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魔王成行  作者: 柊 茉莉花
第一章
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四、魔王の重圧

 エミルとシルシィはカエデの上に乗り、雑木林の中を駆け抜けていく。

 カエデは結構なスピードを出しており、エミルは掴まっているのがやっとで、ゆっくりと周りの風景を観ている暇はなかった。


 しかし、この世界は『ブレイブ』の世界ではないと判断するには、それでも十分すぎた。

 それは、ゲームの世界にしてはあまりにも広すぎたからだ。

 異世界の可能性がより一層高まり、エミルは内心ワクワクしていた。

 この状況に陥ってからまだ、そんなに経っていないが、エミルは早くも順応しつつあった。


「ルフェリアが楽しみだな」

「エミル様は何度も行かれているのでは?」

「あ、ああ、シルシィと行くのが楽しみだということだ」

「そ、そんな、エミル様、もしかしてこれがデ、デデ、デートというものでございましょうか!」

「そ、そうかもな」

「あの……わたくし、初めてですので優しくしてくださいませ」

「ああ、俺の半分は優しさでできてるからな」


 ものすごく適当に答えたエミルだったが、シルシィは気にも留めず、妄想の世界に入っていった。

 シルシィが手を頬にあてながら妄想に浸っていると、突然前方へ吹き飛んでいった。


 カエデがが急に止まったからだ。


「カエデ! 何をするのです!」

「だって……お師匠様に失礼なことを……それに……そんなんで落ちるとは思わなかったし……」

「全く、あれ? ところでエミル様は?」


「え?」


 カエデとシルシィが辺りを見渡すと、エミルは木に刺さっていた。


「いやー、突然木登りがしたくなってな。たまにすると楽しいものだな」

「樹木の頂点さえ極めようとするお姿、心服致しました」

「楽しそうですね、あたしもやろうかな」

「いや、先を急ごう」

「そうですよね」


 そうして、またカエデの上にエミルとシルシィが乗り、走り始める。


「ところで他の六魔将はどうしている?」

 エミルがシルシィに訊いた。


「アリアスティにて各々過ごしております」


 六魔将とは、アリアスティの幹部であり、番人である。また、戦闘時において、それぞれが管理する兵の統率を担っている。

 シルシィもその一人であり、他に五人の魔将がいる。


 そして、その六魔将の上に立つのが魔王である。打ち付けにエミルはその、恐ろしい魔物達の支配者となってしまったのだ。


「そうか、俺がアリアスティに戻ったら全員集めてくれ」


 先に全員と顔だけ会わせておけば良かったと、エミルは今になって気付いたが、時、既に遅し――


 まず、アリアスティにいる全員と意思の疎通を図り、このおかしな状況を整理する方が賢明だったが、下界の様子が気になり、エミルは直ぐにアリアスティを飛び出してしまったのだ。


 行動力があると言ったら聞こえが良いのだろうが、思い立ったが吉日とばかりに、直ぐに行動を急いでしまうのがエミルの悪い癖であった。


「御意のままに」


(シルシィは慕ってくれているみたいだが、他の奴らどうなのだろうか……今更だが俺に魔王が務まるのか? あんな恐ろしい奴らが部下としてつくのか……弱みを見せたら喰われそうだな……)


 この世界に来られたことに関しては、エミルにとって喜ばしいことではあったが、良いことばかりではなく、当然、不安もあった。


 六魔将は言うまでもなく、エミルが作ったキャラクター達だ。


 つまり、その強さはエミルが一番良く知っている――この世界ではどの程度強いかは定かではないが――のだ。


 強さもさることながら、一癖も二癖もある面々を扱いきれるのかがエミルは不安だった。

 こんなことになるなら、もう少し普通のキャラクターにしておけば良かったと、エミルは心底思ったが、性格が、『ブレイブ』と同じとは限らない。


 ただ、シルシィをみる限り恐らくは『ブレイブ』に準拠しているようだが……


 そんな風にこれから先のことをエミルが案じていると、カエデが口を開いた。


「見えてきましたよー」

「あれがルフェリアか……ここからは歩いて行こう。」

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