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134話 不猟の原因

タウロの作った簡単な料理は山村の貧しい食事事情を一変するだろう。

ジャガモーやお米は主食になる。

主食があるとないとでは大きな違いがあるのだ。

それが安く入手出来てお腹に溜まり、美味しく頂けるとあれば、今後、村人達の負担は軽くなるはずだ。


そうなるとあとは山村の生活が困窮する原因の1つである不猟問題だが、村人達に心当たりを聞くと特に心当たりはないという。


「魔物が出て村に被害が出る事もたまにはあるが、それはずっと昔から変わらないかな。ただ、獣が減ったのは確かだよ。」


猟師の1人が少し考え込んだが、山には変化が無いと答えた。


「ここ数年、大きな鳥を見かけるよ?」


猟師の子だろう、猟師のうしろにいたタウロとあまり変わらない年齢の男の子が父の裾を引っ張って言った。


「あ?ああ!お前が言ってた”大きな鳥”か。確かに上空を飛んでるのをたまに見かけるが、あれは特に害はないだろ。」


子供の頭に手をぽんと乗せると、猟師は続けた。


「仕留めたいくらいだが、高いところを飛んでるから、狙えないんだよな。がははは!」


猟師は豪快に笑っていたが、タウロはその”大きな鳥”が少し気になった。


少し見える距離が伸びた『真眼』で見る限り、周囲には脅威になる様な魔物はみられない。

村人達が気づいた変化と言えば、その”大きな鳥”くらいしかないのだから、その”大きな鳥”を疑ってみるのが無難だろう。


「空を見上げてたら結構見るよ。」


タウロが考え込んでいたので、子供が何か察したのか、教えてくれた。


「ありがとう。」


試しにタウロは村長宅から外に出て外を見上げてみた。

見上げる空は茜色に染まり、日が落ちようとしている。


「もう、こんな時間か…。今日は、一泊して─、うん?」


見上げていた夕焼け空を突っ切る様に鳥が山の方向に飛んでいく。


タウロはすぐに『神箭手』で得た肉眼でその鳥を見ると距離があり、夕焼けに影が出来てシルエットしかわからない。

だが、そのシルエットは猟師やその子供が言う通り、”大きな鳥”だ。


この遠くを見通す『神箭手』の目で見ればなおの事、その大きさがよく分かる。

あれは、ただの鳥では無い。


何しろそのシルエットには足が4本あるのだ。


タウロはそれが何なのか、それだけで予想が出来たのだった。




翌日の朝、タウロは猟師に先導して貰い、山村からもっと上の山に登る事にした。

エアリスも付いてきた。


シンとルメヤには村の家々の修繕をお願いした。

材木は安くて余っているのだ、使ってぼろぼろの家を修繕しても問題はないだろう。


「でも、なんであそこに行きたいんだい?あそこは標高があるし険し過ぎて、獣はいないし、村の連中でも近づくもの好きはいないぜ。」


「昨日、”大きい鳥”が消えていった場所があの辺りだったんです。」


「ああ!あれか!へー、あの鳥、あの辺に巣を作ってるのか。それを知ってたら、俺も狩りに行ってたかもな。」


「ははは…、それはあんまりお勧めしないです。だって、あの”大きい鳥”は多分、魔物のグリフォンだと思うので。」


「え!?」


後ろを黙って付いて来ていたエアリスが驚いた。


「?グリフォンってのは何だい?」


猟師はエアリスの反応に驚きながら、タウロに質問した。


「グリフォンは縄張り意識が強い魔物です。性格は獰猛かつ勇敢で冒険者ギルドではBランク以上の討伐対象です。怪力なので大型の魔物なんかも掴んで空に飛び上がり高所から叩き落として止めを刺す事もあります。多分、この一帯をグリフォンが縄張りにした事で獣達は恐れて近づかなくなった可能性が高いです。」


「…だからシンとルメヤを連れてこなかったのね。」


エアリスは相手がグリフォンと知ってタウロの行動に合点がいった様だった。

前衛の二人が掴まれて空に攫われたら救い様がないからだ。


いや、君も付いて来なければ、連れてくる気、なかったんだけどね…!


タウロは心の中でツッコミを入れたが、表立っては言わなかった。


「グリフォンは空を飛ぶので、手強い事から冒険者ギルドの討伐クエストでも特別らしく、チーム編成も特殊で大抵Bランク帯冒険者が中心になる事が多いそうです。」


「そうなのか!?」


田舎の猟師でもBランク帯冒険者がいかに凄いかくらいは噂で知っている。

そのレベルが参加する討伐対象という事は、よっぽどの魔物だ。

猟師はこの少年少女で討伐できるのかと、不安になった。


「安心して下さい。一応、勝算はあるので。」


タウロは自信ありげに答えるのだった。

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