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24話 主

「ひゃあ!」

 突然現れた手にびっくりして変な声が出た。

 慌てて逃れようとするも、それは僕の手をガッチリつかんで離さない。


 と、

「待っていたぞ下僕よ!」「オソカッタナ!」

 声といっしょに魔法帽を被ったメサが姿を現した。

 いつの間にそこにいたんだろうか、全く気が付くことができなかった。


「びっくりした! 居るなら先に声を掛けてよメサ」

「汝―――まあいいか、とりあえず中に入れるのじゃ」

 扉を開けるとメサは我物顔で部屋に入っていく。


「まさか我に開けられぬ扉がこんなところにあるとは思わなかったのじゃ。講義が終わればすぐに帰ってくると思って待っていたが、夕刻を過ぎても帰ってこぬとは・・・待ちくたびれたぞ!」

 どうやら兄上のおせっかいが成果を上げたようだった。


「そんなに前から待ってたんだ・・・晩ご飯はどうしたの?」

「食べておらぬ。そうだな、晩飯とは言わぬが何か飲み食いできる物を用意せよ」

「いいよ」

 非常食のクッキーが幾らかある。

 あと、サラーサから貰った紅茶の葉があるけど、この部屋にはお湯が無い。

 食堂からお湯を貰ってくるには時間がかるし・・・そうだ! 魔術でお湯を沸かせばいいんだ。


「昨日は大変なことになっちゃてごめん、あれから大丈夫だった?」

 いそいそと準備をしつつメサに話しかける。

「恐ろしい目にあったわ! 眠る気もないのに瞼が落ちてくるなどという体験は二度とごめんなのじゃ」

 メサは青ざめて自身を抱きしめる。


「あははは・・・」

 人は死にかけると眠くなるらしい。

 雪山の話に似たようなことを聞いた気がする。


 ポットに入れた水を魔術の火で熱し、沸騰したところで茶葉を入れる。


「明日、アマリア学長に呼ばれてるんだけれど、一緒に行ってくれるよね?」

「わかっておる。行く必要など全くないが、行かぬと後が恐ろしいからのう」


 カップに注ぐと良い感じに紅茶ができた。

 メサはお腹が空いていたらしく、渡したクッキーをせっせと食べている。

 晩御飯がクッキーとか、サラーサに見つかったら怒られそうだ。


「行く必要が無い?」

「どうせ我との契約を継続するか聞かれるだけじゃ」

 契約、手の甲にあった刻印はいつの間にか見えなくなっていて、メサが言うまですっかり忘れていた。

「昨日は何も言われなかったけど、やっぱり解約した方が良いのかな?」

「解約? 汝の魔力は現在進行形で我が与えていることを忘れるでないぞ」

「コイツ、キット忘レテタゾ。若イノニ物忘レガ激シイナンテ、不憫ナ奴ダ」

 はーちゃんの言葉が耳に痛い。

「まあ、汝に我との契約は破棄できないし、契約を破棄する気もないはずじゃ」

 メサはクッキーを食べる手を止め、僕の方を向いて微笑む。


 確かに、契約を破棄したらまた魔術が使えなくなる可能性が高い。

 何の成果も上げられずに国に帰るわけにはいかない。

「そうだね、契約を破棄する気はないかな」


「明日はアマリアの奴にも破棄できないとはっきり伝えよ」

「うん、そう伝えるよ」

 アマリア学長は考える時間をくれたのかもしれない。まあ、破棄できないのなら考える余地はなかったんだけど。


「さて、色々あって我は疲れた、急ぎ寝床を用意せよ」

「わかった。―――ってここで寝るの? 僕のベット以外はソファーしかないけど・・・」

 国賓用だけあって部屋は少し広いけど、ベットは一つだけだ。


「汝、主をソファーで寝かせる気か?」

ってことはメサと一緒に寝ることに?


 彼女の頭から足下までを見なおしてみる。

 メサのサイズなら一緒に寝ても問題ないかな? と言う考えに至るが、何か邪なモノを感じて急いでその考えを投げ捨てる。

「っ、ソファーしかないよ! というか、山の隠れ家には帰らないの? もう暗くて危ないけど、メサなら大丈夫でしょ!?」

「汝がそれを言うか! 汝のせいで、汝のせいで、山の隠れ家がどうなったか!」

 メサがシュンと落ち込む。


「えっ、僕のせいで何かなったの?」

「あの爆発で道がふさがったのじゃ・・・」

「テメエノセイデ帰レナクナッタッテ訳ダ」

「うっ」

それは非常に申し訳ない。


「ただでなくとも馬鹿みたいに魔力を消費してくれおってに、少なくとも道を通れるようにするために馬車馬の如く働いてもらおうか」

 メサは口をへの字に曲げて僕に迫る。なんだろうか、ちょっと可愛い。


 って、来月は大切な試験の月だ。

「・・・せめて来月の試験が終わって勉強するのが少し落ち着いてからでもいい?」

「よいぞ。試験が終わったらすぐに取り掛かるのじゃぞ」

 あっさりと了承を貰えた。

 急いで帰る必要は無いらしい。

「うん、わかった」


「さて、我はベットに・・・」

「ソファ! 毛布は渡すから」

 そそくさとベットに向かおうとするメサを捕まえソファに押しやる。


 ソファーの質は悪くは無いけど、僕が寝るには小さすぎる。

 試験を万全な状態で迎えるためにもベットを譲るわけにはいかない。


「汝、下僕の身で我に逆らう気か?」

「僕の名前はエリル! 確かそんな契約だったけど、メサの言うことを何でも聞くつもりはないから!」

「汝には下僕としての躾が必要なみたいじゃな―――」

 メサの目が赤く光り、僕の背筋に冷たい汗が流れる。


 と、

「我ヨ、ココワソファーデ寝ルベキダゼ」

「えっ?」「なんじゃと?」

 はーちゃんから思わぬ助け舟が出た。


「ハット貴様・・・」

「ソファーデ寝ルベキダ! ソファーデ寝ルベキダ!」

 はーちゃんが大きな声で繰り返す。


「わかった、わかったのじゃ。頭の上で大きな声を上げるでない」

 メサが折れる。


「聞いた通りじゃ、我はソファーで寝る。ハットに感謝するんじゃな」

 言うが早いがメサは渡した毛布を被ってソファーに寝転がった。


「待ってメサ」

 彼女を無理やり起こす。

「なんじゃ、まだ何か文句があるのか?」

「寝る前には歯を磨こうね!」


 言うが早いか嫌がる彼女の口に歯ブラシを突っ込む。

「○×□△!?」

 メサが抗議の声を上げるが何を言っているのかわからない。


 昔、母上や姉上にされるのは嫌だったけれど、自分がする側になると何かぞくぞくするものがある。これは確かにいいかもしれない、メサのためにもなるし。


 歯磨きを終えるとメサは少し恨みがましそうに僕を見つめ、

「うー、貴様もとっとと寝ろ!」

 と一言いうとソファーに転がった。


 確かに今日も色々とあって疲れた。

 今日中に何かしないといけないことがあった気がするけど、僕も寝よう。

年内に1部前半をまとめ終えれず。

次で絞めたい。。。


あと忘れないで下さい。主人公は僕っ娘です。

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