10話 新たな能力
最初の買い物からひと月がたった。
今日が2度目の給料日だ、タウロはウキウキしていた。
お使いクエストで毎日の生活費は稼いでいるが、まとまったお金が入るのはこの日だからだ。
欲しい物はいくらでもある。
もちろん全部買うわけにはいかないが優先順位を付けて必要な物から買う予定だ。
「…あ、そうだ。ドワーフのアンガスさんに改めてお礼を言いに行かなきゃ!」
ナイフは問題なく使用できたので、行く機会を失っていたのだ。
なのでまずはアンガスのところに行ってから、買い物をする事にした。
店先に着くと鉄を打つ音は聞こえるがお店は閉めてあった。
今日はやってないらしい。
どうしようか一瞬迷ったが、今日はお客じゃないからと裏に回って声をかけてみた。
「アンガスさんいますかー?」
鍛冶場のドアが開くと金槌を持った、げっそりしたアンガスが出てきた。
「…誰だ?…人間の子供?もしかしてあの時のわっぱか!?」
「その時はナイフを頂いてありがとうござい…
「そんな事はいい!それより焼き入れというので鉄は硬くなったが折れやすいんだ!どうしたらいい!?」
食い気味に圧の強いドワーフに迫られるタウロ。
「お、落ち着いて下さい!痛いです!」
タウロの両肩を掴む両手に思いのほか力が入り、握り潰しそうな勢いだった。
「ああ、すまん!」
慌ててアンガスは手を離した。
タウロを中に通すと改めてアンガスは説明した。
「あれから試行錯誤して色々やってみたんだが、硬くはなったが折れやすくてな…。」
このひと月、タウロに聞いた焼き入れをずっと試していたようだ。
「焼き戻しというのがあって…
タウロは自分が知っている知識をアンガスに精一杯伝えた。
「…おお!そんな技術もあるのか!ありがとう、光が見えた気がする。わっぱ、いや、師匠と呼ばせてくれ!」
アンガスの喜びは大層なもので拝みかねない勢いだった。
「師匠なんて大袈裟です、ぼくはただ知識として知ってただけですから!」
その時、世界の声が脳裏に響いた。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<熟練者から崇拝される本物を知る者>を確認。[真眼]を取得しました。」
意外なところでの能力ゲットに驚いた。
真眼?鑑定系の能力だろうか?
疑問に思いながらもアンガスがタウロの手を取ってまだ歓喜しているので一度止めなくてはいけなかった。
アンガスに「教えてくれた技術で良い物を作っておくからまたひと月後来てくれ」とお願いされてお店を後にした。
タウロは買い物の予定を一時キャンセルすると真眼を試してみた。
脳裏で『真眼』と意識すると視た物に名前が付く。
詳しく視ようとすると評価も出てくる。
色々確認してみたが、ネイの鑑定の能力と類似する「物」を視るのに特化してるようだ。
人には使えない様だが、かなり便利であるのは確かだった。
「ネイさんには物がこんな風に見えてたのかな?」
これは、自慢したくなる能力だと思うタウロであった。
その後の買い物は楽しいものであった。
この目が無ければ、騙されていたかもしれない商品はスルーして良い物だけを買っていく。
特にお買い得な商品が選べるのは大きい、が勢い余って買い過ぎない様に注意するのは大変だった。
お買い得なのがわかっているのだ、買わないと損な気分になる。
「これは何気に危険な能力だな。」
苦笑いするタウロであった。
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