら大丈夫です」


 みんなも賛同したので、タウロは村長の依頼を丸々引き受ける事にするのであった。


「それは良かった!それではさらに詳しく護衛計画を練るとしましょうか。何しろ相手は街長の長男ですからな。こちらも嫁入り道具から祝いの品までお金がかかっているのですよ。それに……、娘がちょっと乗り気ではないもので、途中で逃げない様に見張って貰いたいのです」


 村長は、ノリノリで話を進めるのであったが、不意に結婚式の最後まで護衛する理由がわかるのであった。


 そういう事か……!


 タウロは承諾した手前頷いていたが、嫌がる娘を嫁がせるのには抵抗があるのであった。

この度、「自力で異世界へ!」が書籍化されて8月10日に発売されました。


お近くの書店で見かける事がありましたら、ご購入の検討をして頂けら幸いです。


ネットでも購入できますよ~!

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