火が殺意を運ぶ
冬の暮れ、警視庁中央署管内で、連続放火事件が相次いだ。そんな中、ついに死者が出た。築地一丁目に所在するアパートが放火され、逃げ遅れた鈴木浩史という89歳の老人が焼死したのである。なので、これからの捜査は、殺人担当の捜査一課15係も行うことになった。さらに、中央所に置かれた捜査本部の看板が外され、新しく「築地1丁目アパート放火殺人事件特別捜査本部」と書かれた看板が掲げられた。そんな中、若い捜査一課の米良勇刑事が、気になる情報を主任の鳥飼冴子に報告した。米良は「例の鈴木浩史なんですが、どうも若い頃は闇金をしていたらしくて、そのせいで自殺した人もいたみたいなんです。」と云った。それと同じく、ベテランの狐崎勉刑事が「その中から気になる人物をみつけました。」と云った。冴子は、「気になる人物?どんな人物なの?」と聞いた。狐崎はボードに一人の男の写真を貼り付けて「山崎文夫という男なんですが、父親が鈴木の会社のせいで自殺しています。」と云った。それに続けて米良も「しかも、つい最近『あいつを殺してやる』 と叫んでいたようなんです。」と云った。刑事になって間もない幸子は「なるほど、米良さんたちは山崎を真犯人と見ているわけなんですか?と云った。米良は幸子の方の話に「アァ、おれはこいつはクロだと思うよ。」と答えた。冴子は「解ったわ 私としては無差別犯行説を推したいけど…」と云った
米良と狐崎は山崎を引っ張って取調をすることにした。山崎は40の手前で焦っていた。山崎は「僕が、鈴木さんを殺したと言いたいんですか!」と云った。米良は「しかしあんたの父親は鈴木のせいで自殺しているじゃないか!」と声を荒げた。山崎は、「そんな、父は鈴木さんの他の会社からも金を借りていましたから…」と云った。狐崎は「じゃァ、『あいつを殺してやる』と云っていたのはどう説明するんだ?」と訊いた。山崎はそれに「そ、それは仕事でイライラしていて…」と云った。取調室から出た米良は「あいつはシロかもしれませんネ。」と云った。それに続けて狐崎が「あんなおどおどしたやつに人は殺せませんよ。」と云った。それに鳥飼は「私もそう思うわ。やはり鈴木はただの被害者にすぎないのかもしれないわね。」と云った。幸子は、それに続けて「これで、捜査は行詰りましたね。」と云った。冴子はそれにため息をついた。
寒く暗い夜だった。連続放火事件の警戒にあたっていた中央署の篠原巡査は同僚たちと離れ一人で暗い歌舞伎町の裏通りを巡回していた。すると、木でできた塀の前に座り込む男の姿を見た。よくみると、その男はマッチで塀に火をつけようとしている。篠原は「君!何している!」と叫んで、逃げようとする男を取り押さえた。「こんな夜中に何をしているんだ。身分のわかるものを出してくれ。」と篠原は云った。男は「出しても、無駄だと思うぜ。」と云った。篠原が「エッ」と云うと男は篠原の手を振り払い、ナイフを見せた。篠原が「何しているんだ!止めろ__」と行ったところで刺された。
篠原巡査の死体は悲鳴を聞いて駆けつけた同僚によって発見された。中央所の捜査本部には新しく「歌舞伎町における警察官被害殺人事件特別捜査本部」と書かれた看板が設置された。そんな中、15係の大久保岬刑事が目撃者を連れてきた。その男は宮本というポン引きだった。宮本は「実は、巡査が刺されたとき、現場から出てくる男を見たんですが…それが、どうも中学生の息子のクラスメートにそっくりだったんです。」と云った。冴子は手帳を取り出して「そのクラスメートはなんて名前ですか。」と訊いた。宮本は「及川直茂という2年生の男子中学生です。」と答えた。幸子は、驚いた表情で「もし、本当に及川が犯人ならとんでもない事態ですよ。」と答えた。冴子は「でも、話を聞いとくほうがいいわね。」と云った。そして刑事部屋に戻った冴子に現場に残された指紋と及川の指紋が一致したという報告が届いた。冴子は「これで及川を引っ張れるわね!」と刑事たちに話した。
及川は朝早く連行された。もちろん一連の放火と篠原巡査殺しの容疑者としてである。及川の取り調べは冴子と幸子が行うことになった。直茂はすぐ自供した。「おれの母親はとにかくエリート人生を送らせたいがために勉強漬けの人生を送らせてきた。だから、あいつのことを忘れるために放火をしたんだ。だがな、築地のアパートの一件で人が死んだときはビビったよ。だがなおれはそれでもあのアマのことを忘れるために放火をしていたんだ。」それに幸子は「篠原巡査を殺したのはどうしてなの?」と訊いた。及川はそれに「決まってるだろ、バレるとやばいからだよ。だがな、おれはポリを殺したとき反省したよ。」冴子が「反省?」と訊いた。及川は「あぁ、あんとき逮捕されてたらあいつをもっと早く破滅に追い込めたのにな、刑事さんもそう思うだろ?」と云うとニヤリと笑った。
及川は、放火と殺人で家庭裁判所に送致される事になった。冴子は、幸子に「さっちゃん、あなたはあの母親についてどう思う?」と訊いた、幸子は、「えぇ、あんな手段はやりすぎですよね。」冴子は「私もそう思うわ。でもあの母親はネットとマスコミにバッシングを受けているらしいわ。それで、今日はあの事件について話し合おうじゃない?」と云った。
続編を書いてみました、また、アドバイスとか報告してもらうと有り難いです。