185話 女性戦士
タウロとエアリスはいつもの定番薬草採取と、普段は4人でしかやっていなかった、ゴブリン討伐クエストを受注した。
たまには自分が前衛をしておこうと思ったのだ。
幸い覚えた能力『神箭手』のステータス補正で力が上がってるので非力ではなくなっている。
なので盾持ちで挑戦する事にした。
新たに得た小剣『タウロ』も本格的に利用してみたい。
前回使用したのは骸骨や幽霊相手だったので、普段闘っているゴブリン相手に試してみたかったのだ。
エアリスも殴り杖で参戦する。
ゴブリンが現れる森に行くとタウロはすぐ『気配察知』で、ゴブリンを見つけた。
6体いる。
1人でも大丈夫だがエアリスと二人での連携も試したいので、『気配遮断』を使用せずに接近して正面から対峙した。
ゴブリンは半円形に囲んで来ようとするが、タウロが前に出てゴブリンの攻撃を誘う。
突出してきた人間にゴブリンはつられて手にしているこん棒や、ナイフで攻撃した。
タウロは盾でこん棒を受け流し、ナイフを持つゴブリンに小剣で目を突く。
ゴブリンが悲鳴を上げて絶命する中、タウロはすぐに次のゴブリンに向かう。
エアリスは、右から囲む様に近づくゴブリンを、魔力を込めて風属性を宿した杖でゴブリンの手にしていたこん棒を断ち割って、ゴブリンの頭上に振り落とし頭を叩き割った。
その間にタウロは小さい動きで次のゴブリンの喉笛を切り裂き、左から回り込もうとしていたゴブリンを盾で殴ってよろめかせ、体勢を整える前に小剣で突き刺す。
後方にいたゴブリンに土の精霊魔法『石礫』を頭にぶつけて気絶させると接近して止めを刺した。
その間にエアリスが、残ったゴブリンをこれもまた杖で殴り倒していた。
「さすがタウロ。盾の使い方も上手いわね。」
「久しぶりだからちょっと緊張したけど、大丈夫みたいだ。エアリスもゴブリン相手なら楽勝みたいだね。」
「ええ、こういう事にも慣れていかないといけないわね。ダンジョンで骸骨や幽霊と戦ったせいかスムーズにいけて良かったわ。」
「じゃあ、次、行く?」
「うん、全然疲れてないから、討伐証明の耳と魔石の回収したら次、行きましょう。」
エアリスも乗り気だったので、タウロはゴブリンの遺体をマジック収納に回収すると、
「回収作業は後でまとめてしよう。」
と、提案した。
エアリスもその提案に頷くと、次のゴブリンの群れをタウロの『気配察知』で見つけて襲いかかるのであった。
結果、半日の内に23匹ものゴブリンを二人で討伐した。
タウロが、ゴブリンの返り血で服が汚れていたエアリスに『浄化』魔法で綺麗にしていると、『気配察知』に人が確認できた。
『真眼』で確認し直すと、剣と盾を持っているシルエットが映ったので冒険者の様だ。
相手はゴブリン13匹。
さすがに、1人で戦うには数が多い。
加勢した方がいいだろう。
タウロはエアリスにそれを伝えると、
「わかったわ。」
頷いて、二人はそちらに救援に向かうのだった。
「くっ!まさか、薬草採取で2グループものゴブリンに遭遇するとは悲運…!」
ゴブリンに囲まれていたその冒険者は女性だった。
見た目が珍しい。
角が生えているのだ。
そして、黒い長髪のポニーテールに、金色の目の鼻筋が通った美形で、女性にしては長身で肌が所々出た鱗鎧を纏っている、モデルの様な恵まれた体格をしていた。
最初、羊人族かと思ったがそうでもない、肌に鱗があるからだ。
「まさか、蜥蜴人族?」
エアリスが、その姿に驚いて止まったが、タウロが弓でゴブリンを立て続けに2匹射抜いたので、慌てて自分も風魔法で援護射撃して1匹を仕留めた。
その援護に、力を得たのだろう、女性冒険者は2匹のゴブリンを手にした剣で一閃して倒して見せた。
「おお!一振りで凄い!」
タウロは素直に感心しながら、弓矢でゴブリンをまた、2匹仕留めた。
エアリスが、逃げる2匹のゴブリンを水魔法で吹き飛ばし、タウロの矢が立て続けに背中を見せる3匹のゴブリンを襲って全滅させたのだった。
「そこの二人。お陰で助かった、ありがとう。」
「大丈夫ですか?怪我したならポーションありますよ?」
タウロがマジック収納からポーションを出してみせた。
「いや、それは大丈夫だが、君達はこの辺りの住人かい?」
「住人で冒険者をしてます。あなたは冒険者ではないのですか?」
「私は、冒険者ではない。ただ、この辺りは珍しい薬草が沢山取れると聞いてやって来たのだ。」
「そうなんですね。何を探してるのか教えてくれたら手伝いますよ?」
「ほんとか!?それは助かる…!あ!恩を売っておいて、その代償に私の体を要求するのではないだろうな?くっ!殺せ!」
何やら変な事を言う女性戦士だったが、悪い人ではなさそうなので、話を聞く事にしたタウロとエアリスであった。




