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38話 ドラゴンの襲来(2)

「俺も混ぜて貰うぜ!」

 そう言ってカナミは迫る炎に向かって杖を構えた。

「業火よ焼き尽くせ、バーニング ヘルファイアー!」

 間一髪でカナミの魔術がドラゴンの炎を相殺する。


「どうよ二人とも、俺の魔術はすごいだろ!」

 カナミが得意げにこちらを見る。

「助かったよカナミ!」

 あんな短い詠唱でこんな威力を出せるなんて、僕には真似できそうにない。


「助けてくれたことには感謝するけど――――ドラゴンの炎を火の魔術で押し返すなんて無謀だわ! もし失敗してたらカナミも巻き込まれて死ぬところよ!」

 こんな状況にもかかわらずサラーサはカナミの無鉄砲に怒ってるようだ。

「そう怒るなってサラーサ、とりあえず炎を防げだんたしな」

「炎とか魔術障壁を張って受けとめるべきよ、火の魔術で相殺するなんて聞いたことがないわ」

 風や炎を使った攻撃は広い範囲を攻撃しやすい分、魔術障壁で防がれやすいと講義で習ったことがあった。


「確かにそうだけど今はちょっと障りがあってな」

「障り?」

 何のことだろうか?

「ワンチャンこれで押し切れるかと思ったけど、やっぱ無理っぽいわ」

 そう言うとカナミは顔をしかめ、拮抗していた炎がドラゴンに押され始めた。


「カナミ!?」

「万全の体勢なら余裕でぶっとばせたんだけどな、こんなことになるなら崖下の雑魚なんて無視すりゃよかったぜ」

 そう言えば崖下で盛大に魔術を使っていた。サラーサを追いかけるのにも魔術を使っていたから、魔力の残りが少ないんだろう。


 再びピンチになってしまったけれど、さっきと違ってカナミが炎を防いでくれている今なら僕は自由に動ける。

「美味しいところをやるから、決めてくれよエリル!」

「任せて!」

 炎の向こうにいるドラゴンを見る。

 この距離だと剣でドラゴンを斬りつけるのは無理だろう。しかし、剣がダメでも僕には魔術がある!


 僕は詠唱を始めた。

「クリエイト! フロントハンド コンセントレーション!」

 前に蜥蜴と戦った時と違って、ドラゴンを狙う余裕もある。

「コンプレックス テンリピート ワンテンスマジック」

 急ぎつつも丁寧に魔術を構築し終え、

「ショット ザ サンダーボール!!」

 狙いを定めて雷球を放った!


 好投したボールのように雷球は綺麗に飛んでドラゴンに直撃する――――と思ったその時、ドラゴンの巨体が物凄い速さで動いて雷球を躱した。

 余りの勢いに地面が砕け土が舞う。

「なっ!?」

「マジか!」

 放った雷球がドラゴン後方の地面に着弾して爆発音が響く。

 僕らが呆気にとられたその僅かな間に、ドラゴンは体勢を整え再び炎を吐きかけてきた。


「しまっ」

 魔術を止めてしまっていたカナミが慌てて杖を振り上げようとするも間に合いそうにない。

 僕は即座に後ろのサラーサ達を庇って目をつぶった。


 兄上ごめん! そう思った時、声が響いた。

「カナミ! なにをやっているの!」

 ツエナ先輩の声だ。同時に何かがぶつかる重い音が響いた。


 目を開くとツエナ先輩の展開した魔術障壁が僕らを炎から守っていた。

「助かったぜ先輩!」

「間に合ったからよかったものの、無茶をしたわね」

「すぐ駆けつけてくれると思ってたぜ! ついでにパッと片付けてくれよ先輩!」

「油断しないことよカナミ、こいつは野生の魔獣と違って腐っても対人用に訓練されたドラゴンなんだから」

「もうちょい腐っててくれたら俺でも倒せたかな?」

「その程度で倒せるようになるとは思わないことよ」

 そんなやり取りを二人がしているとドラゴンは炎を吐くのをやめて飛びかかってきた。


 さっきとは打って変わって俊敏に動き回って、ツエナ先輩の展開した障壁を爪で引き裂いていく。ツエナ先輩も負けずにすぐさま障壁を張りなおして対抗する。時折、障壁にドラゴンが尾を叩きつけて耳が痺れるほどの激しい音が響く。

 僕とカナミが魔術で攻撃しても速さや威力が足りず軽く躱されてしまう。


 そんな攻防を数回繰り返して、ツエナ先輩が顔を曇らせる。

「さすが訓練されたドラゴンね、このままだと埒が明かないかしら。障壁が張れなくなる前に、燃える森の中へ駆け込む準備をした方が良いかしら」

 そう言われて振り返ると、いつの間にか森に火が燃え広がって退路を塞いでいた。


 ツエナ先輩が言うように、障壁を失ってドラゴンの攻撃を食らうより、燃える森に逃げ込んだ方が良いだろう。

 ふらつくサラーサをカナミに任せて、気絶したままのメサを背中に担ぐ。

 駆け込む準備ができたとツエナ先輩に伝えようとした時――――暴風雪が吹き荒れて燃える木々を凍りつかせた。


「どこの誰だ! こんな場所で火を放ったのは!!」

 刺々しいスオン先輩の声が響いた。僕はそっとカナミ達の背後に下がる。


「おい、救助に先行したツエナと下級生逹がいるぞ!」

 シナール先輩だ。


「全員無事!?」

 続いてラナティア教授も姿を現した。


「助かった・・・」

 僕がラナティア教授たちの到着に安堵していると、凍りついた木々の間から他の学生たちがわらわらと顔を出した。


「山火事が一瞬で凍りついたぞ!? すげーな」

「見て! ドラゴンよ!」

「本当だ、初めて見た!」

「あの鱗一枚一枚にかなりの魔力があって純金と同じ価値があるんだってよ」

「なんか怪我をしているみたいだけど?」

「さっきの山火事ってドラゴンが? やばくない?」

「お、こっちをむいたぞ?」


 ドラゴンに駆け寄る学生こそいなかったが、この状況は不味い。

「ラナティア教授! ドラゴンが無差別に襲ってきています! 学生達を下がらせて下さい!」

 ツエナ先輩が危険を知らせるが、

「いつも寝てるドラゴンが起きてる! なんて猛々しいの・・・」

 ラナティア教授は両頬を押さえて恍惚としている。


 と、ドラゴンが学生たちに向かって炎を吹きかけた。

「危ない!」

 スオン先輩とシナール先輩が障壁を張って防ぐ。

「うわぁあああああ」

 学生たちは悲鳴を上げて、木々の間へ引っ込んでいった。


 ドラゴンが向こうに気を取られているうちに後ろの森へ逃げ込みたかったが、ドラゴンは炎をひと吹きすると、すぐさま僕らの方に向き直った。僕らを逃がすつもりはないらしい。


 ラナティア教授や先輩たちも状況を察して杖を構えた。

 木々の間にも杖を構えた学生が数人見える。

 低学年の学生ばかりとはいえ、これだけの人数がいたらドラゴンの1匹ぐらい何とかなるだろう。


 そう考えた次の瞬間、ドラゴンは翼を広げて空高く飛び上がった。

表現等の細部が定まらなくて小出し状態に、

しかも似たような展開が続いて申し訳ない。

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