198話 原因の究明
三人は、依頼のあった村に昼過ぎに到着した。
村長が、歓迎しに急いで村の入り口に現れたのだが、やって来たのが子供二人にこちらも若い獣人族?の女性1人だったので心配そうな顔つきになった。
確かに、このメンツなら心配されても仕方がないだろう。
「依頼に応じてやって来たチーム『黒金の翼』です。僕がこのチームのリーダーのタウロ、こちらがエアリスとラグーネです。早速ですが問題の沼地の場所を教えて貰ってもいいですか?」
タウロが簡単に自己紹介をして、仕事をちゃんとやる姿勢を示した。
「あ、はい!こちらです。」
村長は、子供がリーダーと聞いて、一層心配になったが、依頼が原因究明だったので、この子達が調査してギルドに報告、その報告を元にギルドが改めて解決してくれるのかもしれないと、脳内で疑問の補完をすると納得する事にして案内した。
村を抜けて進むと森に行く道がある。
そこから上空を見ると、森の中から靄が溢れてきているのが確認できたので、タウロはすぐ納得した。
「この先ですね。ありがとうございます。案内はここまでで結構です。」
タウロはエアリスとラグーネに毒耐性のポーションを渡すと、エアリスには念の為マスクをさせる。
そして、三人は森に入って行った。
森に入ると、木々は枯れて森とは呼べない状況になっていた。
少し歩くとすぐに沼があったが、そこから溢れ出る瘴気に中って木々が枯れているのは明白だった。
「エアリスは沼に結界を張って、この瘴気を外に出さない様にして貰っていい?」
タウロが言うと、エアリスは頷いて早速、結界を張る。
「ラグーネは沼の周囲を回って気になる点があったら知らせて。」
「了解した!」
ラグーネを元気よく返事すると、瘴気を気にする事なく歩いて行った。
やはり、状態異常耐性があるので、瘴気もへっちゃらの様だ。
「じゃあ、僕は沼の中心に行ってみる。」
タウロは二人にそう言うと、沼地に入って行く。
エアリスもラグーネも止める間もなくタウロは沼に足を踏み入れたのだが、タウロは沼の上を文字通り歩いていった。
これには、沼の周囲を歩いていたラグーネもギョッとして立ち止まり、タウロに目を奪われる。
エアリスも驚いたが、思い当たる節があったので、静観する事にした。
ラグーネは走ってエアリスの元に戻ってきた。
「タウロが、沼を歩いてるぞ!?いや、歩くのは歩けるのだろうが…、いや、その上を歩いてるのだが!?」
ラグーネは驚きのあまり言葉がおかしくなっていたが、言いたい事はわかったので、エアリスは答えた。
「多分あれは、『浮遊』を使ってるんだと思う。だから、沼の上を歩いてる様に見えるのよ。」
エアリスの返答にラグーネは、改めてタウロに驚いた。
「『浮遊』もタウロは使えるのか…!彼は凄い、常に驚かされる。一体タウロは何者なんだ?」
竜人族のラグーネも十分凄いのだが、その彼女も驚かせるのがタウロだった。
「タウロのスキルは1つ、文字化けスキルだけだから、大変な経験と努力をしてきた事だけはわかるわ。」
「…文字化けスキル!?竜人族の間では、役立たずスキルと言われているのだが…。」
ラグーネがまた、違う意味で驚いた。
「私達、人の間でも同じ評価よ。だけど、タウロはそのスキルひとつでこれまで奇跡を起こし続けてるの。あ、もちろん、頭脳と努力があってこそよ?」
「本当に凄いな…。私はまだまだだな。」
ラグーネはそう言うと、当初の沼の周囲の探索に走って戻って行くのであった。
タウロは中央に行くまでに原因の一端に気づいた。
それは、大毒蛙の群れだった。
どうも、大量発生している様だ。
この大毒蛙は50~80センチと結構大きい魔物で泥水の中から顔だけ出してタウロを警戒している。
そして、その背中から、毒の靄を出して周囲を汚染する。
前世の蛙と違ってこの大毒蛙は鳴き声をほとんど上げないので目立たず、卵を沢山産むわけではないので、大量発生自体が珍しい事例だ。
亜種が生まれているのかもしれない。
まずは、それを見つけて駆除するのが、先決と考えるタウロであった。