202話 四人目
アンクの動きは素晴らしいものだった。
ラグーネとの相性もいいのか、二人であっという間に発見した6匹のゴブリンを倒してしまった。
ゴブリン相手では格が違い過ぎる。
ただ、アンクは明らかに手を抜いてるのが分かった。
いや、倒す加減を調整して消費エネルギーに無駄を出さない戦法なのかもしれない。
戦場ではいつ終わるかわからない戦いを強いられる事は多いだろう。
だから、無駄な体力を使わない立ち回りをしていると思われた。
ラグーネが真面目に最大火力で倒すスタイルとは対照的だ。
タウロがそう分析していると、アンクはラグーネに同じ事を説明しだした。
「ラグーネちゃん、同じ倒すなら、加減して次の敵に備えるのも大事だぜ。いくら無尽蔵な体力持ってても疲れる時は疲れるからな。」
やっぱりタウロの思った通りだ。
それにしても倒すにも加減は難しいはずだ。
アンクは膨大な経験からその加減がわかっているのだろうが、急に真似は難しいだろう。
と、思っていたのだが…。
次のゴブリンの群れを見つけるとラグーネは早速、アンクのアドバイスに従って力加減を調整しながら立ち回り始めた。
まだ、アンクに比べれば全然だが新たな戦い方の発見にラグーネは楽しそうだ。
アンクとのコンビネーションにも喜々としてた。
エアリスもその光景を見ていてアンクの見方が変わった様だ。
「…アンクはチームにとって良いかもね。」
そう言うと、逃げるゴブリンを魔法水の矢で仕留める。
「…そうだね。じゃあ、ラグーネも含めて賛成みたいだから、アンクさんの試験は合格にしよう。」
タウロはゴブリン討伐が終わると、アンクに合格を告げた。
「僕達のチームで良ければ、うちに来て下さい。」
「いいのかい?」
「ええ。前衛のラグーネとも相性が良さそうですし、連携も上手く出来そうなのでうちに来てくれればとても助かります。」
タウロは、笑顔で頷いた。
「…私も、アンクが来てくれたら助かるわ。」
エアリスが、当初警戒してたので、その事で気恥ずかしそうにしながら言う。
「私もアンク殿なら、戦いやすいから大歓迎だ。アドバイスも助かる。」
ラグーネも続いて答えた。
「意外に大歓迎で驚いたが…、じゃあ、お言葉に甘えて入れさせて貰うとしよう。改めて、俺はアンクだ。戦うしか能がないがよろしく頼む。」
「私はエアリスよ、後衛専門よ。自己紹介ちゃんとしてなくてごめんなさい。」
「私はラグーネ、いまさらだが、竜人族だ。タウロとエアリスには恩があってチームに入ったのだが、今はれっきとした仲間だ。」
「「え?」」
タウロとエアリスはラグーネから仲間という単語が出てきたので、思わず驚いた。
初めてラグーネから自分達が仲間と認めてくれたのだ。
嬉しくないはずがない。
「あ、そして、僕がリーダーのタウロです。えっと、呼び捨てでお願いします。僕もそうするので。ラグーネも殿付けは無しだよ。」
タウロがラグーネの仲間発言に気を取られて思わず止まったが自己紹介をした。
「そうだな。仲間ならば”殿”付けはおかしいな…、了解した。」
ラグーネは、タウロの指摘に素直に笑顔で頷いた。
自分でも仲間と口にして気恥ずかしさがあったのか照れ笑いだった。
「じゃあ、早速、聞きたいんだが、エアリスの阻害系スキルは天然かい?」
アンクが自分の、低級の人物鑑定とはいえ名前も全く見えないエアリスのスキルに興味が沸いた様だ。
エアリスは、答えていいのかわからずタウロを見た。
「丁度いい機会なので、二人にもチームの証であるペンダントを渡しますね。」
タウロはそう言うと、マジック収納から二つのペンダントを出した。
それは一見、シンとルメヤが返却したものかと思ったエアリスだったが、よく見ると石の部分のデザインが、以前の雫型ではなく、ひし形と三つ葉のクローバー型だった。
タウロが、新たに作り直した様だ。
「二人ともこれを首から下げて置けば、自分のステータスを覗き見される事は無いと思います。」
「…そんなアイテムがあるのか?」
アンクは驚きながらそのペンダントを受け取った。
ラグーネも受け取ると早速首から下げる。
すると、アンクの人物鑑定で、ラグーネの名前がわからなくなり、視覚阻害系魔法による竜人族である事を隠していた事を見破ったアンク独自のスキルでの”眼”も通じなくなった。
「こいつは凄いな…。完全に阻害されて全く見えやしない。エアリスと同じ状態になっちまった…。」
「もちろん、エアリスも首から下げてるので、ステータスを見られる事はありません。詳しくは話しませんが、これはチームの証なので大事にして下さいね。」
「「もちろんだ!」」
アンクとラグーネは、頷くとハモって答えるのだった。




