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176話 驚きの売れ行き

ヴァンダイン侯爵のダンジョン『バビロン』での約3年もの失踪からの生還はダンジョンの秘匿性の為、原因と生還出来た理由は秘密にされたものの、戻った事実はすぐ公開される事になった。

というより隠しようがなかったのだ。

ダンジョンでヴァンダイン侯爵が失踪した事は関係者の間では有名だったので、ダンジョンから出てきた一行にヴァンダイン侯爵が混ざっていた時点で、兵士達が気づいて大騒ぎになったのだ。

なので、かん口令が出される前にヴァンダイン侯爵『バビロン』より生還の事実はすぐに広まった。


その為、ヴァンダイン侯爵は、連日忙しい日々を送っていた。

王家との面会に始まり、検査、ダンジョン研究者との話し合い、沢山の貴族との面会やパーティーなど、長期間失踪していた人間に、可愛そうと思えるほどのスケジュールをこなす事になっている事が酷い話だったが、ヴァンダイン侯爵はそれを苦にする事なく消化していった。


スケジュールの合間は、この約3年の間に成長した娘のエアリスと一緒にいる時間にしていたのだから、このヴァンダイン侯爵の体力は底なしの様だ。


タウロはその間、カレー屋王都店のオープンに向けて料理人の育成を進めていた。

ガーフィッシュ商会が用意してくれた人々なので呑み込みが早く、その点は心配なさそうだ。


タウロもエアリスも忙しい日々を送っていたが、ついにガーフィッシュ商会から魔道具『ランタン』が販売される事になった。


タウロが提案した実演販売は、通行人の目を引き、足を止め、周囲に人を集める事になった。


「なんだあれは?ただのランタンと違って凄く明るいぞ!?」


「本当だ。日中にも関わらず、凄く明るい!」


「ありゃ、魔法の『照明』か?」


その人混みに、また、何事かと人が集まる。


「どうした?なんだこの集まりは?」


「どうしたの?何かあったのかしら?」


「みんな、あの店頭にいる店員を見てるのか?」


そして、人々の視線の先には煌々と光る画期的な魔道具『ランタン』であり、それが手ごろな値段で販売されている事実に、すぐ店先には行列が出来たのだが、その騒ぎに衛兵が出動する事になり、実演販売はすぐ止める様にと怒られる事になった。


実演販売はこの騒ぎで中止になったが、その後も行列は閉店まで絶えず、魔道具『ランタン』は、王都の庶民から爆発的に広まる事になるのだった。


この日の夕方には、早速、この『ランタン』を使う人が続出した。

家の中で、店先で、近所を歩くその手にランタンが持たれ、まだ知らない人の目を引く。

油を使ったランタンより格段に明るいのだ、注目を浴びた。

そこに人々が集まり、魔道具店で売り出されていた事を聞くと人々は翌日、魔道具店に新たに行列を作った。

その行列がまた人を集めて、口伝で広がっていくのだった。


この魔道具『ランタン』と、セットでクズ魔石も販売したのでガーフィッシュ商会はホクホクだった。

冒険者ギルドは大量のクズ魔石の在庫と、今後出てくるものもガーフィッシュ商会が買い取る契約を結んでくれた事にホクホクだったのだが、このランタンの為と知って、少し色を付けて貰えばよかったと思うのだった。


それくらい、このランタンは急速に王都に広まり、ガーフィッシュ商会の名はリバーシに続いての大ヒットで知名度は格段に上がるのだった。


ちなみにもうひとつの契約先であるマーチェス商会は、国内第二の都市オサーカスに王都より少し遅れてランタンの販売を開始するのだが、こちらも大好評で爆発的な売れ行きを記録し、地元のキシワンダ商会と組んで大量生産するも、それでも追いつかない状況であった。


もちろんタウロは知る由もなかったが、とにかくランタンは全国に広まっていく様相を呈していた。


その騒ぎの中、タウロのカレー屋王都店は静かにオープンした。


通りではランタンの話でわいわい騒ぐ通行人がいるが、お店には入ってこない。


そう、新規の食べた事のないお店にはそうそうお客が入るわけがないのだ。

タウロはだがそこはわかっていた。


「リバーシ以来の手をここで使う事になるとは…。」


タウロは、そうつぶやくと、


「それでは、サクラのみなさんお願いします!」


と、表に待機していた多くの人々に声をかけるのだった。


そう、今回もサクラを大量に雇ったのだ。


もちろん、サクラの皆さんはお金が貰える上に食事もできる。

何より、王都でも値が張る砂糖菓子もデザートで食べられるとあっては最高のバイトであった。


この仕込みのお客が店内で食べる姿が、珍しいガラス張りの窓から見えるので、お昼時、興味を惹かれて人が徐々に集まってくるのであった。

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