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31話 王都到着

サイーシの街を出発して7日目、昼過ぎのこと、先頭を進むパウロの乗る馬車が二番目を進むタウロの馬車に減速して近づいてきた。


「タウロ君、王都が見えてきましたよ。」


タウロは日差しを手で遮りながら進む街道の先を馬車の中から覗き見る。


目に映ったのは、遠くに、地平線の様に線が左右に伸びた、果てが無い様に見える城壁だった。


「サイーシの街と比べようがない程、長い城壁ですね。」


「もっと近づけば、高さも凄いのがわかりますよ。」


王都に近づいてくると、城壁の奥に小高い丘にそびえる王城も見えてきた。


「…これが王都かぁ。もう、緊張してきた。」


あそこに住む人々、その、支配階級の貴族にリバーシを教えなくてはいけないのだ、タウロは身がすくむ思いだった。




パウロの言う通り、王都の城門前まで来ると、その大きさ、高さに圧倒された。

見上げていると、首が痛くなるほどだ。


王都が初めてのDランク冒険者チーム「赤い閃光」のメンバーと、タウロは口をぽかんと開けたまま眺めていた為、ミーナに口を閉じる様に指摘された。

他のみんなに笑われる事になったが、初めての者には驚くなという方が無理な光景だった。


城門をくぐるのに許可はいらなかった。

日中はもちろんだが、主要な城門は夜も開いているらしい。

流石に王城の城門は夜は、閉ざされるらしいがそれでも驚きだ。


城門をくぐると、そこは別世界だった。

サイーシの街は2階建てがせいぜいで、それ以上の建物は領主邸や街の主要施設だけだったが、ここは3、4階建ての建築物が軒を連ねていた。

タウロはさすがに前世では都会に住んでいたので、驚くほどではないはずだが、サイーシの街と比べてしまうのか「…凄いなぁ。」と、言葉が漏れていた。

それにも増して、人種のるつぼである。

サイーシの街では獣人族の冒険者と鍛冶屋のドワーフのアンガスしか見た事が無かったが、ここには、見た事ない人種が沢山いる。

唯一すぐわかったのはエルフだった。


「このまま、商会本部に向かいますね!ついて来て下さい!」


パウロが馬車の御者台から身を乗り出して、後方のタウロ達に声をかける。


「わかりました!」


大声で答えると、それを後ろの馬車に身を乗り出し、また、大声で知らせた。

小さい声では王都の雑踏にかき消されそうだったのだ。

馬車と並行して歩いていた『5本の矢』と『赤い閃光』、ミーナはそれぞれ頷くと馬車の後ろに移動して歩き始める。

王都内の道路は基本、馬車と人の通る場所が別になっている。

サイーシの街もそうなのだが、何となく程度で明確には決まっていなかった。


タウロは慣れない王都の雰囲気に圧倒されながら、一行と共に商会本部まで向かうのであった。




「それでは、俺達は念の為、冒険者ギルドに盗賊の件の報告と、クエスト完了の手続きをしてきます。帰りは、5日後で間違いないですね?」


『5本の矢』のリーダーがパウロに確認する。


「はい、5日後の朝、ここに集合で改めてお願いします。」


「了解した。『赤い閃光』は、どうする?」


「俺達も手続き終わらせておきたいからついていくよ。」


「サトゥーとミーナは?」


「ぼくは、パウロさん達の手伝いをするのでいいです。」


「私はタウロの護衛中だから、行く必要はないわ。」


「了解、では、解散で。」


そう言うと、チーム『5本の矢』と『赤い閃光』は足早やに立ち去っていった。


「『5本の矢』さんは、王都に馴染んでますね。」


タウロが感心して、ミーナに聞いてみた。


「こういうクエストは何度も受けてるからね。私もそうだし。」


「やっぱり慣れですか?」


「最初だけよ。あとは広いから道に迷ったら、王城のあの塔を目印にすると良いわよ。」


ミーナが指さした先には、王城があり、ひと際高い塔がそびえていた。


「…ミーナさん、道に迷ったんですね。」


「うん、冒険者ギルド本部に行こうとして半日迷って、ようやくあの塔に気づいたの。」


本気なのか冗談なのかわからないミーナの返しに、天然系を疑うタウロであった。

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