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··3.2.1.ビーッッ!!


タイマーの音が体育館の中に響き、試合の終了を示す。コート内で、ボールを奪い合い、シュートを打っていたメンバー達の足が止まった。



「10分休憩したら、メンバー入れ替えてもうひと試合するぞー。しっかり水分補給とっとけー。」

「まじあっちぃ〜」

「ボトルちょーだい〜、喉渇いた〜、」


コーチが皆に指示すると、それぞれが水分補給をしたり、タオルで汗を拭いたりしている。


今、この体育館はバスケ部が使用していた。その中で柚は、バスケ部のマネージャーとしてボトルを準備したり、スコアを付けたりと忙しく動いていた。



「丸山、ちょっとスコア見せて。」



柚の後ろから、新谷が声をかけてきた。



「ああこれ?」


スコアを付けていたノートを見せると、新谷はうなづいて柚の隣へと歩いてきた。


「今の試合のスコアどれ?」


「それは、このページ。そんで、新谷のスコアはこれね。」


ノートに記入した新谷のスコア部分をトントンッと指で示すと、ノートを覗き込むようにグッと近づく。そして自分以外のスコアにも視線を動かし、シュート率を確認する。



新谷雅臣。


バスケ部キャプテン。ポジションはガード。身長は175センチとままあまあの高さである。髪は、黒髪短髪で、黒い瞳はくっきり二重。意思の強そうな印象をもつ顔の持ち主。


性格は物静かだが、心に秘めた思いとか、熱意とかが時折感じられて、このバスケ部の中で1番バスケが好きな人だと柚は思う。



「やっぱスリーポイントが調子悪いな。」


深く息を吐くように新谷がつぶやくと、シュートフォームを再確認するように右手を上に上げてクイクイっと腕を動かす。


「前の記録と比べるとそうかもね··。どこか体痛めてる?」

「え?··あー、少し腰を痛めてる感じだな。」

「救急セットに湿布あるよ?貼っとく?」


そう言いながら救急セットの方に歩き出すと、その後ろを新谷も着いてくる。救急セットを開けると絆創膏やガーゼ、ネットなどが揃っており、その中で湿布を探す。



「はいこれ。とりあえず貼っときな。」


柚は大きめの湿布を1枚取り出すと、新谷のほうへ差し出した。


「それ、丸山が貼ってくれないのか?」

「え?そんくらい自分で貼りなよ」

「腰ひねりながら湿布貼るのが痛いんだが?」

「···」

「中心より右よりに貼ってくれ。そこが痛いんだ。」



新谷は湿布を貼る場所を指示すると、右腰側の服をまくり上げ、チラっと柚を見下ろす。


···いや、別に湿布張るくらいどうってことないし?少し見えた腹筋とかで、鍛えてある男子の身体だ、って思ったりして緊張なんかしてないし?


うん。うん。大丈夫。大丈夫。



柚は思っていることが表面に出ずらい人間であった。自分の中では驚いたり、嬉しかったり悲しかったりしていることであっても、それが分かりやすく顔の表情に出ることはなかった。そのため、他の人から柚を見ると、大抵のことでは動揺しない、そんな人間に見えていた。


また、自分の想像をこえるような事が起こった場合、柚は考えることに集中してしまい、無表情になってしまう性格でもあった。とことん、感情を表に出すのがヘタである柚であったが、心の中ではこんなに驚いていますよ、っていうのを他の人に知られるのも、とくにしたいわけではなかったため、柚は弁解することもなく今まで生活してきた。


そういう面倒くさい性格ゆえに、たまに自分でなんでこんなことに···って思う事態も発生するのだが、それを他の人にはバレないようにやってしまおうと思って、それができてしまう柚であった。


しょうがなく柚は湿布のフィルムを取り、新谷の腰に湿布を貼ろうとした。




「あ、ちょっと待って。やっぱ体育館の外で貼ってくれ。」


そう言って柚の腕をガシッと掴んだ新谷は、柚を体育館の外へと連れて行った。


「··え?なんで外?」



たかが湿布を貼るだけ。なんで外に出る必要があるのか?柚が新谷に聞き返すと、




「ああ、湿布貼るついでに少し腰の上に乗ってくれ。」




そう言って新谷は体育館外のフロアでうつ伏せになった。














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