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 (わたくし)は、神獣王国(しんじゅうおうこく)に7人居る王子王女の第5子で第2王女だ。


 すぐ上の兄上様は、ご神託をお受けになられた特別な使命をお持ちのお方。


 すぐ下の弟は、神獣様のお導きを受けた『神獣の守護者』の騎士。王国の要だ。


 間に挟まれた私は、美しくもなく才能もなく、何かの使命を帯びるでもない。


 人気者の婚約者にお座なりな扱いを受けたって文句のひとつも言えやしない。



(あら、小さいのは、おついででしたか?ご無理なさらずともよろしくてよ?)


 なんて嫌味ったらしく言えたなら、どんなにか胸がすっとする事だろう。



 侍女が、先程のお菓子を水色の硝子で出来た菓子鉢(かしばち)に盛り付けて、香り高い紅茶と共に運んで来た。


 白地に金の小魚を泳がせた小粋な茶器も、何々ご令息好(れいそくごの)みとか。世間で持て囃されている逸品だ。


 ご令息方との友情も順調で、有力者からの覚えも目出度い。

 商売人や職人さんにも、顔が利く。


 手に入りにくいと言うこの茶器は、絵付け工房からサンプルとして巻き上げて来たらしい。

 図々しいにも程がある。



 大体センスが悪いわよ。こんな蒸し暑い午後には、爽やかなミントレモンサイダーでも飲みたいものだ。


 私が注文する暇もなく、私に話しかける形をとって婚約者が熱い紅茶を所望したのだ。


「この間お持ちした、ダレソレゴノミのティーセットは気に入ってくれましたか?」


 とかなんとか、恩着せがましい事を言いながら。



 肉厚の磨りガラスに抱かれて、楕円のゼリーが小山を作っていた。透明なゼリーの中には、エディブルフラワーが閉じ込められていた。


 この『花水晶』は、見た目こそ涼しげだけれど。きっと生温いに違いない。冷やして来ればよろしいのに。


 外側は、シャリっとしたお砂糖で固めてある。

 食感で納涼を狙って来るあざとさが、目の前の婚約者と重なって、(しゃく)にさわった。



 私は魔法が苦手だ。ささっと冷やす事など出来ない。

 婚約者なら出来る筈だが。


 満足げに流行りのお菓子を眺めている彼の様子を見ていると、頼む気も失せる。


 これ以上いい気にさせないで置こう。



「如何なされましたか?ご機嫌斜めでいらっしゃる」


 からかうような表情も、媚びているような物言いも、私の心には響かない。


 その眼差しには、何やら肌が泡立つような(すご)みがあった。



(いいえ、ちっとも。何故そう(おっしゃ)るの?)


 なんて。

 貴方の気持ちを尋ねてみたい。

 私を気にかけるようなお言葉も、まるで模範解答のようで嘘臭いのよ。

覚え書き


ダレソレゴノミ=婚約者はミーハー


シリーズ第1作『緑玉に映る少年』のタイム「8人兄妹」発言は、第4作『魔絃の奏者』で回収されています

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