14話 食の伝道者
冒険者ギルドのすぐ隣のお店は食堂兼酒場として冒険者ギルドが運営している。
普段は冒険者を中心とした関係者のたまり場だった。
そこに、一定量を決めて白パンを提供し始めたのだが、白パンを使った、肉や野菜を挟んだサンドイッチをメニューに追加すると、1週間経たない内にサンドイッチは名物料理になり、冒険者以外の客層も増え、サイーシの街に来たら、必ず食べるべき料理として、その人気は口コミで大評判になった。
勿論考えたのはタウロだったが、マージンを貰うのを条件に、冒険者ギルドサイーシ支部の専売特許にして貰った。
支部長のレオにしたら願ったり叶ったりだが、タウロとしては、目立って目を付けられたくない。
レオもその辺りは理解してくれている。
お互い、美味しい物を食べれて利益もある、ウインウインだった。
タウロは、パンが好きだがそれと同じくらいお米も好きだった、だがしかし、この世界ではお米を食べないらしい、人は!
主にお米である稲は家畜の餌になっていた。
「嘘だと言ってよ…。」
泣きたい気持ちになるタウロだった。
この世界の料理法は基本、焼く、茹でる、煮るである。
炊くとか蒸すとか炒める、揚げるがほとんど無い。
その為、お米は家畜が食べる雑草程度の認識だった。
「これは元日本人として、お米を普及させる義務がある!」
そんな義務はないのだが、タウロは自分が食べたいのでお米料理にも着手した。
「お米?聞いた事が無いな。」
レオに相談したが家畜の餌と聞いてあまりいい顔をしなかった。
なので、まず、米粉を作りそれでレオも大好きなパンを米粉で作って食べさせてみた。
「小麦でできた白パンと違って、もちもちとした食感がまた美味しいな!」
即落ちである。
タウロは米粉パンと並行して、本命である食べやすい丼ものを考えてみた。
箸の文化が無いのでスプーンで食べれる様に魔物の肉をサイコロ状に細かく切り、炊いたご飯の上にのせる、肉汁から作ったソースをかけて完成の単純な料理だ。
簡単だし、食べやすいし、お腹に溜まるし、何よりコストが安い。
これには、懐が寂しい者がまず飛びつき、すぐに口コミで広まった。
こうしてまた、冒険者ギルド運営のお店での人気メニューが1つ増えたのだった。
ある日、メニュー名、『肉丼』にスープを入れてお茶づけ風にさらさらとタウロが食べていると脳裏で世界の声が響いた。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<食の伝道者>を確認。[植物の知識]を取得しました。」
「これは微妙な能力かも…」
正直、ギルド内に閲覧室があり、そこに植物の関連の本も置いてある。
読んで覚えてしまえば、意味が無くなると思ったのだ。
「…あれ?能力が増えた割に頭の中は何も変化がない様な…」
前世の記憶が戻った時は激しい頭痛がしたのだが何の変化も無い。
「とりあえず、植物を見て変化があるか試してみよう。」
中庭の雑草を眺めてみる。
…何も起きない、何も頭に浮かんでこない。
「これはいよいよ使えない能力かも…。」
ふと、思い当たったタウロは物の鑑定が出来る真眼を使ってみた。
すると、雑草に表示が出た!
『ザソ草:
ありふれた草、どこにでも生える雑草。』
「雑草だからザソ草…そのままなのかよ…。」
ツッコミをいれつつ
真眼に植物鑑定が追加された事がわかったのだった。
「前言撤回、これは使える。」
手応えをタウロは感じたのだった。
いつも通り、お使いクエストを達成してギルドに戻り精算してるとネイが
「おめでとうタウロ君、F-ランクに昇格よ。」
と、祝福してくれた。
「次からは、Fランクのクエストもできるわよ、これはFランクのタグね。」
と、ネイから新たなFランクを証明する鉄製のタグを渡された。
いよいよ、タウロも魔物討伐が出来るランクに上がったのだった。