天才魔術師の赤い部下
「おはよ!あるじ!」
「おはよう、りり」
りりの手を握ったまま寝落ちしてしまったようだ
「やっぱり幼女趣味なんですか?主様」
千代が起こしに来たのか、わなわなと震えてこちらを見ている
「何回も言ったろ。断じて違うって」
「そ、そうですが」
「あるじ、いやがってる。めっだよ。ちよ」
最初はねーねと言ってたのにいつの間にか千代にチェンジしている
可哀そうに
でも、ナイスだ!りり
「そうですが・・・」
そういえば、昨日、風呂に入った記憶がない
「シャワーを浴びに行くか。りり」
「ん」
すると、千代がわなわなと震えつつも風呂場へ同行する
「あるじとおふろはいる」
「だめですよ。りりは主様とではなく、私と入るんですよ」
「りりと入るつもりだが?」
「え?」
と千代は戸惑いつつも目をそらす
「わ、私は、たとえ主様が変態でも地獄まで付き従いますから」
「は?」
「あるじとおふろー!」
*
「おふろ、きもちよかったー」
「そういえば、茜は帰ったんだな。一晩中、お前で遊びそうな勢いだったのに」
「茜・・・桐崎さんなら1時間くらい前に帰りました。なにやら、用意があるそうで」
「そうか」
一時間前まではずっと遊ばれてたんだな
それにしても、用意って?魔導兵の材料でも買いに行ってくれたのかな
家にインターホンの音が鳴り響く
茜か?だけど、外には2人いる
「気をつけろ。茜じゃない。二人いる。」
「了解」
りりの手をつなぎ、魔法の発動の用意をする
扉を開けるとインターホンを鳴らした人物がいない
急に体が重くなった
「春姫かよ」
春姫が、俺の首にぶら下がっていた
「春姫、俺死ぬ。俺死ぬ」
「おくさん!あるじくるしそう。はなして?」
りりが俺のことをかばってくれた
「す、すみません。奥さんですものね。はい。」
春姫が、おとなしく下がった
昔は、よく春姫が俺にぶら下がってそのたびに俺が気絶していた
すこしトラウマだったなぁ
「ありがとな、りり」
「うん!あるじ!だっこ!」
お礼を込めて、りりを持ち上げると
りりは嬉しそうに笑っていた
「主様はいいお父さんって感じがしますね。」
昨日はずっと俺に幼女趣味の疑いをかけていたくせに、清々しく言ってくる
「ごめん、腕が疲れた。おろしていい?」
「もうちょっと」
自分の体の貧弱さをよーく理解し、下ろそうとしたが無理そうだった
「とりあえず、お前の従者がうちの庭の池の中に潜んでるんだが、何とかしてくれ」
春姫がにこやかな顔から真顔になる
こわい
りりも恐怖を抱いたようで、顔が真っ青になる
「では、旦那様、先に学園へ行ってまいります」
「お、おう」
春姫が池の中に腕を突っ込み従者を引きずり出し、学校へと走っていった
「何がしたいんだろうな、あいつら」
「さぁ」
*
で、学校に着いたわけだが
りりと手をつないだまま登校したためか、視線を多く感じる
「聞いた?あの子さ鬼なんでしょ?なんで連れてきたんだろうね」
「しっ。聞こえたら魔導兵にぼこぼこにされるらしいぞ」
「まじか。こわ・・・西園寺家の落ちこぼれなんでしょ。家から追放されたって」
噂は色がついて広まるものなのだな
「あのクソガキども」
「同い年だろ。それに言わせておけ、こういうやつらが群れなきゃ攻撃できない弱い小者ってやつだ」
あれ?ちょっと俺、かっこいい?
千代が怒り浸透するのはわからなくはないが、害をなさない限りどうでもいいんだよなー
暇じゃないし。元から敵しかいないのは覚悟してたし
「ですが、西園寺家の威信に」
「お前は、西園寺家じゃなくて俺に仕えてくれてると思ってたんだがな~」
「あるじ、なんかかっこいい!」
「そうだろう、そうだろう」
りりはいい子だなー、さすが俺の娘・・・じゃなくて召喚獣
「おはよ、空良」
「千秋か。おはよう、教室行かないのか?」
「忘れたの?今日は、召喚獣とタッグを組んでの模擬トーナメント戦。校庭集合って言ってたじゃん」
そういえば、そんなこと言ってた気がする
「私は、自分の教室に戻ります」
少し、落ち込んだ様子の千代が校舎に入っていく
そんなに強くからかった覚えはないんだが
それにしても模擬戦か~殺傷能力が高すぎるから、魔法を使うわけにもいけないし
りりの能力をせっかくだから活かしたいからな
久しぶりに剣でも使ってみるか
クソみたいに苦手だが、どうにかなるだろ
ってあれ?
「りりがいない」
千秋と話してる間にいなくなったのか?
・・・考えてる暇はない
昨日の男みたいなやつにりりがあったらなにされるか分かったもんじゃない
「きゃー、かわいいー」
あっちか!
・・・違う違う、可愛いからってりりとは限らない
ここにどんだけ召喚獣がいると思ってるんだ、かわいい召喚獣がいるかもしれない
まぁ、一応確認しに行くか
「りり!」
やっぱりか
りりがピンクの髪をした小柄な女子生徒に抱き着かれていた
「ってあれ?茜?」
「ん?ああ、幼女趣味の天才君ね」
「このひとやっぱりこわいー」
「怖がってるから、りりから離れてくれ」
茜がぎゅっとりりを抱きしめ、こちらを見る
「えー、なんで千代ちゃんはよくて、りりちゃんはダメなのよ」
「妹と娘の違いだ。妹の恋愛には口を出す権利はないからな。娘は別だ」
「妹にも口を出す権利くらいあると思うわよ」
「実の妹には、気持ち悪いと言われたがな」
あの時のショックは、忘れられない
愛する妹に、うざいし、きもい死ねって言われた時の心の傷は深かった
今でも、実の妹がちょっと苦手だからな
「うちの娘・・・召喚獣を返してもらおう」
「まぁ、いいけど。この子、私の隷属魔法が効かないのよ。」
茜がりりを離すと
りりが俺に駆け寄って、俺の後ろに隠れる
「鬼だからな」
「え?まぁいいわ、授業始まるわよ。行きましょう」
「は?お前も授業受けるの?」
*
「お前ら!今日は、模擬戦トーナメントだ。その前に、転校生を紹介する。桐崎 茜だ」
元猫耳のトラ耳教師が茜を紹介する
あの大きさで、同い年とは思えない
まぁ、それだけではない
茜も俺と同様に、この学校に通う意味があるとは思えない
石川に命令されたか
それとも、石川の配下か
後者はあまり、考えられない
演技かもしれないが石川は茜のことを軽視していた
それに、仮に配下だったとしたらりりが鬼だということを真っ先に伝えられるはずだ
だが、あの反応は知らなかったに違いない
茜が敵でないことを祈るとするか