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 アイネにさよならと言われた日以降も俺は領主の屋敷に行った。しかし、そこにはアイネの姿はなく、俺は本当にアイネがもう俺の前に姿を現さないのだと理解した。しかし、いくらそうだとわかっても、俺はアイネの事が忘れれるわけではなく、俺はそれでも毎日アイネの姿を追い求めて領主の屋敷に行った。それでもアイネに合えない日々。いっそのこと、玄関から堂々とアイネに合わせてくれと言ってやろうかとも思ったが、そんな事をしても追い払われるだけだろう。

 俺はアイネに会えない日々に悶々とし、もう抑えきれなくなってきていた。

「アイネを救い出そう……」

 俺はそう思い立った。そして、必要なものを用意する。

「食料、武器……他に何かいるかな?」

 無い頭でいろいろ考えたが、他には特に思いつかなかった。俺の計画はこうだ。

 先ず、アイネを救い出す。必要なら武器で戦って、アイネを救い出す。その後、アイネを連れて逃げる。そして、アイネが見たがってた海を探す旅にでる。もう、これ以上にない完ぺきな計画だろう。よし、まずは武器だ。

 武器はなるべく大きな強い物が良いだろう。出来れば大剣なんかがあればいい。これは街の武器屋にあるだろう。それを盗んで来よう。食料はいつものパン屋と、それ以外にも必要だろう。俺は計画を決めると、とにかくそれを大急ぎで集めた。

 その間にも俺は領主の家に行き、情報を集める。警備の位置、警備の状況、アイネがいると思われる部屋がどのあたりか、領主の部屋……そうやって、領主の屋敷の情報を集めている時に一度警備の人間と至近距離ですれ違った。もちろんばれる事は無かったが、見回りの兵達の話し声に耳を澄まして聞いた。

「なあ、……知ってるか?」

「何の事だ?」

「うちの……の変態……の話さ」

「なんだ…………で、今度……の変態……んだ?」

「いや、俺も……見たわ……ないんだがな。……まあ見せ…………と言わ……断るが……ちょっと前……奴隷いる……」

「ああ……たな。それ……うか……のか?」

「いや……、ちょっと…………女の子が一人…………その……見ないな…………だが、どうやら雇い主………監禁……るみ……んだ」

「うーん……あの変態…………確かに夜見回……、領主……変な声が……るが……普通にお楽しみ……、子供を……雇い主……ったら…………ところだな」

 女の子? 変態? 監禁? 俺はその所々聞こえる話を聞いて、アイネの事だと思った。アイネはここの変態領主に何かされている! 早く助け出さないと。見回りの兵士の話を聞いて俺は焦った。もうぼやぼやしてはいられない。まだ全部は調べ終わってはいないが、次の警備の兵が少なくなる時に実行しよう。アイネを助け出して海に行く。俺はそれだけを考えていた。

 そして、準備を終え明日俺は計画を実行する。少しでも早くアイネを助け出さなくては……


 俺は変態の領主からアイネを救い出す為に計画実行の夜、領主の屋敷に向かう為、盗んだ大剣を少し引きずる様に屋敷を目指した。見た目は良いが、少し俺の身体には合わなかった。しかし、今更そんな事は気にしていられない。何とか振り回す事も出来る。どうせこれは護身用で、本当に人を切りつけるつもりは無い。どうせ変態領主の事だ、俺が剣を見せればビビッて、アイネを直ぐに連れて来るだろう。それに、いくら俺でも人殺しはしたくないしな。

とにかく、俺は領主の屋敷に急ぎ、いつものルートで屋敷に忍び込んだ。事前に調べてはいたが、結局アイネがいる部屋は見つからなかった。しかし、あの見回りの兵の話を聞く限りではもうそれ程時間がない。早くしないとアイネにどんな酷い事をされるか解らない。

 とにかく、俺はアイネを救い出したかった。そして、俺はアイネと一緒に海を見る。それで、それで……まあ、その後の事はその時考えればいい。とにかく、今はアイネを救い出す事が先決だろう。あらかじめ調べていたとはいえ、領主の家は広い。それに警備は少ないと言っても、全くいないわけではない。それにも注意して調べないといけない。幾つかの部屋を調べるが、何処にもそれらしい部屋は無い。かなりの時間調べて回っていたせいか、俺は剣を持つのも疲れてきた。しかし、ここで剣を置いて行く訳にはいかない。疲れはしたが、一刻もアイネを救い出したい気持ちで俺は一部屋一部屋廻って行った。

 そして、最後に調べていない一部屋が残った。そう、他の部屋よりも一際豪華な装飾をされた部屋。領主の寝室だ。そして、俺はその領主の部屋に近づくにつれ、鼓動が早くなっていく事に気が付く。何故なのか? いや、なんとなくその答えは解っていた。そう、領主の部屋に近づくにつれ、異常な声が少しずつ大きくなっていくからだ。そして、その声はの主は二人。一人は男の声、そしてもう一人の声は女の子。そう、恐らくアイネだと思われる声……

 俺はその豪華な扉の前で、仲の様子を伺う。

 間違いなくアイネの声だ。いったい何をされているのか、苦しそうな声を出している。とにかく早くアイネを助け出さなければ。俺はそう思い、勢いで扉を撥ね開けた……


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