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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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313話 それから色々な話

 王都にある宰相派閥の重鎮であるダレーダー伯爵邸──


 ダレーダー伯爵とタウロは窓もない密室で、暗殺ギルドの情報のやり取りが続いていた。


「……本当に特定したのですか?」


 ダレーダー伯爵は信じられないという表情で再度タウロに確認する。


「その様です。ただし、大きな拠点ではない様で、民家であったり、倉庫であったり、商会建物であったりなので、知人達も壊滅の為に本格的に動く、というところまで至ってはいません」


「……ちなみに、どうやってその数か所を見つけられたのでしょうか?」


 ダレーダー伯爵が気になるのも仕方がないだろう。


 自分達はこの数年、あの手この手でアジトの場所を掴もうとやってきたが、見つけてもすぐに気づかれて突入前に逃げられるのが関の山だったのだ。


 それを短期間で数か所見つけたのだから、驚異的な情報収集能力である。


「僕も詳しく聞いていないのですが、珍しい能力を持つ怪しい者を市中で見つけてマークし、泳がせておいたところ、数か所を定期的に回っていたので調べたところ暗殺ギルドのアジトの一部だったようです」


「人種のるつぼでもあるこの広い王都で沢山の民衆の中から珍しい能力を持つ人物を見つける事の方がよっぽど大変ですよ?」


 ダレーダー伯爵は、タウロの「知人」とやらが、とんでもない規格外の人物である事を理解するのであった。


「僕もそう思います。でも、当人達は偶然だったみたいです。たまたま見つけてマークしていたら、暗殺ギルド所属にもなっていない下っ端だったようで、気づくのが遅れたと言っていました」


「……所属がわかるほどの鑑定眼の持ち主ですか……!我々の派閥の長、宰相閣下並みとは恐れ入りました」


 ダレーダー伯爵はタウロの知人は想像を超える大人物である事をそこから察したのであった。


 そう言えば、竜人族が珍しがるほどの特殊能力を持つ者が暗殺ギルド所属にもならない下っ端とはどういうことだろう……?


 タウロは、何か大事な事を見落としている気分になり、首を傾げるのであったが、今は、それどころではない。


「その数か所、──現在、4か所の場所をお伝えしておきます」


タウロはそう言うと、机に広げられた王都の地図の上に小石を置いて行く。


「……王都全体に広く散らばる感じで存在しますな……」


ダレーダー伯爵はそれを確認すると唸った。


「はい。ですが、本拠点というより、隠れ家の一部という感じですので、今すぐ突入するより泳がせておいて彼ら1人1人を特定していく方が良いと思います。知人達もそう言ってます」


タウロが、そう提案した。


「……わかりました。こちらも腕利きの者を集めないといけませんし、今は放置ですな」


ダレーダー伯爵もタウロの提案に納得してくれた。


「──ところで、タウロ殿。最近どうなされていますか?グラウニュート伯爵家の養子に入られてからほとんどお話を聞きませんが」


「僕ですか?僕は、未だに知人達がいるところで冒険者を続けさせて貰っています」


「ヴァンダイン侯爵令嬢も一緒ですか?」


「ええ、エアリス嬢も一緒ですが?」


「……そうですか。いや、急に失礼しました。実はうちにはタウロ殿と年が近い娘が居りまして、タウロ殿の婚約者にでもと思いましたが、さすがにヴァンダイン侯爵令嬢と良い仲の様ですから勧められませんな!わはは!」


ダレーダー伯爵は残念という顔をすると一笑に付した。


「……あはは」


タウロも一緒になって取り敢えず笑うのであったが、貴族になると、こういう話も増えるのだろうかと内心苦笑いするのであった。




改めて、サイーシ子爵の獄中「自殺」から、3か月が経過しており、その間にタウロ達『黒金の翼』は、活動拠点をタウロの事情で王都から竜人族の村に移してあった。


事情とはもちろん、竜人族のダンジョン攻略のお手伝いの事である。


王都にはラグーネの『次元回廊』と、タウロの『空間転移』の組み合わせで移動できるので、エアリスはヴァンダイン侯爵家にはよく戻っていたから、ヴァンダイン侯爵自身からは今の状況は歓迎されていた。



この3か月の間に、周囲の状況は色々と変化している。


まず、ヴァンダイン侯爵が元メイドのメイのつわりが収まった事で妊娠を公表、妻に迎える事を発表した。


エアリスもこれには賛成だったので幸せな出来事だ。


タウロもエアリスと王都に訪れては、グラウニュート伯爵夫妻と親交を深めており、親子としての違和感も解消しつつある。


グラウニュート伯爵夫妻は、週に一度のタウロとの食事を心待ちにしていて、タウロの冒険譚を聞いては喜んでいた。


とても人の良い夫妻であったから、食事を共にする事で伯爵領にも興味を持ち、タウロも竜人族のダンジョン攻略が一段落ついたら、訪れる約束もしていた。


そして、冒険者ギルド竜人族の村支部には、新たな職員が増えていた。


それは、支部長サラマンの娘サラーンである。


彼女は仲間を失ったショックで一時は引き籠っていたが、父の誘いで冒険者ギルドで働く事にした。


職員兼、ソロ冒険者という立場で所属するそうだ。


あとは、『カレー屋』竜人族の村店もオープンしたが、こちらも連日満員御礼の賑わいを見せている。


カレーのルーも商品化が決定。


最初はダンジョン攻略の一助的な存在であったが、各家庭でも気軽に調理、食べられるとあって、本格的に販売する事にしたのだ。


今は、竜人族の村内での販売になっているが、すでにガーフィッシュ商会に商品を持ち込み、王都での販売も計画されている。


そんな良い事が続いていたある日、トドメとばかりに『黒金の翼』は、冒険者ギルドにおいて、支部長サラマンより、タウロ以外のチーム全員のD-ランクからDランクへの昇格が伝えられるのであった。

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