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23話 続・禁断の手

持てるだけの木材を抱えて帰ってきたタウロに、ネイは首を傾げた。


「どうしたの、そんなに木材を抱えて。目立ったでしょう?」


タウロが目立つのを嫌がっているのは知っている。

だから、疑問でしかなかった。


「今後のボクの平穏な生活の為に、ゲームを作ろうと思いまして。」


「タウロ君の生活の為のゲーム?」


ネイにしてみれば何のことやらである。


「はい、ぼくのことで街が騒ぎ過ぎてるので、ゲームを作ってそれで盛り上がって貰い、ぼくのことは忘れて貰おうかと。」


「あー、他に目を向けて貰うということね。…でも、みんなが夢中になる様な物を急に作るのは難しいわよ?」


「大丈夫です、禁じ手があるので。(ニッコリ)」


「禁じ手?タウロ君、悪い顔してるわよ。」


「あ、犯罪とかじゃないので安心して下さい。ただ…」


ファンタジーものではやり尽されてるので、異世界もの好きには飽きられてるんです、とは言えないタウロだったが、ここは王道の使い古されたアレに頼るしかなかった。


「オセ…じゃない、リバーシと言います。」


危うく読者が離れるだけでなく、大人の事情で打ち切りもある名称を出しかけたが、踏みとどまった。


「リバーシ?」


「はい。まず、正方形に板を切り出します。」


そこに線を引いて8×8マスの盤を作り、表裏を黒と白に塗り分けた平たい円盤状の石を作る。


「これで、完成です。」


「どうやって遊ぶの?」


ルールを説明しながら打っていくと、


「あー、なるほどね。これなら簡単だし面白そう!」


と、ネイはやる気になったので、数回相手になってみせた。


「あー、悔しい。シンプルなのに奥が深いわね。タウロ君に一度も勝てないじゃない。でも、これは、面白いわ。これならきっと、みんな喜んで遊んでくれるに違いないわ!」


ネイが絶賛してくれたので、タウロは自信が付いた。

だがしかし、肝心な事があった。

問題は”誰”が制作者を名乗り、商業ギルドに”登録”するかという事だった。

これまで、前世の料理メニューは食べ物なので登録する事はなかった。

密かに真似しようとする者はいたが、ギルド店である本家が一番おいしいし、それに冒険者ギルドの絶対的知名度も相まって露骨に真似しようとするお店は無かった。

リバーシもまた、ギルドの名を使えばとは思ったが、商業ギルドに登録するとなると製作者の個人名が必要になる。

支部長のレオでもいいが、人柄が知れ渡っているので疑われないだろうか?


「出来れば口が堅く、お金に強欲でない、人柄が信用できる、そして、何より後ろ盾があって多少のトラブルなら跳ねのける、そんな人いませんかね?」


ネイに聞くと


「いるじゃない。タウロ君の身近に。」


と、すぐにヒントが返ってきた。


「?」


「誠実で、孤児院に寄付をしていて、ギルドに所属し、サイーシ支部で指折りの冒険者が。」


「…あ、モーブさん!」


「ね?モーブさんならきっと収入の一部は孤児院にずっと寄付してくれるだろうし、『銀剣』としてより上を目指して長期間、街を離れるクエストも出来るから、喜んで引き受けてくれると思うわよ。」


早速、支部長室を借りてレオの仲介の元、モーブに理由を説明し、お願いすると


「…わかった。収入が増えれば孤児院も助かる。それに、チームのメンバーと上を目指して一緒に外に出たいと思ってたからな。」


と、快諾してくれた。


「だが良いのか、タウロ。今はそれでいいかもしれないが、後々、そのリバーシとやらが、有名になった時、後悔しないか?」


モーブの言う事は、もっともな疑問だった。


「はい。大丈夫です。ちゃんと収益の一部は貰いますし、面倒事に巻き込まれないので逆にラッキーです。」


笑顔で答えると


「ははは。確かに、な。お互い、利益のある交渉だったな。」


モーブとタウロはがっちり握手をすると交渉が成立したのであった。

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