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17話 タウロの戦い

新たな能力はかなり使えた。

普段の、気配を殺す・気配を感じる、とはレベルが違った。

まず、気配遮断。

素人の息を殺してやり過ごす、などとは次元が違い、目の前にいるのに気づかれにくいという認知阻害レベルの代物だった。

そして、気配察知。

これは真眼ともリンクしていた。

範囲内に気配を感じると感覚に刺激が来る、さらに、真眼にそのシルエットが映るのだ。

それに殺気や害意にも反応する。

どちらとも、冒険者として自分の身を守るのに必要不可欠な能力だ。


気配遮断はともかく、気配察知は訓練も兼ねて普段から使ってみた。

すると今まで気付かなかった事に色々気づいた。

街中では路地裏から悪意を感じる事がある。

向けてくる相手は、過去に自分から食べ物を横取りしていた年長の年上の浮浪者達だった。

露骨に嫉妬交じりの感情が向けられていた。

冒険者ギルド内では意外に悪意ある感情は特に向けられていなかった。

ギルド内で職員の手伝いをしてるからか、周囲と歳が離れすぎてるからか、対抗心を持たれていないのかもしれない。

最近ではたまに年上のベテラン冒険者達からも声をかけられるようにもなったし、関係は良好だった。


この経験から街中では気配遮断を使って人混みに紛れる事にし、気配察知は常に張り巡らす事にした。


ちなみに、ギルド内で気配遮断を使っていたら、支部長のレオに気づかれ


「使う場所を考えろ!」


と、頭を小突かれたのですぐに止めた。

どうやら、気配遮断と気配察知にも優劣があるようだ。

これからどちらも磨いて行く事にしよう。




それからは、新たな能力のおかげで、クエストも効率がさらに増した。

薬草採取をしながら、魔物の位置を察知し移動する。

遭遇そのものを避ける事ができるのは、常に安全を保てるので非常に便利だ。

そして、魔物討伐クエストで、一角うさぎは警戒心が強くすぐ逃げるので、討伐には罠が主流だったが、背後から近づいて小剣でとどめを刺す事も可能になった。

ただ、自分の気配遮断がまだ未熟なのか気づかれる事も多々ある。

それはまだ、相手の気配察知が上なのだろう。

完全に気づかれないレベルまで成長させたいとタウロは思った。


その時、気配察知に人がかかった。

1人こちらに向かっている。

シルエットを確認すると冒険者の様だ。

茂みをかき分けて、冒険者が飛び出してきた。

冒険者ギルドサイーシ支部のDランク冒険者チーム「5本の矢」のメンバーの1人だ。


「サトゥーか!?ギルドに連絡を頼む。ゴブリンの集団にうちのチームが遭遇、交戦中だ。支援を頼む。敵は約80だ!」


「わかりました!」


タウロは報告を聞くと、すぐに走り出した。


伝えた男は、振り返ると来た方向に戻っていく。

仲間を助けに行くのだろう。

タウロはそれをわき目にしながら、街まで疾駆するのであった。


タウロの俊敏+5を活かした脚力で早くギルドに到着しその情報が伝わると、レオはすぐに緊急クエストを決定。

その場に偶然居合わせたメンバーでチームを編成し、すぐに出立する事になった。


支部長のレオが、


「タウロはこの急造チーム、Dランク組の道案内をしろ、その後は連絡係だ。」


気配察知と気配遮断を使いながら敏捷+5を活用して駆けて他のチームとの連絡を密にする役目。

タウロの能力を薄々感づいているのかベストな人選だった。




タウロの道案内でDランク急造チームが現場に急行すると、ゴブリンに遭遇したDランクチーム「5本の矢」は、ボロボロの退却戦を繰り広げていた。


盾役の男が仲間を守るようにゴブリン達との間に入りながら攻撃を防ぎ、魔法使いの女が火魔法でけん制する。

剣使いに怪我人が出たようで、治癒士と思われる男に肩を借りながら下がっている。

弓使いの男は周囲に目を配りながら、怪我人を狙うゴブリンを威嚇していた。


「サトゥーは後続にこの状況を連絡、案内しろ。俺達は参戦する。」


「わかりました、あ、これを持って行って下さい!」


タウロは、手持ちのポーションを急造チームリーダーの剣使いに渡した。


「これは、貴重な物だろ、いいのか?」


まだFランクの、稼ぎが少ないはずの子供の所持品だ、リーダーは受け取るのを躊躇った。


「大丈夫です、ぼくの自作のものですが、効果はちゃんとあります。」


自作という言葉に、リーダーは驚いた様子だったが


「わかった。」


と、頷くと受け取り、急造チームを引き連れてゴブリンの群れに突っ込んでいった。


それを見送るとタウロは後続に伝える為、また、走るのだった。

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