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188話 4人の決断

タウロとエアリスはその日、少し重い雰囲気の中、就寝した。


翌朝、一晩寝るとエアリスは気分転換できたのか、食事もちゃんと食べて前日の事はもう、何も言わなかった。


その様子を見て、今後のチームの事を、タウロがエアリスに話そうかと思ったところに、『気配察知』でシンとルメヤの気配を感じた。

どうやらこっちに向かってきている様だ。


それがわかったので、タウロはシンとルメヤが到着してから話す事にしようと思うのだった。



家の前までシンとルメヤが来たので、ノックの前にタウロはあらかじめドアを開けて二人を迎え入れた。


「おはよう二人とも。」


タウロが挨拶すると、二人は緊張した面持ちで挨拶を返す。

二人は深刻そうだ。


それを見てタウロはある程度察する事が出来た。

どうやら、二人も答えを出した様だ。


エアリスも二人の雰囲気を察して、表情が暗くなった。


「…まあ、立ったままもなんだから、二人とも座って。」


タウロは、二人に席に付く様促す。


「う、うん…。」


室内の雰囲気がはより一層重くなった。


そんな中、


「…実は、俺達、D-ランクに昇格したんだ!」


ルメヤが代表して口火を切って、発言した。


「うん、おめでとう。」


「…え?知ってたのか?それに怒らないのか?」


ルメヤが驚いて聞いた。


「二人の決断なんだから、僕達がとやかく言う事じゃないよ。それに仲間の昇格は嬉しいよ。」


タウロが答えると、エアリスに視線で促す。

エアリスもタウロに促されて頷いた。


「…それと──」


ルメヤが言いづらそうにしていると、今度はシンがルメヤを遮る様に、


「実は、『黒金の翼』を脱退して、ユウとレンとチームを作ろうと思ってる!勝手な事とは思うけど、俺達も考えた結果なんだ!」


と、重大発言をした。


エアリスは、一気に表情が青ざめ、ショックを受けた表情をしている。


「そっか…、うん…、本気なんだね?二人とも守るものが出来たという事かな。」


「…ああ。…それに、これ以上俺達の失態でタウロ達に迷惑をかけるわけにもいかないし…、それに俺達、彼女も大切にしたいんだ。」


ルメヤが、シンの発言を引き継いで語った。


「そうだね…。大切にしたい気持ちは大事だと思うよ。」


「…いいのか?俺達、タウロには恩があるし、それを返せたとは思ってない!だから──」


「僕もエアリスも!…仲間じゃないか…。だから恩なんて関係ないよ…。僕達は大事な仲間が幸せになる選択をしたのなら、それを祝福するよ。」



タウロの答えにエアリスが、泣きそうになっている。

眼に涙を溜めて、机の下でタウロの手を握ってきた。

タウロはその手を優しく握り返した。


「ありがとう二人とも…。実は俺達…、レンとユウがこの村に居づらいって言うから、オサーカスの街に移ろうかと思ってる。」


きっと冒険者ギルド前での揉め事が原因で他の冒険者からも煙たがられたからだろうか?とタウロは思ったが指摘しなかった。


「二人ともオサーカスの街、気に入ってたよね。あっちでも活躍しなよ。」


「ありがとう…。元『黒金の翼』のメンバーとして、頑張るよ。」


「あそこなら、また会う機会もあるかもしれないし、その時は案内してね?」


エアリスが、涙をこらえて言った。


「もちろんさ!いつでも来てくれよ。あっちで有名になって、二人をびっくりさせたいし…。」


シンがエアリスに応じた。

エアリスに影響されたのかシンも涙目になっている。


「おいおい、シンもエアリスも泣くなよ!我慢だぜ?」


ルメヤはそう言いながら、目に溜まった涙をぬぐった。


「自分が、一番先に泣いてるじゃん!」


エアリスはそう指摘するともう我慢できなくなったのか、涙をぼろぼろと流し始めた。


シンも堪えきれなくなり、「ごめん」と言いながら泣き始めた。


タウロはその3人を見ていると意識せずに涙が頬を伝っていた。


この4人でチーム『黒金の翼』が結成できて良かった、元々急遽出来たチームだったが、タウロは誇らしい気持ちでいっぱいだった。


みんなも同じ気持ちだろう。


「みんなありがとう…。このチームは最高だったよ!」


タウロが、みんなにそう伝えると、3人は大泣きするのであった。




テーブルに『黒金の翼』を示すタウロが作って渡していたペンダントが2つ残されていた。


シンとルメヤが、


「これは、『黒金の翼』が持つべきものだから。」


と、置いて行ったのだ。


二人に持っていって貰いたかったのだが、二人のけじめなのだろう、押し付ける事も出来ず、その申し出を受けて返却される事になった。



エアリスは泣き疲れて部屋に引っ込んでしまった。

タウロは、テーブルに残ったペンダントをマジック収納に回収すると外に出た。


まだ、お昼だ。


雲一つない青空を見上げると、天気雨が一筋降ってタウロの頬を濡らすのであった。

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