天才魔術師の歌う鬼
「千代。索敵魔法にかかった」
家の前で、千代とりりに警告する
「こわいひと?」
「ああ、多分な」
「私が先行します」
千代がゆっくりとドアを開け、中をうかがう
「移動した。研究室の方だ」
「行きます!」
その言葉を聞いた瞬間、飛び出していった
一応、実験が盗まれぬように研究室にはいくつか罠を張ってある。
だが、それに引っかかった形跡はない
結構な手練れのようだ。
「りりは、コード登録済ましてないからな。罠を解除する。千代、行ってくれ」
「了解」
俺達は罠にはかからないようにコードを設定している。
前は、いちいち解除していたが突然来た妹が罠にかかってしまったことがあったから。
今後、そういうことがないようにって父に言われて、3か月ほど使って編み出した
いちいち、張りなおさなくて済むから楽にはなった
千代が走って研究室を開けると研究室の扉をバッと開く
すると、千代の悲鳴が聞こえた
「大丈夫か!?」
罠を解除し終わり、悲鳴を出した千代がいる研究室にりりと飛び込むと
そこには、千代を押し倒しているピンク色の髪をした白衣を着た幼女がいた
「ねぇ今日って、厄日か何か?」
「あのひとだれ?」
りりがピンク幼女を指さす
「知らない人だ。りりは下がってろ」
「わかった」
ピンク色の髪をした少女は千代を押し倒したままの体勢で第一声を放つ
「今日派遣された桐崎 茜よ。よろしくね」
えーと。聞いたことあるような名前だな
確か、石川が言ってた派遣される人物ってこいつか
幼女の見た目に反して、大人っぽいなこいつ
「で?お前は何してるんだ?」
「かわいい子を見つけたら押し倒すわよね?」
「ちょっと何言ってんのかわかんない」
茜が千代に頬ずりをする
「主様!助けてください。この者から変態の匂いがします」
「見ればわかるだろ。ってか抜け出せないのか?」
「隷属魔法のせいよ。私は、隷属魔法が得意なのよ」
茜が、立ち上がっても千代は動けないままだった
「あなた、隷属魔法苦手でしょ。罠に隷属魔法が含まれてなかったわ」
「まぁ」
「なるほどね、だから私が」
茜が考えるそぶりを見せてから、千代に頬ずりを始める
「まぁ、いいわ。こんなかわいい子がいるから」
「なんで、俺はお前が必要なんだ?隷属魔法なんか・・・」
茜がさっきまでおっさん臭い顔だったのに一変して怖い顔になった
「あのね、隷属魔法なんかって言うけど、あなたが作った魔導兵にも隷属魔法がついてないじゃない。魔導兵が暴走したときどうするのよ。それに、魔法の開発もしてるって聞くけど全部が隷属魔法をつかってないじゃない。誤射でもしたらどうするつもりなの?手加減もできないんじゃ実践でしか使えないってわかってる?練習試合とかじゃ使えないのよ?確かに強力だし使い勝手もいいし才能もある。そこは認めるけどね。あなたの魔法は危険なのよ。殺し合いの場でしか使えない」
茜はゆっくりとダルそうに話してはいたが怒りを感じる
「このひとこわい」
「俺が悪いんだ、怖い人じゃないよ」
「いいひと?」
「それはわからない」
茜が俺の白衣の襟を掴み引っ張ってくる
「あなた、幼女趣味なの?」
「いや、断じて違うぞ?」
「とにかく、隷属魔法を馬鹿にすることは許さないわ」
「はいはい」
白衣を離すと、千代を抱き枕にして眠ってしまった
だっるい魔導兵づくりを手伝ってくれるのはうれしいけど
こいつ、俺と同じ匂いがする
「りり、何が食べたい?」
「あいすくりーむ!」
「晩御飯だよ。千代は動けなさそうだからな」
「あいす」
りりが名残惜しそうに悲しい顔をする
晩御飯にアイスは嫌だなぁ。
まぁ、いいか
「何のアイスが食べたい?」
「ちょこ!」
暗い表情から満面の笑みに変わり、飛びながら喜ぶ
かわいいな
いや、幼女だからとかじゃないくて純粋にだな
なんで、一人で言い訳してんだろうな俺
りりと二人へコンビニへ向かう
「なぁ、りり、召喚される前とかの記憶あるか?」
「えーと、わかんない!」
「そうか」
他の人たちなら使えねーなどと心の中で不満を言うかもしれないが
あまりのかわいさに頭を撫でてしまう
「あるじ!もっと!」
「はいはい」
「えへへ」
嬉しそうにするりりを撫でているといつの間にかにコンビニの前に着く
その着いたコンビニのガラスは血で染まっていた
「りりはここで待ってろ」
それに告げた俺は、強引に自動ドアを破り、中へ侵入する
するとそこには、二つの首を持った獣がいた
「魔獣!なぜここに」
魔獣が俺にとびかかり、押し倒されてしまう
「あるじ!」
りりが不安そうな声で近寄ってくる
「来るな!」
やばいなこれ、重すぎだろ
びくともしねぇ
「《♪♪♪♬♪♪♬♪♬♪♪♪♬♪♪♪♬》」
理解できない言語の歌だがそのきれいな歌声が鳴り響くと、《絶望》の魔法属性の俺でも90kgはある魔獣を持ち上げることができた
歌を歌っているのは、りり
人を食らいつくす群れないはずの鬼のりり
支援魔法など使えるはずがない
「悪いな、ちょっと帰ったらやることができた。悪いな。お前は死んでくれ。《火竜》」
大きな魔方陣から竜の形をした炎を二体だし、俺の頭上で竜族の服従の意味する舞を二体で踊る
そして、手を振りかざすと
魔獣を抵抗する暇もなく焼き尽くし、チリにした
「こんなの人相手じゃ使えるわけないな。隷属魔法、茜ってやつの言う通りマスターしなきゃな」
そうだ!おそわれたひとが・・・
「《♪♪♪♬♪♪♬♪♬♪♪♪♬♪♪♪♬》」
りりがまた歌いだした
すると、だんだん襲われた人の傷が治っていく
「すげぇなお前」
なぜ、鬼が仲間を助けることに特化した支援魔法なんか
しかも、歌の魔法なんて聞いたことがない
「あるじのどらごんさんもかっこよかった」
かわいいし、まぁ、いっか