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プロローグ
昔々、覇王と呼ばれたそれは偉大な人がいました。
誰にでも平等に。誰よりも強い人でした。
その、一人の者について、今からお話し致しましょう。
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街を見渡す。
殺風景で無機質で、何処か冷たい印象を受けるビル。
純粋さなど残っていない、汚れた大気。
忙しなく動く、小さくか弱い存在。
360度何処を見ても気分の悪くなる景色が広がっている。
「全く。誰のお陰でこうなったと思ってるんだよ」
「はぁ。私のお陰ですね」
「チッ」
不快なのは私だって同じだ。
弱いくせに。弱いくせに。弱いくせに。弱いくせに。弱いくせに。
弱いくせに他人に指図したがる。
弱い者が群れるのを見る度に、虫酸が走る。