天才魔術師とお家
「それで、田沼は今どうしていられるのですか?」
「ん?おそらく、謹慎中だと思うが」
模擬戦であったことを話すとそそくさと千代が武装し始めた
「ちょっと待て、夕食はどうする」
「冷蔵庫に保存しておきました。温めて食べてください」
千代がにこやかに答えると胸に飛び込んでくる
「主様、お許しください。二度も主人を殺されかけたのです。何もできないのはつらいのですよ」
俺は、千代を持ち上げ、寝室へと歩く
「え?あ、主様?だ、だめでございます。主従の関係でございます。い、妹君に言いつけますよ。」
「嫌か?」
「い、嫌では・・・ありません。ですがッ」
催眠魔法をかけ、ベットに寝かせる
「許せ。こうでもしないと、お前は俺が止めても行くだろうからな」
さて、俺も寝るとするか
千代の頭を撫で、自分のベットに潜り込む
*
目覚めると千代が俺の手を握っていた
どういう状況だ?これ
千代にぶたれる覚悟をしていたのだが
「あ、主様。昨夜の記憶が私にないのですが、私の身はどうなってしまったのですか?」
「お前に催眠魔法をかけさせてもらった。すまないな」
「つまり、主様は私が寝ている間、私の体を蹂躙していたということですね。ひどいです。無理やりなんて」
「何もしてないわ!」
千代が涙を浮かべるので本気で焦る
「わかっていますよ。主様がヘタレなのは知っていますから。」
「なんか複雑だな」
ウソ泣きかよ。ちょっとビビった
「昨夜、私に嫌かどうか尋ねたのはなぜですか。もしかして、私の純情を弄んだのですね」
「いやいやいやいや。そんなわけないだろう。俺と一緒に生きるのは嫌かってことで」
どうすればいいの
一方的に俺が悪いんだけど、絶対に勘違いしてるよね千代
「弄んでるじゃないですか」
「なぜ、これが弄んでることになるんだ!俺は千代に生きてほしいだけだ。」
「む。ずるいですよ」
「いや、なにもずるくはないだろう。俺が悪いのは明らかだが弄んでなんかいない。俺はお前が大切だ」
「口説いてるんですか!?」
「なぜだ」
などと言い争いをしている中、時刻は8時を指していた
思ってることをそのまま伝えているというのに何故怒っている
コンコンというドアのノックが静寂を招いた
「まだ?早くいきたいんだけど」
いいタイミングに爆睡娘・・・千秋が来てくれた
「通い妻?」
全然いいタイミングじゃなかった
「違うぞ。千代。デュオのパートナーでな」
「結婚のパートナー?」
「どうやったら、そう聞こえるんだよ」
「あたしがそいつと結婚?ありえないこと言わないでよ。とりあえず、二人とも着替えてくれば?」
千秋に千代のこと話しておいてよかった
事態は収拾できそうだ
「わ、わかりました」
千代は、着替えと弁当を俺に渡して着替えに行った
俺も着替えるか
「ちょっと待っててくれ。千秋」
「いいよ」
*
「待たせたな千秋。千代」
千代はまだ拗ねている。
あのままかたき討ちに行かせて帰ってこないとかいう未来よりは全然ましだ
「千代。そのすまなかった」
「最初から言ってほしかったです。お茶いれますね」
「ああ」
本当に悪かったとは思う
「それで?聞きたいことがあるって言われて、来たもののなんで喧嘩してたわけ?」
「それはまた今度話すとして、聞きたいことっていうのはな。田沼について知ってることはないか?できるだけ多くの情報が欲しい」
「まぁいいけど。ほぼ知らないに等しいわよ?」
紅茶を受け取った千秋は、紅茶をすすりカップを置く
「田沼の魔力タイプは《勇敢》よ。今のところ分かってるのは、あなた以外には優しくて、強いからファンクラブもあるようなモテモテの気に食わないようなやつ」
「そうか。ありがとう」
「まさかそれだけのことを聞くために呼んだの?」
「そうだが。電話だと、石川に盗聴される可能性があるからな。それと、魔導兵制作ちょっと付き合ってくれるか?」
「え?いいの?」
嫌な顔をされると思ったら、うれしそうな顔をしている
あんなつまらない研究。政府の命令がない限りやらない。楽しみになるようなことは何一つないと思えるのだが
「ここに《疾走》の術式をかけてほしいのだが」
俺は、魔導兵の核となる魔道紙を渡す
「そんなことでいいの?」
「ん?ああ。この紙があれば術式に対して魔導兵が壊れないように調整するだけだからな」
「そんなに簡単なの?」
「馬鹿言うな、この術式を見てだな、鉄、ガラス、プラスチック、あとは魔術回路の調整。完璧に合ってないと崩壊する。だから、形も材料の量も正確に合わせなきゃいけない。しかも、そのうえ、魔力の再生装置も作らにゃあかん。面倒でもお金もらってるからにはやらないと殺される」
と愚痴ったら千秋が笑いだした
「だれもが魔導士なら、あこがれる魔導兵作りが面倒って面白いね。空良は」
え?こんなのやりたいの?世の中の魔導士
暇なの?
「ねぇ、空良。ぁああ」
千秋が千代の顔を見て顔を青ざめる
「あ!私、用事を思い出した。帰るね」
「え?おう」
走って帰って行ってしまった
「主様?あのお友達の方、主様のことを空良とよんでいらっしゃいましたが、何のお友達ですか?」
千秋が怖い笑みを浮かべていた
これにビビったのか
今日の晩御飯は、ミノムシでした