表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

風呂場の隅子さん

作者: 羽生河四ノ
掲載日:2015/06/12

前書きねえ・・・。前書きってやっぱりお品書きとかと関係あるんでしょうかね?

 最近巷では『コップのフチ子さん』なるアイテムがはやっているそうですね。

 で、

 それを踏まえると、さしずめ私というのは『風呂場の隅子さん』みたいな感じになるのではないかと思うんです。


 ・・・、


 あ、私、私です。ほら?あれ?

 見えます?

 あれ?見えませんか?


 ・・・、


 見えないんですね・・・。ああ、なるほど。あなたは霊感とかが無いんですね。それはすいませんね。ええ。見えるもんだと思って話してました。ごめんなさい。ごめんつかあさい。私ってそういうところがあるんですよ。なんでしょう?生前もよく人に『お前は思い込みが激しいなあ』なんていわれていました。ええ。でも死んでもそういうのって別に何も変わらないんですね。


 残念だなあ・・・。


 いやね、結構気にしていたんでね。『思い込みが激しい』なんてね、言うからさ。もうみんなして。私は自分のことをそんなんだとは思ってなかったんですよ。ええ。


 ・・・あ、自己紹介します?


 私は生きているときは三上純子って名前でした。

 で今は・・・まあ、ぶっちゃけおばけですよね。おばけ。貞子とか伽耶子とかそういうのです。富江は・・・どっちなんだか知らないですね。ええ。


 で、


 私ってここで死んだんですよ。この部屋で。殺されてね。うん。


 え?


 知らないで引っ越して来たんですか?何で?よりにもよってそんなところに?聞かなかったんですか不動産屋さんに?


 ・・・へえ。


 何の説明も無かった?・・・ああーまあそうか・・・、前の一人だけ報告すればいいんですもんね?ああいうのは。告知義務とかいうやつですよね。


 ああーそうですかー。なるほどー。なるほどなるほどー。


 えっと、私が言うのもなんですけど、あなたで五人目です。みんな一ヶ月持つかどうかみたいな感じで引っ越して行っちゃいましたね。ええ。

 風呂場にね。私が出るもんだからね?みんな怖がっちゃってね。

 ええ。


 お風呂場の電気とか点滅させたり、シャワーを急に出したり、バスタブから出てきたり、排水溝に髪の毛絡めて、そんでそれを取ろうとして突っ込んできた手を逆側から掴んでみたり、バスルームの換気扇から入居者を見たりしました。あと・・・洗面台の鏡にガッツリ写ってみたりとか・・・もうガッツリね。


 だって付き合っていた彼氏のDVD(ドメスティック・バイオレンス・デッド)で壁ドンされて殺されてね、あの風呂場に放置されたんですもん。しかもその後、勝手なそのドメ男はこの家飛び出してそれっきり帰ってこないもんだから、死んだまま放置されて・・・。

 私発見されたときはひどかったんですよ?もういろいろとコロニーみたいになってました。目もあてられない系です。渋谷系とか原宿系とかあるでしょう?私その中の目も当てられない系です。お葬式しても棺も開けられない。みたいなね。貞子に殺されたんじゃねんだからね。うん。


 ね?ひどいでしょう?だからそれくらいしてもいいじゃないですか?お化けなんだし。お化けってそういうことをしてもいいわけでしょう?だってお化けなんだもの。ヒュードロドローってしてもいいんでしょう?お化けなんだし。


 人間だった頃の記憶なんか一切忘れちゃって『憎い、憎い。全てが憎い。肉い(生前ダイエットを結構頑張ったけど、でもドメ男のDVDになるんだったら、もっと肉食べたらよかった)』みたいな事になってもいいわけでしょう?


 だってお化けなんだから。


 まあ、


 でも・・・、


 驚かせてしまって申し訳ないですね。


 ごめりんこ。


 だってお化けになったんだし、せっかくだからやってみたかったんですもん。


 昨今のテレビは『あなたの知らない世界』も『学校の怪談』もやらないし・・・。


 で、


 まあ、そんなことは今どうでもいいんですよ。


 あのですね。


 私がここにとどまっているのは理由がありましてですね。


 ええ。


 それ、聞いてくれます?


 え?


 何?


 成仏?


 聞いたら成仏する?


 しません。


 でも、


 聞いてください。


 大事な話ですよ?超大事。まあ、私からしたらですけど。


 あのね、


 私がここに留まっている理由は簡単です。


 超簡単です。


 あのね、


 私を殺したドメ男をね?あ、さっき説明しましたよね?


 あの男を殺したいわけですよ。


 だってそうでしょう?


 私はやつに殺されたわけですからね。奴のDVでDしたわけですから。


 で、


 せっかくお化けになったわけですからね。


 ええ。


 こいつはチャンスじゃね?


 って思うじゃないですか?


 こうなるまでは死んだら終わりだと思っていましたし、こうなるなんて思ってもみなかったわけですからね。


 まあ、当たり前だと思うんですけど・・・。



 でね?でね?重要ですよ?ここ重要ですよ?聞いて、聞いてください!


 今までここに住んだ人は一応驚かせつつも、そういうメッセージを与えていたわけですよ。


 怖がらせ7、メッセージ3。


 くらいの感じで。


 うん。


 お化けなんで、あんまり怖がらせないのもいけないでしょう?だからその割合でやっていたんですよ?


