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幸せの口付けを、思い出の丘で。

作者: クリオネ

本作をお読みになる前に注意事項

・タイトル回収は致しません

・結構日常とは程遠いです(タグは保険です)

・メインストーリーに入るのが後半です


それでも良いって方はどうぞ!

不幸というものは、いつだって突然なんだ。

どれだけ願っても、悲しんでも、待ってなんてくれない。

そして、僕達人間を嘲笑うかのように、大切なものを奪っていくんだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その日は、いつも通りのよく晴れた日だった。

いつも通り起きて、いつも通り母さんに挨拶して、いつも通り仏壇の中の父さんにも挨拶して、いつも通りご飯を食べて、いつも通り登校する。

いつも通り授業を受けて、いつも通り昼ご飯を食べて、いつも通り帰宅する…はずだった。


「島村!ちょっと来てくれ!」

「え?は、はい…。」


その日は、珍しく先生に呼び止められた。隣には、校長先生がいた。

そして先生達は、酷く焦ったような顔をしていた。


「島村…よく聞いてくれ。本来こんなことを教室で言うべきじゃないんだが…君のお母さんが、急死なさった。」

「…え?」


最初は、何を言ってるのか分からなかった。

だって、朝にはいつも通りの、元気な母さんと挨拶をしたんだ。死ぬ素振りなんて何一つとして無かったんだ。


「う…そ、ですよ…ね?だって…母さん、今朝も…。」

「その辺の詳しい話は流石にここではできない。とにかく、校長室まで来てくれるかね?島村君。」


驚きと困惑の中にいた僕は、その言葉にただ頷くことしかできなかった。

そして、周りを見る余裕がなかったからだろうか。気付いた時には、病院だった。

そして理解が及ばぬまま、先生達と共にとある部屋に案内された。

プレートに書かれていたのは、[死体安置室]。

それを見ただけで、僕は背筋が冷たくなった。

そして、開けられたその部屋の中の真ん中には、白い布で覆われた大きな物体。

しかし、壁に近い場所だけ違う布で覆われていて、それが嫌でも、誰かの死体だと理解するのに時間は要らなかった。

そして、その布が捲られた瞬間、僕に残っていた微かな希望が砕け散った。


「母…さん…!」


それは確かに、今朝まで見ていた母親の顔だった。

僕はただその場で泣き崩れることしかできなくて…そして、しばらく経ったあとに、泣き疲れたのか、そのまま意識が暗転した。


目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。

お医者様からの話によれば、眠ってしまってから3日が経過しているらしい。

起きない僕を心配して、お医者様達がベッドに寝かせ、点滴もしてくれていたそうだ。僕はお医者様にお礼をして、話し合いの末、1度家に帰ることになった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

そして、その日から5日後。

母さんの葬式が執り行われた。

母さんは、営業であちこちを走り回っていたので、取引先の方々などが参列してくださった。

それはとても嬉しかった。母さんの人望が厚い事が証明されたわけで、死んだらここまで悲しんでくれる人がいるんだな、と。


でも、何もかもがそう上手くいく話ではない。葬式が済んで、僕の引き取り先の話になった時、親戚が皆、嫌そうな顔をした。

うちは、父さんが死んで、おじいちゃんもおばあちゃんも死んだ。

母さんと、2人家族だったのだ。

その母さんが死んだ今、僕の血縁は誰もいなくなったわけで…でも、親戚の人達は僕を見捨てた。

簡単な話、仲が悪かったのだ。

子育てをしながらも、バリバリに働いて成功を収めていた母さんが、親戚からしたら面白くなかったのだろう。いつの間にか、腫れ物を扱うかのような扱いを受けていた。


そして、空気を読んだかのように、一人の女の子を連れた男性が、僕に話し掛けてきた。


島村 蛍(しまむら ほたる)君…だね?この度はご愁傷様です。」

男性がそう言って一礼すると、後ろにいた女の子も同じように一礼した。

「いえ...こんなに多くの方に来ていただいて、母もきっと喜んでいると思います。」

「そうだと良いのですが...あっ、申し遅れました。私、沢宮財閥の沢宮 雄一(さわみや ゆういち)と申します。後ろにいるのは娘の沢宮 夢乃(さわみや ゆめの)と言います。どうぞ、お見知りおきを。」


丁寧に挨拶され、僕は慌てて頭を下げて「こちらこそよろしくお願いします。」と返事をした。


「さて、本題に入りたいのですが…見る限り、身の預け先が無いのでしょう?お母さんには私も大変お世話になりましたので…うちで働くという名目で来ませんか?衣食住は保証しますよ。」

「えっと…それは願ったり叶ったりですが…良いんですか?」

「先程も言った通り働いては貰います。まぁ、ちょっと特殊な環境での労働になりますが…。」

「い、いえ!どこだろうと身を置いていただけるなら働きます!よろしくお願いします!」


思わぬ形での就職(?)が決まってしまった。

まあ、好条件すぎるとは思うけど、背に腹は変えられないのだ。


「働くならうちの娘とも仲良くしていただきたい。少し常識から外れてはいますが、可愛い一人娘です。仲良くしてやってください。」

「…よろしく。」

「よ、よろしくお願いします。」


改めて女の子の方を見てみると、その姿に一瞬ながらも目を奪われてしまった。

整った顔、腰の辺りまで伸びた白髪。スラッとしてて身長も高そうで、出るところは出てる。まさに、男子の理想を形にしたかのような子だった。


見とれてしまったことに気付いて慌てふためいていると、沢宮さんから大笑いされて、ちょっと恥ずかしくなってしまった。

結局その日は連絡先を交換して解散という形になった。


後日、送られてきた仕事内容に飲んでいたお茶を吹き出してしまったのはまたのお話。

この作品は、本来連載ものとして出そうと思ったのを、先に短編として公開したものです。

もしよろしければ、評価をお願いします。

ここをこうした方がいいよ、とかのアドバイスなどもあればぜひお願いします。

それでは失礼します。

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