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 影の陰   作者:
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 序章 新たな仲間

 その場には異様な空気が漂っていた。友好とは程遠い、何か奇妙な空気。表現しがたいが、強いて言うなら“殺気”の様なものだ。だが、決定的に違う場所が、一つある。李俊はソゼスを警戒しているのに対し、ソゼスは全く無かった。


「驚きました。私は有名でもないんですけど」


 ソゼスの目は全く笑っていない。何時も、ニコニコしている者とは思えない表情だ。


「それは、こちらとて同じ事。俺はそんなに有名かい?」

「貴方は皮肉がお得意のようですね」


お互いに、お互いを嘲る様に笑う。その光景は周りの者を混乱させるには、十分なようだった。


「貴方は今、最も実力のある方として、随分有名ではないですか」


 あくまでも口調は、ゆっくりと優しいまま聞く。その口調は何となく、不気味さを放っている。


「ハハッ、ありがとう。でも君は、どんな任務に付こうが重傷を負って、帰ってきた事がない。だが、不思議なことに、君への評価は高いわけでもない。さて、これはどういう事なんだろうね」


眼光を鋭くし、言い放つ李俊。ソゼスは動じる様子は微塵も見せないまま、笑みをより一層深くする。


「さあ、何故でしょうね?昔から運は好い方ですけど」


自分の問いが全然、相手に何の効果ももたらしていないと判ると、李俊は顔を険しくさせる。


「ちょっ、ちょっと?何二人で不穏な空気出してるのよ~!」


 突如割って入った男の声。にもかかわらず、声は高く女口調。いわゆる、オカマ口調というやつだ。ソゼスと李俊は同時に声の主を確かめる。

 居たのは、筋骨隆々の体格の良い男だった。明るい色の茶の髪をオカッパにしている。そして奇妙な事に、目にはバサバサと音がしそうな付け睫毛をし、可愛らしいピンク色のアイシャドウが施されていた。尚も奇妙な事に、その逞しい身体にはどうしても似合わない服を着ている。

 私は他人の趣味やセンスに口出しする様な人間ではないが、これは確かに可笑しな格好をしていると言える。

 美しい白いレースとリボンの装飾が付いた服を身につけ、下はフリフリのミニスカートだ。靴は今にも折れそうなヒールの細く、10㎝以上ありそうな靴。


「そうですね。早く行きましょうか」


 ソゼスは何も無かったかの様に、優しそうに目を細めて微笑む。皆戸惑いながらもそれに従った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「さあ、皆~!一緒に頑張って行きましょう!」


 その場を仕切るのは、例のオカマちゃん。緊張感も何も無いその声と口調に真子が仕切り直す。


「これから一緒に仕事をする。守護者として、しっかり責任感を持ってやろう」

「…………まあ、守護者って言えば聞こえは良いけど、実際には罪人だがな」


李俊による一言に場の空気が一気に沈む。


 そう。守護者なんて呼ばれているが、実際は罪人の集まりだったりする。生前に犯した罪。それが解っていれば、生まれ変わる為の輪廻の輪に入れるのだが、それが解らない者も中にはいる。それがソゼス達守護者と呼ばれる存在だ。彼女らは、自分の罪が解らないという時点で、既に罪人なのである。だからこそ、ヒントとして色々な世界に行き、解らせる。それが実体だ。


「とりあえず、良いじゃないですかそんな事。自己紹介でもしませんか?」

「そうねえ~。自己紹介しましょ~う。じゃあ、アタシからね」


 何時もの様に呑気な声で沈んだ空気を取り払う。ソゼスに乗っかる風に例のオカマちゃんが自己紹介を始める。


「ネルフォンス・グラニアントっていいま~す。好きな物は~可愛い物と熊のぬいぐるみとかぁ~。好きなタイプはぁ~李俊さんみたいな人かしら!キャー!皆ぁよろしくねぇ☆」


