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不良のお前を終わらせてやる!  作者: 渡邉鍋大
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山田琴葉とサッカーボール5

 あれから一週間が経った。

 あれからというのは、もちろんあの無意味極まりないサッカー対決からだ。


 時刻は十二時四十五分。

 ちょうど昼休みに入り、俺が相変わらずのヒロイン席で、相変わらずの主人公席に座る琴葉に声をかけようとしたとき、


「こんにちは! 先輩たち!」


 勢いよく開け放たれた窓と元気のいい声。

 佐藤くんが、窓から侵入してきた。

 ……一応言っておくがここ三階だよ。佐藤くん。


「どうした? 俺たちに何か用か?」


 俺は佐藤くんの強襲により情けなく椅子から転げ落ちた琴葉に代わり、とりあえず挨拶を交わす。


「はい、先輩たちが報告あります。実は先日、俺たちサッカー部は大きな大会に出場したのですが……」


 侵入早々。そう言って佐藤くんがおもむろに視線を落とした。

 俺は次の言葉を察した。


 あぁそうか。

 本当にごめんね。

 主にこの琴葉バカのせいでひどい成績に終わったんだろうね……。


「全国大会優勝しました!」


 うそーん!


「あれもこれも全部先輩たちのおかげです。俺もう十一人抜きなんて朝飯前です!」


 お前もうプロ行け。


「ダメね、その程度で喜んでちゃ。私なら百人くらいは朝飯前よ」


 そしてお前は『イナズマジャパン』に入れ。サッカーで宇宙を救ってこい。ったく、いきなり立ち上がって何言ってんだよ。

 ……お前なら本当に朝飯前にやってしまいそうで怖いわ。


「あ、あの」


 琴葉の復活をきっかけに佐藤くんが琴葉を見つめる。キラキラした瞳である。こういうときの佐藤くんは少し苦手だ。というより厄介だ。何か突拍子もないことを告げてくる。

 琴葉もそれを察したのだろう。おもむろに俺の背後に回り込んできた。

 

「琴葉さん!」

「ふぁ! な、何?」


 琴葉が頓狂な声を上げる。


「俺、ずっと思ってました」

「な、何を?」

「何って、決まってるじゃないですか……」


 佐藤くんが真剣な面持ちになる。

 お、この状況はあれか、あれなのか、愛のこくは――


「俺たちのコーチになってください!」


 まぁ、佐藤くんに限ってそれはないか。

 面白い展開にならず、俺が残念がっていると、また窓の向こうから人がなだれ込んできた。無論、サッカー部の連中だ。しかも全員。

 ……もう一度言うけどここ三階だよ、君たち。


 教室になだれ込んできた連中が口々に言う。

 そして、琴葉はその全ての言葉をきちんと返す。


「琴葉さん、コーチになってください! 俺たちあなたの妖艶なまでの『タマさばき』に感動したんです!」

「口を慎め! エロい意味に聞こえるだろ!」

「琴葉さん、僕たちにはあなたが必要なんです! もうあなたなしでは生きていけないんです!」

「誤解を招く言い方をするな!」

「琴葉さん好きです!」

「えっ! ……そ、そんな急に言われても(ぽっ)」

「あなたのプレーが」

「だから紛らわしいんだよ!」

「「「琴葉さーん!」」」

「く、く、く、来るな――っ!」


 琴葉が全力ダッシュで教室を飛び出していく。

 それに続くようにサッカー部の連中が琴葉を追いかける。

 おいおいお前ら、昔の青春ドラマかよ……。


 ……んでも、まぁ、


 どうやら、なんやかんやで山田琴葉は不良から脱却しつつあるらしい。

 その証拠にほら……、


「助けて――っ! 若葉――っ!」


 あの山田琴葉があんなにも情けなく喚いているではないか。


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