 ただ、みんなメッセージなんて気がつきもしないんです。一応写真とか置いたりしたんですよ?


 でも、怖がるだけでね。友達の家に電話して泊まりに行ったりして・・・。


 でね昼間帰ってきて、荷物まとめて出ていちゃうんです。


 みんなアホみたいに安かったからここに来たくせにね?


 実際見るとアレなんですよね。


 なんなんですかね?


 大体ここ、二階の他の部屋よりも安いし、一階の部屋よりも安いんだから・・・そりゃなんか出るでしょうよ?


 あ、


 これは、関係ない話です。


 でね?


 聞いてください。


 私はまあお化けだから、あなたのこともさっき驚かしましたよね?


 で、


 それであなたお風呂場から飛び出して、ダイニングに逃げてそこで床に座ってブツブツなんか言ってたじゃないですか?


 私ね?あなたに近づいて何を言っているのか聞いてみたんですよ。


 般若心経とか唱えているのかな?


 そんなの無駄なのにな。って思いながら。


 だってそうじゃないですか?


 常日頃から唱えている人だったらわかりますよ?あと反復とかで鍛えている人とかだったらわかりますよ?効くかも知れないでしょう?浅田次郎先生の『琥珀』のあのマスターだったら確かに効くかもしれませんよ?


 でも、


 大体は素人でしょう?


 いつもはそんなの信じていないでしょう?


 効くわけないじゃないですかあ!


 それなのにこんな時だけって都合良すぎだろ!


 って思いながらね?


 うん。


 それだから私、あなたの言ってたのを聞いたら驚いちゃいました!








 「俺は関係ない俺は関係ない俺は関係ない。お前には一個も関係ない。お前は関係ない奴のことも襲うのか?呪い殺すのか?ただただ全てが憎いからといって殺すのか?生きていた頃にできなかったことをしたいがためにお化けになったのか?死んでからやるくらいならどうして生きているうちにやらなかった?一生懸命生きていなかったからじゃないのか?頑張って生きていなかったからじゃないのか?そんなものお前が全部悪いんじゃねえか!それなのにお前は関係ない奴のことも呪い殺すのか?生きていた頃、人間だった頃の記憶や制約、法律を全て忘れ、関係ない奴も全て殺すなら、俺はお前のことなんか一切同情しない。死んだら関係ないと厚顔無恥なことをいって全てを殺すなら殺せ!俺はお前になんか一切同情しない。殺せ!俺はここに住むぞ。絶対に住んでやる。それが嫌なら殺せ!お前の勝手で俺を殺せ!死んだってお前になんか一切同情しない。てめえで勝手に出てきててめえの勝手で殺すなら、お前は通り魔や、自分勝手に人を殺しておいて遺族の気持ちも考えずに手記を出版する最底辺のやつと一緒だ。畜生だ。誰もお前なんかに同情しない。殺せ。さあ殺せ!」






 俺は自分がそれを言っていた記憶がなかった。


 でも、目の前で徐々に濃くなっていく半透明の女性が言うにはそう言っていたらしい。ただ単に必死だったんだろうと思う。目も瞑っていたし、それに般若心経とかも俺は知らなかったし・・・。


 「あ、今見えてませんか!」

 その頃にはお化けの女性はほぼほぼ見えるくらいの濃さになっていた。あと、なんか知らんが嬉しそうだった。


 「私あなたが言っていたこと、すごく理にかなっているなあって感じたんですよ!だってそうですよねえ?お化けになったからって、全部自分の思い通りにしちゃったら、そんなのずるいですもんねえ?すごい感動しちゃったんですよおー!」


 嬉しそうだった。


 「なんか、貴方の言葉を聞いたら、色々なことがどうでも良くなっちゃってー!」


 「・・・で、あんたはなんでそうして出てきた?」

 このままではいつまでたっても話が終わらなそうで、俺は口を挟んだ。明日も仕事なんだ。


 「・・・あ、そうでした・・・」

 お化けはそう言って我に帰ると、なんか俺の目の前でせっせと自分の身だしなみを整え始めた。


 お化けは死んだときはひどかったと言っていたが、ぼんやりと見えてくる前から彼女は結構いい女であったのに俺は気がついていた。


 生きていたらアプローチしたかもしれなくて、とてももったいなかった。


 「・・・」

 やがて身だしなみを整え終えたのか、お化けは俺の目の前で正座して両方の手を膝の上に置いた。


 「・・・なんですか?」

 俺は言った。


 「私、貴方に一目ぼれしました。付き合ってください!」


 ええー。


まあ結果的に風呂場関係ないですけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 二人称のような、語りかけてくる主人公の読者への訴えかたがハイレベルですね。 ごめりんこが面白いです。あとルビ!四様作品でたぶん初めて、ルビを降った文字発見です、しかもオシャレなルビ。DV…
[一言] 結果的にいい話でした。このお話が読んでくれた皆さんのココロの隅子さんになればイイですね^^
2015/06/12 10:49 退会済み
管理
[良い点] モノローグとごく一般的な小説形態をひとつの作品中で使っても違和感がなくて良いと思いました。 [一言] すいませんが、一言。 …なんだそのオチは。 未読の方、度肝抜かれますよ。
2015/06/12 01:04 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