序章
初めまして、柊茉莉花と申します。
この度はご来訪頂きまして、誠にありがとうございます。
拙い文章で、至らぬ点があるとは存じますが、温かい目で見守ってくださるよう、お願い申し上げます。
それでは、これから宜しくお願い致します。
※物語の大筋には影響のない程度に加筆訂正する場合がございます。
「お目覚めですか?」
男が目覚めると、ものすごい反応速度で女が男に話しかける。
「……」
まだ寝ぼけているのか、男は声が発せられた方を見向きもせずに黙っている。
「まだご気分が優れませんか? エミル様」
エミルという名前の男は、その女の顔を見て、驚愕の顔を浮かべた。
エミルを心配そうに見つめるその女は、あまりにも美しい姿をしていた。
顔立ちが美しいのは勿論だが、特筆すべきは、異様なまでの白さである。
真っ白な腰まである長い髪、真っ白な肌、真っ白なドレスを着ており、全体的に、純白の色に包まれているせいか、銀色に光る瞳が一際目立って見えた。
一度その瞳に捕らわれたら、吸い込まれてしまいそうな妖艶さが漂っている。
背格好は一七〇センチ前後で、細身だが、その細さが故に大きい胸の膨らみをより一層に強調しているように見える。
また、何故か背中には、折り畳まれてはいたが、白い翼がついていた。
天使のコスプレをしているのだとしたら、これ程完成度が高いものはないだろう。
本物の天使だと言われても信じてしまい兼ねない程である。
しかし、エミルが驚愕したのはそこでないらしい。
「お前は、まさか……シルシィか?」
「はい、左様でございますが、改まって如何なされたのです?」
どうしてこんなことを訊くのだろうと、質問の意図を解り兼ねたのか、シルシィはきょとんとした顔をする。
「どうしてお前がここにいるのだ!? そもそもここはどこだっ!?」
「落ち着いてくださいませ。エミル様。ここはわたくしの部屋でございます」
「そんなことはどうでも良い! ここはどこだと訊いている!」
「この城についてでしょうか? ここは空中城塞アリアスティにございます」
「空中城塞だと!? まさか、そんなことがありえるわけ――」
ここで初めてエミルは周囲確認する。
部屋は組積造でとても広く、置かれている家具も高価そうなものばかりであり、エミルが寝ているベッドも豪奢な天井がついており、天井からはピンクのカーテンが掛けられている。
更に、一人で寝るには十分すぎる程の広さがある。
ここが仮に、お姫様の部屋だと紹介されても疑う人はいないだろう。
ドアの側ではメイドが数名、手を前に組んで、横一列に整列しており、エミルがそちらに目をやると一糸乱れぬ動きで、綺麗に一礼した。一通り周りを確認し終えたエミルは、窓の方へ駆け出した。「如何なさいましたか?」などと言っているシルシィを無視し、エミルは身を乗り出すように外を見渡す。
「何てことだっ……。これは一体……」
そこには、綿菓子のような雲が辺り一面に敷き詰められ、天国と見紛う如き風景が広がっていた。
雲と雲の狭間には透き通るような青色の空が見え隠れしていた。
エミルは信じられないものを見て、目の前の雲以上に、頭が真っ白になったが、窓から離れ、近くにあった椅子に座り、今自分の身に起こっていることを整理しようとする。
最後の記憶は……