220話 続・魔法の実験
タウロは創造魔法はあんまり使わない様にしていた。
一度死にかけた事も原因のひとつではあるが、夢がある魔法過ぎる様で、夢が壊れそうな気もする。
例えば、魔力をどのくらい使うかわからないが、拳銃も作れるのではないかとふと頭をよぎった事がある。
でも、これはもちろん却下、夢が無さ過ぎる武器だからだ。
それに構造をいまいちわかっていないので、作っても暴発とかありそうで怖い。
そんなわけで創造魔法は必要最低限しか使わない様にしていた。
とはいえ、汎用性が高い魔法である事も確かなので、実験してより深く知る事は間違っていないだろう。
おさらいすると、この魔法は『創造魔法(弱)』。
(弱)が付いてる意味を何となく考えたのだが、魔力の消費量と材料を必要とする事について関連があるのではと思っていた。
何しろ魔力の消費量が大き過ぎる。
複雑になればなるほど、有用なものほど、ごっそりと魔力を持っていかれるのだが、それにしては魔力の消費が激し過ぎた。
命を落としかけた魔刀に関しては、自分の中ではそこまで凄いものという認識も無く作ったのだが、刀の作成、迷宮核の使用、魔石による魔法の付与など複数の技術による効果の為に、死にかける程の魔力を消費したと思われた。
もしも、この(弱)が取れたら消費魔力は少しは落ち着くのかもしれないのではと思っていたのだが、ここに来ての『魔力操作(極)』だ。
良い方向に行けばもっと、『創造魔法』が活用できる道は拓けるのかもしれない。
…
そんな事ありませんでした!
手始めに、木材を使ってつなぎ目の無い椅子を作ってみたら、何となく魔力の消費量が以前に比べると下がった気がしたので、これはイケるかもしれないと、ラグーネとアンクの武器を作ってみる事にした。
まずはラグーネの為の槍の為に用意した鉄鉱石と迷宮核の欠片、カシの木材、そして、以前タウロが倒したオーガの魔石を用いてラグーネにしか使用できない専用武器を創造してみた。
結果は、魔力の消費量が多過ぎてまた死にかけ、寸前に飲んだ魔力回復ポーションと、エアリスが咄嗟に自分の魔力をタウロに譲り渡す治癒士の魔法で一命を取り止めた。
この時、遠のく意識の中で『世界の声』がしたのだが、それはまた別の機会に。
「…槍は武器の金属部分が先だけだから、イケると思ったんだけど、駄目かぁ。」
と、タウロはフラフラになりながら目覚めると、自分の目算が外れた事を反省した。
「『創造魔法』には『魔力操作(極)』は影響を及ぼせないって事?」
エアリスが魔力回復ポーションを飲みながら実験の結果を指摘した。
「うーん…。『創造魔法』が特殊なのか、(弱)が付いてる事が問題なのか、かな?『魔力操作(極)』は(極)が付いてる時点で、欠点という欠点があるとは思えないし…。」
タウロはエアリスの指摘を踏まえて考え込んだ。
「でも、結果的にはラグーネの為の専用の槍が出来て良かったじゃない。タウロ偉い!」
エアリスは前向きに結果を受け止めて、タウロを褒めた。
いや、それでまた、死にかけたから!
今回はエアリスがいなかったら、本当にあの世行きの可能性大だったから!
内心ツッコミを入れるタウロであった。
「でも、こうなるとアンク専用の大剣作りもしないと、不公平だよね?」
タウロは、槍でこれなら、アンクの大剣の大きさを考えると、今度は即死で間違いない、という確信があった。
「私、思ったんだけど…。一度に全てを作るから危ないんじゃない?」
エアリスが鋭い指摘をした。
「…それは、どういう…。」
タウロは自分が見落としていた事にうっすらと気づき始めながら聞き返した。
「工程を分けてやるのよ。まず、大剣を作って魔力回復。迷宮核で付与して魔力回復。魔石で付与して魔力回復。…これなら、一度の魔力消費量を抑えられて命を落とす危険性は下がるんじゃない?」
ガーン
エアリスの言う通りだ!
タウロはがっくりと膝を突くと自分の愚かさにショックを受けるのだった。
効率ばかりを考えて簡単な事を見落としていた。
エアリスの言う通りだと手間も時間もコストもかかるだろうが、命を落とす可能性はぐんと下がる。
「…よし、それを試そう。エアリス、もう少し僕に付き合って。」
タウロは魔力回復ポーションを飲み干すと、大量の鉄鉱石をマジック収納から取りだした。
「いいわよ。でも無理はしないでね?」
エアリスは答えると、念の為、自分も魔力回復ポーションを飲んで回復するのであった。
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