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143話 王都までの旅程

タウロとエアリスは、村の外でシンと落ち合うと用意された馬車に乗り込んだ。


「二人とも、無理はするなよ!じゃあ、頑張れよー!」


シンが離れていく馬車に声をかけると手を振った。


タウロとエアリスはそのシンに手を振り返した。


シンとその背後にあるダンサスの村は遠のいていく。


タウロはその光景を見つめながら、オサーカスの街以上のまた長い旅になりそうだと思うのであった。



タウロは、本当は王都まで直行したいが、安全を考えてダレーダーの街経由で、街道に乗ってから王都を目指した。

エアリスと二人、冒険者とはいえ子供二人が馬車を貸し切って旅をしているのは目立つからだ。

街道を逸れると狙われる危険性があると判断した。

それに、そんなに急ぐ必要もない。

ウワーキンの動きは気になるところではあるが、一度、失禁させる程威圧している。

追ってくる可能性は低いだろう。



王都へ向かって5日目の夕方。

街道から少し逸れたところにある小さな街で一泊する事にしたのだが、街の出入り口で予想していなかった追跡者が現れた。


まさかのウワーキンとその部下の兵士三人だ。

殊勝な事に追って来ていた様だ。


丁度、タウロ達が馬車から降りて、出入り口で門番に街に入る許可を取ろうとしていたところだった。


「み、みつけだぞエアリス!婚約者の吾輩がいながら成人前にも関わらず、子供とはいえ男と二人で旅をするとは淑女がする事ではないぞ!だが、吾輩は寛大だ、今回の家出もこの行いも大目にみよう。さあ、ヴァンダイン領に一緒に戻るんだ!」


ウワーキンはそう言うと、兵士達に指示してエアリスを捕らえる様に命令した。


「そうはさせない。」


お呼びでないこの自称婚約者と兵士の前にタウロは立ちはだかった。

そして、何やら唱えると、こちらに向かってきた兵士の1人が仲間に向かっていた。


「うおー!」


兵士は叫ぶと、仲間の兵士に殴りかかる。


「ぎゃ!」


兵士は仲間の不意打ちの拳がまともに顔面に入り吹き飛ばされた。

城門の壁にぶつかると失神してその場に倒れた。


これには、ウワーキンと残りの兵士は驚いた。


「裏切る気か!」


慌てて仲間の兵士を責めるとその兵士を押さえつけにかかった。


このやり取りを見ていた城門の門番は看過できないとみて、他の衛兵を呼び集めると、捕らえる事態になった。


ウワーキンは、自分は貴族だ、ヴァンダイン侯爵家の者だぞ!と叫んで今度は自分を取り押さえようとする衛兵を威嚇した。


「衛兵さん。その男は没落貴族の次男でヴァンダイン侯爵家の者ではありません。言わば貴族を騙る罪人です、捕らえて真偽を確認した方がいいですよ。」


タウロが、衛兵に忠告した。


「こいつ、余計な事を言うな!」


ウワーキンは逆ギレすると顔を真っ赤にしてタウロに掴みかかる。

タウロはその伸ばされた手を払うとウワーキンの足を払いひっくり返した。

そこに衛兵が倒れ込むウワーキンを取り押さえた。


「離せー!吾輩は(将来の)ヴァンダイン侯爵だぞ!」


タウロとエアリスは、ウワーキンの叫びを背に馬車に乗り込むと、街の宿屋に向かうのだった。



「私達、このままここにゆっくり泊まったりして大丈夫なの?」


エアリスが宿屋の食堂でタウロに心配を口にした。


「一度、衛兵に捕らえられたら確認の為に上や、さらにその上の領主に問い合わせたりと時間がかかるだろうから、明日、僕達がこの宿屋を後にした後も拘束されたままだと思うよ。衛兵の前でヴァンダイン侯爵を騙ったのは事実だしね。」


「そうよね?それなら安心よね?」


エアリスはタウロからそれを確認すると、やっと安心してコップの水を飲んで一息つくのであった。



その後の王都までの道のりは、ウワーキンの追跡も無くなり順調だった。


「これから、王都に到着したらどうするのタウロ。」


エアリスはウワーキンの追跡が無くなったので比較的に緊張感はなかったのだが、王都を間近にしてまた、緊張してきたようだった。


「一応、先に手紙を出してあるから、僕の伝手を辿って、当分は色んな人に会う事になると思う。エアリスから聞いた限り、ヴァンダイン侯爵家は力もあるし、尊敬もされてるみたいだから、お家騒動に口を出そうとする人は限られると思うけど。」


「ヴァンダイン家は派閥には属してないけど、だからこそ一目置かれているの。お父様は人望のある人だったわ。今は母親(あの人)がやりたい放題でどうなっているかわからないけどね。」


王都の城門が眼前に近づいてきた。


二人は十日以上の旅程を経て王都に到着したのだった。

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