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29話 トラブルと不安

王都行きまでの数日の間に、立て続けにタウロは災難にあっていた。

Eランク冒険者との事、父親との事、今朝にはまた、他所からの冒険者に絡まれた。


その相手は初歩の鑑定能力を持っていたらしく、タウロの持つ小剣が、最近巷で有名になりつつあるアンガス製である事を知って、価値が有ると踏んだのだろう。

言いがかりをつけて、タウロから奪おうとしたのだ。

もちろんタウロは気配察知でつけられているのはわかっていたので、街の外で他の地元冒険者がいる付近に誘導し、そこで地元冒険者に聞こえる様に、大声で相手の行為を糾弾した後、駆けつけるタイミングで相手を倒した。

証人もいる正当防衛成立である。

タウロはE-ランク、相手は一つ上のEランク冒険者だったが、思ったより弱くて助かった。



午前中の内にトラブルを収め、薬草採取クエストをこなしてギルドに戻っていたのだが、もう、お昼である。


「嫌な事ってまとめて起きるよなぁ。」


と、愚痴をぶつぶつ言いながら、午後はずっと限定盤作りの最中だ。


長い時間集中して作業していたタウロだったが、


「…これで、10…!」


王都行きのリバーシ限定盤10面を完成させ、タウロはひとり、中庭でガッツポーズをした。


「短期間で作ると、さすがに精密があってもきつかった、はぁ…。」


精密の能力があっても作るのはタウロである、疲れるのは仕方が無かった。

とはいえ、精密の能力は地味だが、便利だった。

ひとつ良い物を作れば、同じものも文字通り精密に再現できる。

もちろん創造性、それに付随する才能が無いと良い物は作れないわけだが、タウロには前世の知識で培った創造力はもちろん、21歳まで学んできた勉強で、才能を高めている。

それらがあれば、良い作品を作り出す事は、不可能ではなかった。


「ちゃんと学校で美術の授業とか真面目にしといて良かった…!」


有名黒魔術サークルがある名門大に行く為とはいえ、真面目に全ての科目で地道に頑張っていた佐藤太郎の汗と涙の努力の結果であった。




リバーシの販売を委託されていて、王都への販売に行く商人がギルドに訪れた。

タウロの限定盤の進行具合を確認しに来たのだ。


「サトゥー君、どうです、期日に間に合いそうですか?」


「あ、パウロさん。10面全て完成しましたよ。」


商人のパウロは、驚いた。

売約済みの6面分だけでも間に合えばと思っていたのだが、出発日まで数日を残してあの限定盤を10面である。

タウロ・サトゥーが金の生る木に見えた。


「サトゥー君、いや、タウロ君と呼ばせて下さい。君、冒険者を辞めて、こっちの道で頑張る気はない!?」


「うちの将来有望な人材を引き抜こうとするな。」


支部長のレオが背後から現れ、パウロの頭を軽く小突いた。


「支部長さん、いたんですか?言って下さいよ。タウロ君の才能はもっとお金になりますよ。」


悪びれる事なくレオに答えた。


「引き抜いたら、お前のとこの商会との取引、止めるからな。」


「勘弁して下さい、冗談ですよ冗談。」


パウロは笑って応える。


「本気だったくせによく言うわ。」


二人は笑うとそれで解決の様だ。


「それで、王都行きの件、どうなるんですか?」


詳しい事を聞いてないタウロは、二人に疑問をぶつけた。


「限定盤が10個揃ったのであれば、今からでも出発したいんですが、豪華盤、一般盤ももう少し、数が必要なのであと数日お待ち下さい。その間に数が揃うはずです。」


「タウロの指南役の相手ははっきりしたのか?」


支部長レオが、タウロの心配を代わりに口にした。


「あちらの商会本部からの連絡では、お相手は貴族のようです。最初は商会系のお金持ちのはずだったんですが、中継ぎだったみたいですね。今の内にタウロ君は、服を新調しておいた方がいいです、仕立屋を紹介します。もちろん、うちがお代は持ちますので安心して下さい。」


「貴族ですか!?」


話が大きくなっていく事に不安しかないタウロであった。

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