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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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297話 支部長復帰

 タウロの活躍もあって、冒険者ギルド竜人族の村支部支部長サラマンが数か月ぶりにギルドに戻った。


 タウロの願いがあったからなのか、翌日、いつも通りギルドを訪れると、掲示板にお約束である『空間転移』での送迎クエスト以外に、ダンジョンでの魔石回収、素材回収、ダンジョン内の魔物の間引き、地図作製、研究の為の魔物捕縛など、沢山のクエストが貼り出されていた。


「クエストが増えてる!やった!……って、これってAランク帯やBランク帯のクエストだ……」


 よく読まずに最初こそ喜ぶタウロであったが、内容に驚くのであった。


「そいつは普段、俺達がダンジョンに潜ってやってた事なんですよ。今回の事で他の奴に任せる事にしようと貼り出してみました」


 奥の部屋から出て来た支部長サラマンが、タウロに説明した。


「昨日の今日でもう、お仕事ですか?今日くらいはゆっくり休めばいいのに」


 タウロがサラマンの復帰に呆れた。


 いくら竜人族とはいえ、ダンジョンで精神を擦り減らす状態に長期間さらされていたのだ。


 数日休んでも誰も文句は言わないはずである。


「俺はもう大丈夫ですよ?わはは!」


 サラマンは元気よく笑って見せた。


 確かに、大丈夫そうだ……。


 竜人族の規格外の能力にほとほと呆れるタウロであった。


「でも、この貼りだしたクエストはどうするんですか?冒険者は僕以外ここのギルドにはいないですから誰もやりませんよ?」


「何事も物事には順序があると思いましてね?受付嬢のリョウコから言われたんですが、そもそもクエスト(需要)が無いとそれをやる人(供給)は現れないだろうと。竜人族は普段必要な事は大概自分でやってしまうので、この冒険者ギルドの必要性がいまいち理解出来ていませんが、こうして貼っておけば、いつか、『じゃあ、代わりにやってやるよ』って奴も現れるかと思いましてね」


 サラマンの言葉にタウロは感心して頷いた。


 確かに、その通りだ。


 何もなければ訪れる者もいないが、取り敢えず、貼っておけば見る者も現れ、いつかそれを引き受ける者もいるかもしれない。


 がしかし、クエスト内容がA、Bランク帯というのは無茶苦茶であった。


 人族でAランク帯は極一握りの超一流冒険者である。


 そこまでランクを上げるのにどのくらいの年月と才能、努力が必要だと……、とはいえ、ここは竜人族の村、そういうレベルの戦士がゴロゴロいるのだから僕達とは感覚が違い過ぎる……。


 タウロはそう思うと呆れるしかなかった。


「タウロ殿も挑戦してみますか?今なら支部長判断でこれらのランク帯クエストを緊急事態によるフリークエストに変更する事も可能ですよ?わはは!」


 燃える様な赤い髪に伸びた赤いひげを揺らしながらサラマンは笑うのであった。


「……ははは。無茶苦茶ですよ……。──うん?ミノタウロス討伐とそれに伴う魔石、素材回収、間引き依頼?」


「ええ、それはB+ランクのクエストですが、挑戦しますか?今なら支部長権限で──」


 サラマンがタウロに話しを振る。


 流石にタウロが見所があるとはいえ、まだ子供なので無理とわかっていての冗談である。


「……もし、これをクリアしたらランクアップ出来ますか?」


「駄目よタウロ君。今のタウロ君のランクはD-だから危険よ?支部長の冗談なんだから相手しないでいいのよ?」


 2人のやり取りを見ていたリュウコが間に入って声をかける。


「タウロ殿は現在D-ランクですか?……ふむ。もしクリアできたらD+ランクまで支部長権限で上げてもいいですよ」


 サラマンがニヤリと笑って約束する。


「ちょっと支部長!タウロ君が鵜呑みにして無茶したらどうするんですか!駄目よタウロ君、絶対やっちゃ駄目よ?」


 受付嬢リュウコが支部長とタウロに注意した。


「では、このクエスト、フリークエストにして下さい」


 タウロが確信を持って答える。


「よし、わかった。俺の職権乱用でこのクエストはフリークエストにする!」


 自分で職権乱用と言っている時点で駄目なのだが、貼りだしたクエストを一度剥がすとそこに支部長権限で判を押す。


 緊急フリークエスト化の印だ。


「では、リュウコさん、受付して下さい」


 タウロは内心大喜びすると、そのクエストをそのままリュウコに渡す。


「ちょっとタウロ君!本当に危険なのよ?……もう!私、知らないですよ支部長!」


 リュウコは破れかぶれ気味に手続きを済ませる。


「それでは、受注したので、討伐証明にこれをお願いします」


 タウロはリュウコの手続きが済むのを確認するとマジック収納から、86階層で倒したミノタウロスの遺骸をその場に出して見せた。


「──こいつは驚いた!確かにこれはミノタウロスだ。タウロ殿、まさか昨日の我々の捜索の時にツグム達、護衛チームと一緒に討伐していたんですか?」


 サラマンは素直に驚くとタウロに確認する。


「いえ、このミノタウロスは、僕が護衛チームとはぐれた時に遭遇したので1人で倒しました。と言っても、これを倒すのに1時間近くかかったんですけどね」


 タウロはツグムが通常なら1分以内で倒せると言っていたので、それに1時間かかった事を恥じると、苦笑いして答えた。


「タウロ殿……。あんたの歳で、ミノタウロスをソロで倒せる奴は竜人族の中にもいないですよ。こいつはたまげた……!」


 支部長サラマンは、ただ者ではないと思っていた人族の子が、とんでもない実力を秘めている事に驚嘆するのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] タウロは内心大喜びすると、そのクエストをそのままリュウコに渡す。 「ちょっとタウロ君!本当に危険なのよ?……もう!私、知らないですよ支部長!」 村長の意向を無視して、このギルドやっていける…
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