1話 転移実験成功!?
ぼくの名は佐藤太郎21歳、大学4年生。
子供の頃から異世界ファンタジーものに憧れ、小学校では黒魔術クラブを作り研究に没頭、学校で飼っていた鶏を実験で生贄にした事でニュースになる程の騒ぎを起こした。
これには世間から親もバッシングを受けて子供ながらに猛反省、その後は勉強、スポーツに熱心に取り組み、中高は誰もが知る名門校に進学した。
…というのは表向きで、同校にある黒魔術倶楽部に入部するのが目的だった。
大学は、世間で一流と言われる帝国大学に進学、もちろん目的は黒魔術研究百年の実績がある名門黒魔術サークルに入部する為だった。
こうして青春時代を黒魔術研究に注ぎ込んできたのだが、明日は集大成である異世界転移の為の「魔法陣の研究とその実践」の発表をする場、学祭初日が迫っている。
時計を見るともう、深夜だ。
「流石に明日ぶっつけ本番というわけにはいかないよな。」
魔法陣を描き終わった佐藤はひとり薄暗い部室内で呟いた。
「このサークル100年の歴史とOBが研鑽し残したデータ、それらを元に研究したぼくのこれまでの成果が遂に…!」
佐藤太郎の握る拳にも力が入った。
「とりあえず、正常に作動するか実験するか…」
そう言うと描き終えた魔法陣の前でごにょごにょと呪文を唱え始めた。
「…何も反応が無いな…。」
もう一度、呪文を唱える佐藤。
「…やっぱり反応が無い。」
これまでの努力が報われない気分になった佐藤は泣きそうな思いにかられた。
「…いや、魔法陣の中央に何か置けばいいのかも…」
部室にあったくまのぬいぐるみを持って不意に近づこうとした佐藤。
「おっと危ない。これは、フラグだったな。こういう場合、不用意に中に入ると飛ばされるのがオチだ!そうはいかないぞ、ハハハ!」
1人で盛り上がる佐藤、深夜のテンションは怖い。
部室の脇に置いてあったひと際大きなリュックを佐藤は背負いだした。
「これで、不意に転移しても現代のハイテクグッズで異世界無双できるぞ!」
その重さによろよろしながらも、手にしたぬいぐるみと一緒に魔法陣の中央に移動する佐藤。
すると…魔法陣が輝きだした!
「やった、成功だ!念願の異世界転移だ!」
喜ぶ佐藤。
と、同時に佐藤の意識が遠のいていく。
「あ、これは目が覚めると異世界にいるパターンだな…」
笑みを浮かべながら佐藤は意識を失った。
「…おーい!起きて下さい。」
佐藤を揺り動かす人?
「…うーん。」
佐藤は意識を取り戻しながらすぐに成功を確信した。
「…(起こしてくれる人が女性の声…)。ファーストコンタクトはヒロインのパターンか…!」
白くぼやけてた視界がはっきりしてきたがやはり視界は全体的に白い。
「神様、起きたようです。」
佐藤を揺り動かして起こしていた女性が少し離れたところにいた神様?に報告した。
「…神様?」
異世界ものに欠かせないワードだ。
佐藤はすぐに反応した。
「…あ、これはチートスキルを貰える展開か!」
激熱展開を想像する佐藤に白髪の老人を思わせる容姿の神様?は、
「お主、馬鹿をやったのう。」
と、呆れるそぶりを見せた。
「?」
展開的にはよくぞ来た、的な言葉が来ると思ってた佐藤はきょとんとした。
「お主、地球から来たのであろう?あそこは魔法などというものは担当の神が人類に教えてなかったはずだがな。自力で発見するとは思わなんだ。」
「はぁ。…(そういう事か)、それではここに転移したという事でしょうか?」
周囲を見るとほぼ真っ白い壁に床の空間だ。
神様?の助手と思われる白い服を着た女性が1人、傍に立っている以外は何もない。
「転移?ああ、自力で見つけたのはいいが…」
神様?は手元で指を動かす動作をしながら何か観ている様子だ。
「お主の描いた魔法陣は転移ではなく、転生魔法陣だな。それも、目的先が描いてない中途半端な出来だ。運よくここにこられたのは、神会議で決まった魂リサイクル法が施行された直後だったからだぞ?」
「…転生魔法陣?え?えー!?」
転移はその姿形のまま異世界に移動するが、転生は一度死んで生まれ変わることになる。
つまり…
「お主はあちらの世界では死んだな。大騒ぎになっとるわ。変死扱いで処理されるなこれは。」
ガーン!
佐藤太郎、転移しようとしたら変死しました!
続き読んでもいいかなと思えましたら、
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