独りで騒いで、独りで盛り上がって虚しくはないのだろうか。当の本人は笑顔だけども………………。

引きあいに出された李俊は嫌な顔をし、腕をさすっている。悪寒でも走ったのだろう。


「私はソルソナーゼス・ギルナ・マッドドレアス・ザンビアニ・ルーシャ・キンビスと申します。あまり、役に立ちませんがよろしくお願いします。ソゼスって呼んでください」


ネルフォンスに比べると、随分と短い自己紹介だったが、要点はしっかり押さえている。


 少し、馬鹿で阿呆に立ち回った方が良いかもしれない。李俊、彼には用心しておくべきだな。


笑顔の下でそんな事を考える。きっと、李俊も同じ様な事を考えているだろう。


「百瀬 和。ウチの足、引っ張らんといてくれれば何でもいいねん。ほな、よろしゅうな」


またこの子は、他人に喧嘩を売る様な物言いをする。和はすぐに喧嘩を売るから考え物だ。何時か、必ず損をすることであろう。


「そっちこそ足引っ張るんじゃないようにしてよね!」

「あ゛ぁ?何だとコラァー!!!!」

「はぁー!?耳聴こえ無いんですかー。オレの足、引っ張るなつってんの!」

「そんなの、解っとるわ!」

「あっ、ごめんねぇー。悪いのは耳じゃなくて、頭だったね。わっすれってたぁー」

「この野郎…………」


こうなると自然に決着が着くまで待つしかない。喧嘩を売る和も和だが、買う真子も真子だ。二人共意地っ張りで、何より大人気ない。


 ソゼスは苦笑いを浮かべ、その隣でリルは二人を白い目で見る。ネルフォンスは最初は戸惑っていたが、途中で諦め見守る事にした様だ。李俊とまだ名の知らぬ、黒髪の男は深いため息をつく。


「もう、あの二人はほっといて自己紹介の続き、しちゃいましょう!」


少しの間見ていたのだが、終わる気配が無いのでネルフォンスが、晴れやかな声で場を進める。

 この意見には私も含め、全員が賛成だった。


「李俊だ。武器は柳葉刀。好物は辛子かな。それと、男が好きとか言うのは無いよ」


そう言ってニコッと、人当たりの良い微笑みを浮かべる。


 髪は艶やかな紺色の長髪で、頭の高い位置で一つに纏めている。目は鋭いが端整な顔立ちをしている。身長はソゼスと10㎝位しか変わらなそうだから、178㎝といったところだろうか。着ている物は中国らしく、官服を身につけている。

 流石アジア人。肌がきめ細かそうで羨ましい限りだ。


 リルはさっきと同じくペコリと頭を下げる。その一連の動きは優雅で可憐。彼女自身の様に。


「リル・ホーガーメイちゃん。強いから安心して良いですよ」


ソゼスがそう紹介すると、無表情且つ無言で首を横に振る。


 リルは、まだまだ幼い少女だ。肌の色は陶器の様に白く美しく、髪はダークブラウンで、淡いピンク色でリボンで一つに纏め、毛先は上品にクルリと巻かれている。着ている物も、品の良い白のリボンとレースが付いた、白いワンピース。目はクリクリとしていて、愛らしい。一際目立つのが、細く白い首に、痛々しく巻かれた包帯。大いに、将来が楽しみだ。さぞ美人に成長してくれるに、違いない。


「あら、可愛いじゃない!」


 リルを見て、身悶えているあの変なオカマは無視しておこお。変態には関わらないのが一番良い。


「僕はシューベル・ソルティナ。僕の事は、美しいと思ってくれて構わないよ」


 これは、随分な自信家だな。だが、まあ確かに美形ではある。

 髪は黒く襟足の方だけ伸びており、色白で目元の涼やかな美男だ。服装はワイシャツに黒のズボンは履いている。比較的、軽装と言えるだろう。


「あの二人、そろそろ方が着くかしら?」

「さあ、どうでしょうね」


その後、5分程度して真子が勝利し、やっと喧嘩は終了した。


 七人で顔を見合わせ、力強く頷く。


ーーーー行こう、ニホンへ。自分の罪を理解するために!









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