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123話 商談での駆け引き

取引当日。


リーダとタウロは取引相手であるキシワンダ商会の本部前に来ていた。

オサーカスの街において、かなりの大手商会らしく、本部建物とそれに付随する建物、それを挟む様に大きな倉庫が二つ立ち並ぶという、敷地面積が広い商会だった。


表に迎えに来た従業員が、リーダ達を迎えたが荷物が無いので最初不審がった。

リーダが連れてるのが場違いな子供だったので、この子がマジック収納を持っているのだな、と推測すると代表の元に人を走らせ、少し待ってから客間に通した。


「ようこそ、キシワンダ商会へ!ワイがこの商会代表を務めるハヨーキと言います。それでは早速や、商売の話、しましょか。」


商会代表を名乗る大柄なひげ面の男に迎え入れられると、挨拶も簡単に取引の話になった。


「で、今日は予定のどのくらい用意できたん?こちらの注文は80やから、40くらいは用意できたと思ってるんですけどな。」


ハヨーキは部下からマジック収納持ちと思われる子供が同行してると事前に報告を受けていたので、子供のマジック収納の容量を想定してそれより多めに見積もってみせた。

それに元々、取引相手が小さい商会である事をわかっていて多めに発注し、用意できなかった事にいちゃもんを付けて値切る算段だった。


最初の取引で今後の相場が決まってくるから、先制パンチを発注段階で繰り出していたのだ。



子供のマジック収納だ、容量は小さいはずだ。

実のところ、目いっぱい見積もっても発注からこの短期間だから生産できても15~20くらいしか用意できていないだろう。


冷蔵庫という商品は、これまでに無い独創的な物である事は確かなので、ここで大分値切れれば、それだけうちの利益は増える、この取引は最初からうちの勝ちだ。


ハヨーキは内心、自分の商会が大儲けする事を確信していた。


「はい?ご注文は80でしたので、80持ってきましたよ?」


リーダがなぜ、半分の40と思ったのか理解できないという顔をした。

タウロは黙って様子を見ていたが、目の前のこの男の気配からずっと勝ち誇ったものを感じてたので、そういう事かと察した。


「リーダさん、この方は、うちが小さい商会なので用意できてないだろうと心配なされたんですよ。」


タウロが丁寧にだが目の前の男の思惑を一部暴いてみせた。


「え!?」


リーダは一瞬、声を上げて驚いたが、そういう事かとすぐに理解してくれた。


「あ、いや、ワイは別に…。しかし、発注通り用意して貰わないとうちは物凄く困るんで頼みますよ?」


ハヨーキは一瞬返答に窮したが、目の前の子供のマジック収納はそんなに大きくないはず、と駆け引きを続行した。


一銅貨でも安く値切ってその分高く売る、それがキシワンダ商会のやり方であった。


「ご安心ください。うちの代表代理であるリーダが申し上げた通り、冷蔵庫80台、キッチリ用意しています。元々、わがマーチェス商会はこういう時の為に取引してる製造元には前もって沢山生産して貰ってましたのでご用意できました。こちらとしては、逆にこれだけの数なので、ちゃんとお代を支払って貰えるか心配していましたが、大きい商会なので安心しました。倉庫も隣ですし80台もの冷蔵庫もすぐ収納できそうですね。」


タウロは、そう言いながら業務用の大きい冷蔵庫を一台、目の前にマジック収納から出して見せた。


「ここで、80台出すわけにもいかないので、商談成立後に隣の倉庫で僕が出しますがいいですよね?」


と、畳み掛ける。


「あ、はい…。」


さっきまでの勝ち誇った態度はどこへやら、タウロの反撃にハヨーキは完全に呑まれるのであった。


その後の、商談はリーダが終始優位に進めた。

価格設定はもちろんだが、商品説明の段階でこの革新的技術を伝える事で、ハヨーキを驚かせた。

このキシワンダ商会はこのオサーカスの街に直営の魔道具専門店を持っていて、ハヨーキはそれなりの専門知識を持っていたのだ。

それだけにこの冷蔵庫が想像の上を行く性能を持った商品である事を知る事になったのだった。


ハヨーキの当初の値切り作戦は発揮される事なく、マーチェス商会側の言い値で80台全て、ちゃんと仕入れる契約を結ぶ事になるのだった。


「では、こちらにもうひとつ『クーラー』という商品がありまして…」


タウロはここぞとばかりにマジック収納から商品を出すと営業し始めた。

ハヨーキはさらに出された革新的商品にまた驚くと食いつき、これも30台購入する契約を結ぶのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] この場合はキシワンダ商会ではなくて、センバー商会とかナニーワ商会にして欲しかったな。 あ、冷蔵庫だからキタームラ商会か。
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