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177話 期待を裏切る

カレー屋王都店は初日にしては中々の滑り出しだった。

見慣れない、聞き慣れない、嗅ぎ慣れないの三拍子が揃ったカレーだったが、スパイシーな香りは食欲を誘った。

お店の外まで香りにつられてやってきた人々は、ガラス張りの店内のサクラを見て、お客が結構入ってる事を確認した。

その瞬間、じゃあ、自分も、と通行人からお客様へと変わるのだ。


砂糖菓子に興味を持つ女性はガラス越しに陳列してある初めて見るデザートの数々に目を見張った。

ラインナップは一号店と一緒だが、各種の果物のケーキ、果物とクリームのクレープは、王都でその日に手に入る珍しい果物を使用した。

プリン、クッキー、あんこの饅頭はいつも通りだが、やはりこの王都でもプリンの破壊力は健在で、普段お目にかかれないプルプルの不思議な物体に女性の目は釘付けになった。

砂糖菓子なので少し高めの設定にしてあったのだが、その色取り取りな見た目、そして、食べた者が感動し絶賛した事で、多少値が張っても王都に暮らす都民はお金を出して食べようと思って入店してくれた。

食べると虜になる事請け合いだったので、店内に入ってくれた時点で勝ち確である。


「このカレーって食べ物うまい!」


「この辛さが堪らないよ!」


「トッピングで、色々乗せる具が選べるのも良いよね!」


「そうそう!そしてその後に食べる果物のケーキが甘くて…、最高!」


「辛い物の後だけに甘い物が際立つわ!」


「このプリンって食べ物…美味し過ぎるわ!もしかして、これ、貴族の食べ物では!?」


食べてくれたお客さんの評価は上々だった。


あとは、その噂が広まっていってくれれば、お客さんも沢山入ってくれるだろう。


初日を終えてタウロは手応えを感じて安堵するのだった。


『濡れない布』の加工品は、軍関係を中心に売れていた。

先にもあった近衛騎士団からの大量受注に始まり、王国騎士団、衛兵隊など団体での注文が入ってるらしい。

ガーフィッシュ商会はこのままいくと軍の御用達商人になりそうな勢いだ。

タウロとしては、今回のヴァンダイン侯爵家騒動でも有力貴族との約束を取り付けてくれたりと動き回ってくれたので恩返しは出来たなとこちらにも安堵した。


今後のカレー屋の管理も任せるので、ガーフィッシュ商会が儲かってくれると喜ばしい限りだ。


やっと一息ついた所で、確認したい事があった、それは、ダンジョンで得た能力『空間転移』だ。


いよいよチート能力が本格化してきたとドキドキしていたのだが、忙しかったので確認できずにいたのだ。

なにしろ異世界ファンタジーものでは、チートを極めると覚える様な代物だ。


要は瞬間移動が出来る能力。


これでダンサスの村に一瞬で帰る事が出来る様になるかもしれない。


タウロはワクワクしながら、冒険者ギルドに行って薬草採取クエストを受注すると、王都郊外の森まで実験を兼ねて出かけるのだった。




「クズ能力じゃん!」


がっくりと膝をつくタウロ。


薬草を採取しながら『空間転移』を実験して覚えようと意気込んでいたのだが、瞬時に移動できる距離は1メートル程度、その上、魔力を沢山消費するときた。


タウロは魔力回復ポーションを飲みながら、深呼吸をする。


「落ち着くんだ自分。何か使い道はあるはず…。そうだ!壁抜けが出来るじゃないか!これならすぐに室内に入る事が…、って、ドアから入ればいいし!持っていかれる魔力が大きすぎて使わないから!」


見えないちゃぶ台をひっくり返して逆上するタウロだった。


「はぁはぁ…。落ち着け自分。他にも使い道はあるはず…。ダンジョンで覚えたのだから、きっとまだ凄い要素が…。って、迷宮核破壊の時に覚えた創造魔法(弱)も、似たような仕様だったじゃん!」


またもや見えないちゃぶ台をひっくり返すタウロだった。


「はぁはぁ…。そうだ!ちょっと木に自分を縛ってみよう。…こうロープで縛って動けなくして…と。『空間転移』!」


するとタウロはロープをすり抜け、その傍に一瞬で移動出来ていた。


「成功だ!って、この場合、また失敗して僕がちゃぶ台ひっくり返すパターンじゃん、空気読んで!」


タウロは理不尽なツッコミを『空間転移』に入れるという情緒不安定な行動を1人、森の中でとるのであった。

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